ロマン派の時代-オペラのナポレオン
2022.01.19 11:41
平和の訪れたウィーンやヨーロッパでまた華やかなオペラブームが起こったのは当然である。その騎手がイタリアのジョアキーノ・ロッシーニである。1816年に作曲された「セヴィリアの理髪師」は瞬く間に欧州で大人気となった。これは「フィガロの結婚」の前のボーマルシェの人気作である。
「セヴィリアの理髪師」は、1782年にパイジェッロがオペラにして大人気を博したが、ロッシーニのオペラに上書きされて忘れ去られた。ロッシーニは、華やかな管弦楽と、イタリアのアリアを高度に再生させた。「ナポレオンは死んだが別の男が現れた」と言われるほどの人気を取る。
このオペラをべートーヴェンも絶賛して22年に、会ったときは「あなたはオペラ・ブッファ以外のものをつくってはいけません」と言ったという。ベートーヴェンのオペラ「フィデリオ」も一時期大評価されたが、全体の重苦しい雰囲気は、戦争が終わるにつれ、評価されなくなった。
ベートーヴェンは、当時の大ピアニストさえ演奏できないというピアノソナタ29番「ハンマークラヴィア」を完成させ、ピアノの可能性を極限まで追い詰める。彼はピアニストの不満に「50年経てば人も弾く」と言ったという。彼の相手は大衆ではなく、理想そのものだった。