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米国「国のかたち」の変化

2010.03.23 00:14

米国の医療保険が皆保険制度になるという。

民主党にとっては長年の念願が達成するという形だが、

米国にとっては「国のかたち」が大きく変わるきっかけになりえる。

米国の精神は独立心という精神に強く支えられている故、

国家の個人への介入を強く嫌う。

これを理由にして、共和党議員は全員皆保険制度に反対を投じた。

しかし、先進国の中で唯一皆保険制度を持たない国であることや、

異常に高い医療費の問題が、制度成立への強い後押しとなった。

私も政経塾生時代、ニューヨークにて医療制度についての研究実践活動を行っていたが、

特に労働市場から洩れた高齢者にとって米国の医療制度は厳しい内容になっており、

あまりにも高い医療費のため、65歳以上の約1/3~1/2が資産を使い果たし、

日本でいう生活保護者になっていた。

ただ、この皆保険制度は、将来、財政において行き詰まることが、あらかじめ予想されており、

見切り発車の改革と言えるだろう。

 

この医療保険改革は米国の国内問題ではあるが、

米国は歴史上、「内向き」「外向き」の思考を繰り返している。

今回はたまたまオバマという民主党の大統領が、

経済的には「内向き」で、外交的には「外向き」であるというだけである。

トヨタの問題も、経済「内向き」の影響があるのだろう。

われわれ日本人が考えねばならないのは、

米国が外交的に「内向き」になる時を想定することである。

外交的に「内向き」とは、例えば「どうして、北朝鮮や台湾の問題に、

米国の若者の血を流さなければならないのだ。」という考え方だ。

実際、そのような主張をする大統領候補が、共和党の予備選挙で

近年連続して次点を獲得するに至っていることは、

あまり知られていない。

この国民皆保険制度が、財政を原因として将来、

外交「内向き」の火種になる可能性は十分にある。

 

わが国の思考としては、

米国の「内向き」に備える安全保障と、「外向き」に引っ張り込む外交が、

日本の平和と繁栄を守るだろうと思っている。

東アジア共同体など、言っている場合ではない。

日本人の目が大陸に向かいつつあるのを、もう一度海へ向け直さなくてはならない。

 

 

畠中光成