普天間問題迷走の原因
普天間基地移設の問題があいかわらず迷走している。
この問題により、わが国の安全保障政策が、
どれだけ疎かにされているかが浮き彫りになっている。
迷走の原因は第一に、鳩山民主党政権が、
反自民のイデオロギーを持っているといった、
安全保障とは関係の無いところに起因する。
V字型滑走路を持つ辺野古崎への移設案が、結局のところ最善策であろうし、
その結論に到るまで日米双方が長い年月を費やしてきたわけだが、
それを反対するのは、「自民が考えたことだから」という、
極めて国益とは無縁の理由である。
第二の迷走の原因は、鳩山民主党政権は、
日米中正三角形論が、外交のベースにあることである。
口先では日米同盟が基軸と言ってみても、東アジア共同体が理念と言ってみたりもする。
この発想で機能的な日米同盟を考えることは不可能である。
米国にとっても、朝鮮半島有事、台湾有事の際に、
展開できる部隊を置くために、どうしても沖縄が必要である。
特に沖縄駐留の大部分を占める海兵隊は、即応性の高い支援部隊であるため、
地理的要因を外した議論は本末転倒である。
また、いずれの有事もわが国の安全保障にとって、極めて重要な問題であるため、
日米同盟が非対称条約であっても、基地を提供することが、
現状わが国にとって必然なわけなのに、脅威がある説明も無い。
これまでの政権もそうだったが、平時における基地のあり方ばかりを想定し、
有事の際にどのような役割を果たすのかといった視点が欠けており、
駐留させることだけが目的化した在日米軍になってしまっている。
永続的に日米同盟があるわけではなく、
その機能を常にチェックしておく必要があるのだが、
現政権はあまりにも盲目的でお粗末過ぎる。
第三の迷走の原因は、鳩山民主政権が、
一国平和主義が根底にある戦後民主主義の象徴的な政権だからである。
民主党政権から、憲法改正や集団的自衛権への問題提起がなされる様子は全く無い。
9.11以降、在日米軍は、地域の有事のみを考えて編成されているのではなく、
グローバルな編成となってきており、沖縄の役割も変わりつつある。
アジア・太平洋地域における米国のパワープロジェクション能力が、
飛躍的に向上しない以上、沖縄からの米軍撤退は難しい。
近い将来、そのようなことが起こりえたとすれば、
米国にとっての日米同盟の価値は、著しく後退するため、
わが国の防衛政策そのものを抜本的に見直さなくてはならない
ということに目を逸らし続けている。
昨今の米中接近は、わが国の頼りなさに起因していると考えるべきであろう。
民主党政権は、インド洋における給油活動から自衛隊を撤退させたように、
不安定の弧と言われる地域、シーレーンにまで、
わが国の国益を広げて考えることができない。
よって、当然、沖縄在日米軍の役割も理解することができないため、迷走するのである。
「トラスト・ミー」や「政治とカネ」にはじまる、
鳩山首相の資質や人格問題に非難が集中するが、
衆院で308議席も擁する政党であるにも関わらず、
国家の将来に対して誰ひとり危機感を持たず、
連立政党や党幹部に責任を押し付け、
国を救うことより選挙活動を生業としてしまっている、
国会議員ひとりひとりの資質を国民は問うべきである。
畠中光成