子どもの自殺防止が大きな課題になる
【質問】
大変深刻なテーマですが、日本では夏休みが終わろうとするこの時期、新学期の始まりに向けて子どもの自殺防止が大きな課題となります。中国では子どもの自殺をめぐってどのような状況にあるのでしょうか?
【回答】
残念ながら、新型コロナ以来、中国では、子供の自殺が増えてきたのです。特に、経済が相対的に発達している地域の方が深刻だそうです。北京、上海、広州、深センなどの大都市では、中小学生の自殺者数が過去の同時期の数倍と急激に増加しており、一部の地域では教育局が授業再開後の学校でのマッピング試験を緊急に中止したほどです。中国の多くの地域では、24時間心理危機相談ホットラインが設置している。
全体的に言うと、中国の自殺率は、この20年ほどの間に大きく減少傾向にあります。しかし、絶対数はまだまだ多く、WHOの推計では、2019年の自殺者数は116,324人(6.7/10万人)で、そのうち男性が72,515人(8.6/10万人)、女性が43,809人(4.16/10万人)となっています。
北京の民間非営利団体である21世紀教育研究院は、小中学生の自殺行動に関する全国調査を実施しました。中等教育機関の生徒の自殺行動に関する研究では、生徒の17.7%が自殺願望を持ち、2.7%が自殺未遂を起こしていた。これはおおよそ、6人に1人の生徒が自殺を考えたことがあり、14人に1人の中小学生が自殺計画を立て、37人に1人の中小学生が自殺行為を行ったことがあることを意味しており、非常に憂慮すべきことです。
統計では、中学生の死亡者数は小学生の7倍で、具体的な比率は7.2:1となっています。児童少年の自殺者数は、小学校6年生から増加し始め、中学校でピークに達します。 思春期は、自殺が最も起こりやすい時期らしいです。そのうち、男子は女子の1.6倍も自殺しています。
学生の自殺者数が多い月は、5月、4月、9月です。 4月と9月はどちらも学校の年度初めに相当し、特に9月はその傾向が強い。 例年、毎年9月の学校が始まったばかりの週に、各都市で学生の自殺が報告されていました。 新学期が始まると、学校側はクラス分けテストを行います。そのプレッシャーに耐えられず、自殺を選んだ学生も多かった。その後、多くの地方の教育委員会で、年度初めにプレースメントテストを実施しないか、少なくともプレースメントテストを延期するように定めているところが多くありました。
2017年、21世紀教育研究院は、その年に公表された小中学生の自殺者(267件)の情報を収集し、統計的に分析した結果、小中学生の自殺の原因は、順に、家族の葛藤、学業のプレッシャー、教師と生徒の葛藤、心理的な問題、感情的な問題、学校でのいじめの6項目であると結論づけました。最初の3つのカテゴリーは、いずれも学業上のプレッシャーと明確に関連しており、学業上のプレッシャーが小中学生の自殺の主な要因であることを示しています。
では、なぜ新型コロナ時期に小中学生の自殺率が大幅に上昇したのか。 その理由は、親も生徒も家に閉じこもっている状態が長く続き、親子の葛藤が激しくなり、自殺率の上昇につながっているからです。 2020年5月6日、西安の9歳の少女が、宿題が間に合わないからと15階から飛び降りて自殺しました。 彼女の最後の言葉は、「どうして私は何もできないだろう。 ママ、ごめんね、私が決めたことだから」。こんな悲劇は社会に大きな衝撃を与えていました。
近年、学生の自殺は、携帯電話は起因することがかなり多くなっています。 例えば、親や教師が子どもの携帯電話を没収して、階下に放り投げることで、子供を自殺に追い込むことになったことも多数あります。 退屈で厳しい勉強や試験中心の教育の中で、子どもたちにとって携帯電話は、休息やレクリエーション、自身のリラックスや世界とのつながりを得るための唯一の入り口かもしれません。
ある意味で、携帯電話が多くの学生の命を救ったかもしれません。現実には、不利で疎外された学生は、教師や他の学生から排斥されることが多いのですが、オンラインの世界、ゲームの世界では自分の居場所と尊厳を持ち、能力を発揮してファンになってくれる人がたくさんいるかもしれません。
したがって、親が子どもの携帯電話を階下に放り投げると、子どもにとって唯一の世界とのつながりが断たれてしまいます。携帯電話の問題を軽視せず、子供の生存状態を補助するものであることも認識しましょう。
ですから、子どもが携帯電話をいじって宿題をしていないのを見た親は、問題を乱暴に扱うのではなく、子どもとよくコミュニケーションをとり、携帯電話を学習や娯楽のために上手に使うように導くべきなのです。
つまり、社会全体が小中学生の自殺現象に注目し、より科学的に研究し、情報公開を通じて親や生徒の自殺予防意識や能力を高め、若者の心身の健康を守らなければならないのではないでしょう。
(メルマガ黄文葦の日中楽話第53話より)