東京湾のノリ養殖について(常任委員会質問より)
先日、富津市でノリの養殖業を営む関係者の方にお話を伺う機会がありました。その際に仰っていたのは、「昔と違って海に栄養がなくなり、ノリが育たなくなってしまった」とのことでした。
東京湾のノリの生産に影響を及ぼす要因としては、海水に含まれる栄養塩量をはじめ、ノリの収穫時期である冬季の水温や透明度の上昇などが関係しているようですが、このような状況が今後も続くと、養殖業が成り立たなくなってしまうのではと危惧するところです。
そこで、ノリ養殖の現状と今後について質問しました。
東京湾におけるノリ養殖の現状はどうか?
東京湾のノリ養殖は9月中旬過ぎに網に種付けを行い、晩秋から翌年の4月頃まで養殖が行われ、ノリは海水中の「窒素」や「リン」といった、いわゆる栄養塩を養分にして成長します。
ノリの色は本来であれば黒くなるところですが、この栄養塩が不足した場合には褪せたような薄茶色になり、味や香りも劣る製品価値のないものとなってしまいます。
このような色落ち現象は、瀬戸内海や有明海で大きな問題となっているところであり、東京湾においても富津岬より南の海域を中心に、漁期始めや漁期の終盤など、時期によって発生がみられています。
状況の改善に向け、県ではどのように取り組むのか?
東京湾を始めとする閉鎖性の海域では、水質改善を目的に陸上からの汚濁物質の流入に制限をかける総量規制が行われ、徐々に水質が改善されてきていますが、このことによって逆に水生生物が生息しづらくなってきているという指摘がされています。
これらを受け、国では水質浄化が進んでいる瀬戸内海などにおいて、「きれいな海」から「豊かな海」へと方針を大きく変え、対策が講じ始められました。
一方、東京湾においても、ノリの色落ちのほか、近年、アサリの水揚量が大幅に減少しており、漁場環境を改善する観点から、県では国に対し「東京湾の『豊かな海』に向けた取組強化について」要望しているところです。
東京湾の取組は本県だけで対応できるものではないことから、引き続き国へ要望していくとともに、神奈川県や東京都、さらに漁業関係者とも連携を図りながら、他県の先進的な取組事例を研究するなど検討を進めてまいります。
◇
東京湾における漁場環境の改善の取り組みは、生産現場での工夫や県レベルの検討では解決しない問題です。今後も国をはじめ、関係機関と連携を図りながら、東京湾が「豊かな海」となるよう、検討を進めていただくよう要望しました。