絵本『ペンギンのひな』
氷の覆われ冷たい空気に包まれる南極大陸の皇帝ペンギンが、厳しい環境下で子育てを産み育てる世界を美しく描いた作品です。小学生の国語の教科書でも取上げられているペンギンの子育ては是非一度は読んでほしいと考えます。中学校の教科書ではペンギンの羽毛や皮膚についての内容も取上げられていた記憶があります。
雪と風が吹きつける極寒の中、オスとメスが交替で卵やヒナを温める様子は命懸けということに子供は驚きます。動物園や水族館で見るペンギンの愛らしさと絵本の中のペンギンとの間にギャップがあるからでしょう。また2ヶ月もの間飲まず食わずでいることに疑問を持って調べた子もいます。絵本を読んでいるうちに『どうしてなんだろう?」という自然科学に目を向けることにも繋がる作品です。
羽毛で覆われた卵を温めるペンギンの足についてこの絵本では取り上げられていませんが、より思考を深めさせるために数回読み解いた場合に絵本には無い情報を伝えます。すると子供は興味を持って知ろうとし動き始めます。
絵本の世界を広げるためにはある切り口で絵本を読み繋いでいくことも必要だと感じています。この絵本を通してペンギンに関心を寄せ新たな絵本や図鑑、専門書に出会うことを願います。
少々話が脱線しましたがこの絵本は子供に理解しやすいように描かれていると同時に、専門的用語が使用されています。例えばルッカリー(ペンギン同士が集まり子供を育てる場所)、トボガン(ペンギン特有の腹這いで氷上を移動する方法)、クレイシ(ヒナ同士が集まる保育園)などの言葉が使われ、読み手に語彙の刺激を与えることができます。知ることの喜びを獲得した子はこのような専門用語を覚えることが得意で、一度獲得すると多用しアウトプットの強化で言葉の定着が行われ知識が積みあがり、興味や関心も育つようになります。
この絵本に書かれていないことですが、オスとメスとの間で行われる卵の受渡しはとても緊張する行為です。万が一受渡しに失敗し卵が氷上の上に落下すれば5~8秒でその命を落とします。
またルッカリーで集合体になり卵を温める場合、吹雪になると小刻みに動きながら円の中と外のペンギンが交互に入れ替わり交互扶助を行い寒さを乗り切ります。まだまだ皇帝ペンギンの世界は奥が深いので沢山の絵本を読んで知ることを楽しんで下さい。先ずはこの絵本はどんなことが描かれているのか確かめてみてはいかがでしょうか。