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『滲む太陽』

2017.11.01 06:48

 緋く染まって、焼け落ちて行く太陽。


 瞳の中で滲んで揺れる。


 心燃やした、あの夏が終わってゆく刹那にも似た、居たたまれない程の切なさに泣く胸。


 指先を凍らす冬の夕暮れ。


 その緋さに佇み、暮れ泥む。


 逢いたいと思うほど、離れて行く心を持て余す。


 きっと、ふたり、同じ時にきづいていた。


 心焦がす、熱病のような時の終わりに。


 責めるではなく、哀しいのでもなく、ただ、住み馴れた部屋を出て行くような、肌に馴染んだ毛布に別れを告げるような、少女から大人になる時のような、歯痒いひと欠片の寂しさと切なさに震えただけ。


 緋い夕陽が、胸につかえた何かを溶かす。


 もう、いいね。


 心に兆す思い。


 赦されているような夕焼けに、一雫の涙を落とし、私の場所へ帰って行く。


 あなたの居ない、私の部屋へ。



photo/文:麻美 雪