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「核無き世界」と日本

2010.04.09 01:57

オバマ大統領が掲げる「核無き世界」。

平和を望む世界の人々にとって、確かに魅力的に響く言葉だ。

まるでわが国の首相が掲げる「友愛」に似た響きも持つのだが、

決定的に違うのは、「核無き世界」には意図があるということ。

鳩山首相のように、幻想的な話しを述べているわけではない。

 

冷戦終結後、世界秩序が変化する中で、

米国による世界戦略の再編成が進められている。

それは国家間の戦争ではなくテロとの戦いが終わらず、

核兵器のあり方が変わろうとしている意味合いもあるだろうが、

米国の世界戦略がやや内向きに変わろうとしているのかもしれない。

 

冷戦時代はソ連の脅威を、

西はNATO、東は日米同盟によって「封じ込め」てきた。

挟み撃ちにあったような形のソ連は、欧州に2/3、極東に1/3の兵力を配置し、

ソ連は常にそのバランスに配慮する必要があった。

そこに中国との対立や、宇宙競争が加わり、競争から脱落した。

結果として、米国を中心とした西側諸国の「封じ込め」政策が、

世界戦争を起こさずに済ませた。

 

現在から近未来にかけての危機の火種は、欧州よりも北東アジアにある。

EUはほぼNATOと一体化する中で、国家を超えた安全保障の枠組みの構築に成功した。

万一、NATO加盟国に攻撃を加える国がある場合、

それは米国を含めたNATO全体を敵に回すに等しいのである。

一方で北東アジアにおいては、朝鮮半島や台湾の問題があり、

背後にロシアが控えているという構図の中で、

地域の安全保障の枠組みは、欧州に比べ冷戦期より脆弱になった。

米韓同盟の将来は疑わしく、日米同盟が最後の砦になり、

日本の役割と日米の協力が欠かせないにもかかわらず、

鳩山民主政権によって逆噴射してしまっている。

 

「核無き世界」と言ってみても、

北朝鮮、中国、ロシアと全て、

わが国に核ミサイルの照準を合わせている現状は変わらない。

自主防衛の概念がより求められる時代だからこそ、

日米同盟という現実路線から離れるわけにはいかないと考える。

どのようにして、世界と地域の平和を守るのかといった構想が無い現政権に、

この大切な時期を任せてしまっていることが甚だ心配である。

 

 

畠中光成