ロマン派の時代2-音楽の王政復古
2022.01.20 11:31
1816年1月21日、前年のウィーンに引き続いてパリのサン=ドニ大聖堂でも、ルイ16世の命日にちなんで追悼式が行われた。このとき演奏されたレクイエムは「ルイ16世とマリー・アントワネットのためのレクイエム」と名付けられ、革命当時の王室楽団楽長だったマルティーニが作曲した。
翌17年同日の追悼式に演奏されたのが、ルイジ・ケルビーニ作曲のレクイエムで、この曲は非常に高く評価され、ベートーヴェンも「もしレクイエムを書けと言われたら、ケルビーニの曲だけを手本にしただろう」と言ったらしい。合唱のみで、劇的なロマン派の音楽である。
ケルビーニは、1788年にパリに住み、オペラを作曲して上演するが、時代が悪く、大劇場で演奏されなかった。しかし1805年にウィーンに招聘されてからもオペラをつくり、ベートーヴェンに評価され、また宗教音楽をつくるようになった。そして王政復古後に王室音楽監督となってパリに戻る。
王室はケルビーニを重用し、ルイ18世もシャルル10世も戴冠式の「荘厳ミサ」を作曲させた。ただしオペラは、当時人気絶頂だったロッシーニが乗り込んできたため、時代遅れの評価となった。23年10月16日には、アントワネット没後30年を記念して、彼女だけの追悼ミサが行われた。