ガイア・シンフォニー
いつか観たいな、と思っていた映画、
ガイア・シンフォニー。
今、第1番~8番まで、
まとめて上映されている。
行ったタイミングで、
やってるのを観ようと行ったら、
故星野道夫に捧げる、第3番だった。
映像がはじまって、はじめに登場した人物。
「もしかして…この人…」
と思いながら観てたら、
やっぱり!
わたしが会いたいな、
と、思っていたおじいちゃんだった。
びっくり!
昨年の秋、
長野の湯俣温泉という、
温泉が湧き出てて、
野外で温泉に入れるという、
ちょっと変わった山小屋で2週間ほど働いた。
地面からコポコポと
温泉が湧き出てるのをはじめて見て、感動した。
その時期、
小屋には管理人さんとわたしの二人だけ。
管理人さんが山を降りて買い出しに行く日、
ひとりで留守番をしていた。
たまたまその年は電話線が使えなくて、
もちろん携帯の電波も届かなくて。
連絡手段は、一時間半くらい山道を歩いて、
ピンクの公衆電話に行くのみ。
「もしかしたら今日帰れないかもしれないけど、
明日には帰るから。心配しないで」
と言って、出かけて行った。
大自然に囲まれて、
人気もまったくなく、
ひとりぼっち。
でもなぜだかそれほど不安もなくて。
一人になると、
自然との距離が、
ぐっと近くなって、
安心する。
食堂の本棚に置いてあった本に、
たまたま星野道夫の本があって。
外の温泉で足湯をしながら、
はじめて彼のエッセイを読んだ。
それが「旅をする木」。
その中に、
マイナス40度のアラスカで、
裸足にサンダルで自転車に乗り、
「このタイヤが氷にペタペタとくっつく感じがいいんだよ~」と笑う、
おじいちゃんが登場する。
飄々とマイペースに生きていくのも、
時々楽じゃないときがあって。
このなんとも心温まる人柄に、
「ああ、わたしがなりたいのは、
こんな人かもしれないな」。
そんな風に思わせてくれた。
映像で観るそのおじいちゃん、
ビル・フラーは、
本のままの人だった。
心がぎゅっと掴まれる。
そのあとに出てくる星野道夫の友人たちも、
とても温かくて。
予想外に、涙することが多かった。
仕事や作品ではなくて、
MICHIOというその人そのものを、
深く愛していることが伝わってくる。
その、生きざまのひとつである、
突然の死も含めて。
そして続いて登場した親子。
またまた「もしかして…この人たち…」と思ったら、
これまたやっぱり!
「宇宙船とカヌー」という本の、
登場人物の親子だった。
ふたたび、びっくり!
タイトルがステキだな~、
と、古本で買った本。
人類の宇宙への移住を夢見る物理学者の父と、
自然を愛するカヌー大工の息子。
相容れないふたりは、
実は似ていて、愛し合っている。
映像で観ると、その感じがよくわかって。
これまた泣けた。
湯俣温泉にいた時期、
今年のように、雨と台風が続いてて。
お客さんがぜんぜん来なかった代わりに、
雨で川が増水して、
遭難した人たちが出て、
その対応をすることになった。
大雨のあと、
管理人さんは様子を見に山へ行った。
「川を渡れなくなった人たちが見えたから、
その人たちに渡せるかも…」と、
ロープと食べ物を用意し、
川を渡る身支度をし、
再び出かけて行った。
山で避難し、一泊して食べてないはずだから、と。
しばらくすると、警察の人たちがやって来た。
帰ってこないので心配した家族から、
捜索願いがあったそう。
状況を説明すると、山へ入って行った。
山ではよくあることなのだろう、
警察の人たちは、常に落ち着いている。
その遭難した人たちは、
管理人さんとともに自力でなんとか川を渡りきり、
戻って来れた。
その後、警察の人たちとも合流し、
みんなで小屋へ帰って来た。
心から、ホッとした。
生姜湯を用意してみんなに手渡すと、
山に入る前にここに立ち寄ったグループだった。
「すみません、ありがとうございます」
と、申し訳なさそうに口々に言い、
ひと休みして、身支度をし、
警察の人たちは連絡をして、
下山して行った。
明くる日、
この山小屋に毎年来て、
川で魚を採る常連さんが、
「仲間が流されて、死んじゃったかも…」と、
ずぶ濡れで、魂の抜けた様子でやって来た。
そのときは無線を警察が貸してくれていたので、
管理人さんはすぐ連絡をしに行った。
ストーブと椅子を持って来て、
濡れた上着を脱いでもらって乾かしに行き、
タオルを渡し、
温かい飲み物と、温かいうどんを用意した。
雨が止み、
川の水かさが減るのを待って渡って来たら、
自分の目の前で、
先生であるその仲間の人が、
流されてしまったそう。
手を伸ばせば届く距離で…。
「死んじゃったよ…どうしよう…」と、
途方にくれている。
心は痛むけれど、
どうすることもできない。
ただそこに、一緒にいることしか。
「一緒に連絡を待ちましょう。
温まるから少しでも食べてください」と、
こころを込めて穏やかに言うと、
うどんを食べはじめてくれた。
それからの待ち時間は、
とても長く感じた。
自分の人生にこんな時間が訪れるなんて、
なってみるまで思わないものだ。
やって来た警察の人とともに、
その人も下山して行ったが、
仲間の人は、
数日の捜索のあと、
リュックが見つかり、
そのすぐ下流で、
亡骸が見つかった。
数日後、
予定していた通り、
ひとりで雲ノ平に登った。
写真の中央に、そのとき泊まった山小屋が、
ちいさくちいさく写っている。
山は大きくて、
わたしたちは小さかった。
でもそれが、心地よかった。
わたしは今も、
山も森も海も、
大好き。
どこか闇を秘めていて、
そこがあって、
その輝きと魅力がある。
命がたくさん満ちた世界にある、
大切なもの。
それが、
時として与える、
悲しみ。
そして思い出す、
すべてが奇跡であることを。
「人生とは何かを計画しているときに起こってしまう
別の出来事を言う」
Life is what happens to you,
while you are making other plans.
冗談まじりに、
星野道夫の友人である、
おばあちゃんが言った。
自然というものは、
そういうもの。
わかっていても、
心は動く。
そして、
そのサイクルを含むすべてを、
愛することもやめられない。
ecolonieというエコビレッジで、
毎日のように一人で歩いてた、森。
この日は歩いてたら、
一緒に働いてる人たちに会った。
このドイツ人の男の子たちも、
冬で雪なのに、
裸足にサンダルだったな~。
一人の子は料理担当で、
みんなにとても美味しい料理を作るのに、
自分は食べる量を減らしていって、
プラーナで生きていく準備をしていた。
いろんな人がいて、いろんな人生がある!
そしてみんな最後に、
同じ扉を開くのだ。
深い雪の下には、
美しい緑の苔の世界が生まれていたことも、
同じ森が見せてくれた。