はとバスの歴代の輸入車⑥ アステローペ・スペリオール
はとバスは1963年に導入した「スーパーデラックスバス」以来、常に一定台数の定期観光用看板車両を保有してきました。1980年代に入っても、1982年導入のダブルデッカー並びに1987年導入のヨーロコメットと看板車両が登場しています。1990年代に入り、ヨーロコメットの登場から5年後の1992年に定期観光用看板車両として投入されたのが今回紹介するアステローペ・スペリオールです。
1992年というと、多くの事業者にとっては看板車両として導入されていた国産スーパーハイデッカー車がはとバスの一般車として定着しつつあり、車両の差別化が大変困難な時期でした。特に定期観光用車両は「観光」がメインな為、比較的オーソドックスなシート配列が望まれながら、外観はむしろインパクトが強いものが求められました。そこで選択されたのが、曲線を活かしたデザインが特徴的なアステローペ・スペリオールでした。1988年に貸切観光用に導入されたアステローペ同様、ボルボ社のシャーシに富士重工製ボディを架装したモデルですが、初代と比べるとシャーシは改良され、ボディも一新されていました。
この車両はボルボ独特の後部が高くなるステップアップルーフと後部1階席用窓を備え、国産スーパーハイデッカー車とは明らかに違うスタイリングでした。塗装デザインも黄色をベースにしながら山手と東京湾を図案化し、名所を英語で表記する目立つものを採用しました。
内装は、ヨーロコメット同様通路にサンルーフを採用し、より居住性の向上を目指して網棚が廃止されました。補助席のないワイドシートと相まって室内は非常に広く、全面固定の側窓はワイドビューを実現しました。この車両の乗客定員は44人でしたが、後部に「1階客席用窓」を採用していたものの1階には客席を設けず、ほとんど使用される機会がなかったフリースペースとなっていました。従って、この1階後部の窓配置は外観上のインパクトの為に設けられたと言っても過言ではありません。
アステローペ・スペリオールは1992年3月に3台が導入されましたが、はとバスは似たような車体を架装した国産スーパーハイデッカーを同年7月に早くも一般車として導入しました。しかし、このアステローペ・スペリオールははとバスが国産スーパーハイデッカー車を一般車として積極的に増車するなか、定期観光に特化した看板車両の大役を見事に演じ切りました。
写真①
はとバスに納車される前に富士重工の工場で撮影された貴重なショット。納車後、運行開始前に車体デザインが一部手直しされました。
写真②
後部がステップアップしたアステローペ・スペリオールの独特なサイドビュー
写真③
後ろから見てもインパクトがありました
写真④
観光地名が英語で表記されていました