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造化の妙

2022.11.19 05:58

https://www.engakuji.or.jp/blog/31213/ 【造化の妙】より

畑仕事をしていて、ふと手を休めると近くに椿の花が咲いているのが目にとまりました。

お寺にいると、花を見ても、虫はついていないか、枝を払わなくてよいか、肥料は足りているかなど、そんなことばかりが気になっていました。

ゆったりした時間で過ごしていると、ただ何も考えずに花だけを見ていました。

すると一輪の花の、その造形の素晴らしさに感動しました。

それはまさしく「造化の妙」とでもいうべきでしょう。

造化とは、「天地の万物を創造し、化育すること。また、造物主、造り出された天地。宇宙。自然。また、自然の順行。」という意味ですが、大自然のおおいなる営みに感動したのです。

その昔明恵上人が一輪の花に合掌していたという話がありますが、本当に花一輪に大宇宙の素晴らしい働きがあると感服しました。

折から隠寮の庭には、牡丹の花もきれいに咲いています。

誰も見る人のいないところでも、牡丹の花は、精一杯の花を咲かせています。

そんな姿にも感動します。

https://osaka-chushin.jp/event/41515 【人間国宝 鈴木 藏 展 ー造化にしたがひ、自然にかへれとなりー】より

鈴木先生は、1934年岐阜県土岐市に生まれ、この地で焼かれた志野に取り組んでこられました。製作当初から桃山陶芸の原点を踏まえながらも、古陶の形式に決して拠り所を求めることなく、「現代の志野」を生み出す姿勢を常に貫いてこられました。1960年後半には、志野は薪の窯で焚くのが最良とされた時代にガス窯による焼成に成功。以降、「鈴木志野」とも言える自らの創意による作品を次々に発表し、1994年には重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定されました。日本で生まれた独特の創作である志野。その本質を真摯に探求し続ける先生の作陶姿勢からは、移り変わる自然の中に身を委ね、自然から学ぶことで培われた日本人の感性や美意識を私たち鑑賞者に想い起こさせてくれます。今展では、品格と力強さを併せ持つ志野茶碗を中心に、花器や瀬戸黒、今展のために特別にご揮毫いただいた書も加え、新作の数々を一堂に展観いたします。

※当ページの情報は掲載時点での情報です。コロナ感染症の状況等により中止・変更になる場合がありますので、主催者発表の最新情報を必ずご確認お願いします。

https://www.kufs.ac.jp/toshokan/bibl/bibl195/pdf/19508.pdf 【老子が説いた「道」の思想〜天地宇宙の奥に潜む造化のエネルギー〜蔭山 達弥】より

 謹賀新年。突然ですが、皆さんは私たちが住んでいる宇宙の外側について想像したことがありますか。宇宙は約137億年前、ビックバンと呼ばれる大爆発で誕生しました。その後も膨張は続いていますが、これまでの定説では、物質や銀河などに重力が働いた影響で、徐々に減速し、現在は一定の速度で膨張していると考えられていました。

 2011年10月4日、スウェーデン王立科学アカデミーは、2011年のノーベル物理学賞を、宇宙の膨張が加速していることを超新星爆発の観測で突き止めたカリフォルニア大バークリー校のパールマッター教授、オーストラリア国立大のシュミット特別教授、ジョンズ・ホプキンス大のリース教授の3氏に授与すると発表しました。

研究は、通常の物質と宇宙にある見えない物質だけでは観測された宇宙膨張の加速を説明できないことから、膨張を加速する力として働く真空の「暗黒エネルギー」の存在を指摘しました。

 今から二千数百年前、中国の戦国時代において、この宇宙という大自然を秩序あらしめ

ているもの、その大自然の秩序を支え、持続している原理というべきものを着目した謎の人

物が現れました。「道(タオ)」の思想家・老子であります。老子の生きた戦国時代(BC403 〜BC222)、中国は本格的な鉄器使用の時代に入りました。農具は一新され、生産は飛躍的な増大を遂げていました。新兵器の出現が、富国強兵に狂奔する列国の抗争を一段と激しいものにしていました。こうした戦国の世に生きて、老子は富の増大や文明の利器は、ほんとうに人を幸福に導くものであっただろうか、むしろ、人の生活を華美にし、人をあくなき欲望の泥沼に引きずりこんだだけのことではないのかと考えます。つまり老子にとって、知識・知恵・学問・文化・文明の類こそが世を混乱に陥れる元凶なのです。老子は行き過ぎた文明を批判し、その弊害を訴え、無知・無欲・不争の処世を勧めます。

 人間の自信過剰を戒める老子は、人の行動の規範を、天地自然の世界に求めていきます。東日本大震災の津波による甚大な被害を見ても明らかなように、人間の作り出した文明は、大自然の営みに比べれば、まことに取るに足らないものです。傲慢な人間は、大自然の前におのれの小なることを自覚すべきです。大自然から見れば万物の一つにすぎない人間は、謙虚に自然界の法則に従うべきではないかと老子は考え、宇宙造化の営みに着目します。

天地間には一定の秩序があり、日月昼夜の交替、星の運行、四季の推移、これらは恒常的な

法則があり、寸分の狂いもありません。その間に、万物は次々と生み出され、成長を遂げ、やがて死滅します。しかし、その後にはまた、新しい生命が生み出されていき、造化の営みは、やむことなく続いています。こうした天地造化の営みは、いったい何者がかくあらしめているのでしょうか。これを宗教的にいえば、神の仕業ということになりますが、老子は、宇宙における神のような超越者の存在を一切認めません。老子は、それはおのずからなる営みである、つまり、ひとりでにそうなっているのだと考えます。この天地造化の営みを、老子は「道」と名づけ、人が規範として仰ぐべきだと考えました。造化の神秘を探る老子は、宇宙の奥に造化のエネルギーの潜むことを想定したのです。造化のエネルギーである「道」は、まだ、天も地もなかったとき、すでにそこにありました。「道」のはたらきは、いつ始まるともなく始まり、「永久不変」の営みを続けています。

 『老子』は『論語』とならぶ中国の代表的な古典です。訳注を参考にして直接原典にあたるのが一番ですが、わが国の中国思想研究の第一人者、金谷治(1920 〜 2006)先生が説く老子の精髄『老子 無知無欲のすすめ』(講談社学術文庫1278)、老子が説いた「道」とは何か、「上善は水の如し」などの名句や陶淵明らの生き方を通して魅力に迫る林田慎之助先生の『タオ=道の思想』(講談社現代新書1629)、集英社から1984年に出た「中国の人と思想」全12巻の4冊目、早稲田大学の楠山春樹先生の『老子 柔よく剛を制す』などから、読まれると良いでしょう。老子の原典と中国語の現代語訳を対照させた本としては中国の中華書局から中国古典名著訳注叢書の一冊として出ている陳鼓應『老子註訳及評介』があります。 かげやま たつや(教授・中国文学)