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リンゴは柿ではない。

2017.11.08 22:56

今回専門的な話題になるので、意味不明な方はスルーしてください。ごめんなさい。 


 わたくし、トランペットを始めてもうすぐ30年になろうとしておりますが、この日まで知らなかった衝撃的事実についてみなさまのご意見をお聞きしたくここに書こうと思います。 


先日、サックスの方が生徒さんに自作の音階練習の楽譜を作ったと、その楽譜を見せてもらいました。 

 それがこの楽譜。

 僕は見た瞬間「この楽譜、間違ってますよ」と指摘しました。  


さてここで問題です。僕が指摘した間違いとは何でしょうか!


〜 〜 〜


これは、サックスの楽譜なので、仮にこれがアルトサックス(E♭管)で演奏するとなった場合、楽譜は『in E♭』になります。よって、この音階は(耳に聴こえてくる音としては)B♭の音階(=B dur/変ロ長調)になります。(もしそうではない場合には必ず『in ◯』と表記します)


しかし、この楽譜には『ト長調(G dur)』と書いてあるではないですか!!


「そうだ!間違ってる!」 

「え、間違ってないじゃん」

 「言いたいことはわかるけど、間違いじゃない!」


みなさんのご意見は分かれる、と予測しています。その理由はこれから話しますが、とりあえずこのブログ記事の投稿前の昨晩から、Twitterのほうでアンケートをとっております。ただ、僕のアカウントなのでトランペットの人が多いから公平さは見込めないかな、とも思うのですが。


みなさんもぜひ投票お願いします。

(投票は締め切らせていただきました。ありがとうございます。)


《サックス以外の共通認識》

さて、ここからは僕の持論。いや、きっとサックス以外の共通認識。  


この楽譜は楽典的、理論的には100%間違っています。 


 辞書で「音名」を引くとこう書いてあります。

おんめい【音名】 
音楽の素材である個々の音の絶対的な高さを表す名称。西洋音楽では,通常 CDEFGAB(日本訳はハニホヘトイロ)の七文字およびそれらの嬰変により表し,中国および日本の音楽では,十二律その他の名称を用いる。
 (スーパー大辞林より)

例えば、ピアニストに「G durを弾いてください」とお願いしたら、当然G durを弾くわけで、これはヴァイオリンもトランペットもコントラファゴットも同じはずです。

なぜならGの音というのはGの音でしかなく、G durはG durでしかないからです。
C,D,E,F…という音名は、辞書に書いてある通り、「絶対的な高さを表す」からです。


《リンゴはリンゴ》

しかし、サックスの方はこう言います「間違ってない」と。

サックスの楽譜はこう書かれていることが一般的なのだと。


もう頭の中が大パニックですよ。
名詞というのは本来、特定のものを共通認識するためにあります。

世界中の人がリンゴを見て「リンゴだappleだアポーだ」と言ってる中、ある種族だけが「これは柿だカキだpersimmonだ」と言っているようなものですから。


サックスの方に証拠として見せてもらいました。誰もが使うらしい歴史あるサックスの教則本を。そうしたら確かにそう書いています。その他にもサックスの教本は確かにそう書いてあるのです。

そこで思い出しました。トランペットのバイブルと言われるアーバン金管教本の旧タイプ(黄色い表紙)も同じように書いてありました。


これはいったい、、、、、


(昔の)フランスでは、楽譜に対する読み方や表記の仕方がそうだったのでしょうか。

いやでも!!やっぱりG durはG durなんですよ!!他になりようがない。


《他楽器とはどう対応しているのか》

そこでもうひとつの疑問を投げてみました。  

これまで吹奏楽の合奏指導をしてきたり、サックスの人と一緒に演奏したとき、サックス奏者も他の楽器と同じ認識で同じ音階を吹いていました。サックス奏者とだけ音名が食い違う経験はありません。

B dur(変ロ長調)を吹いてください、と言えばサックス奏者も同じようにB durを吹いていたことに対してはどうお考えなのか。

 するとサックスの方はこう言いました。 


 「他の楽器の人と会話を合わせることはできる」 

 と。


?!?!?? 


 えー!?じゃあ最初から実音で統一すればいいじゃん!!
 めんどくさー…


サックス奏者A「この柿おいしいね」
サックス奏者B「オーイエー!コノパーシモンハデリシャスデスネー!」
サックス奏者C「やっぱり青森産の柿は最高だね」

トランペット奏者「ねえ、なに食べてるの?」

サックス奏者ABC「リンゴでーす!」


だったら最初からリンゴでいいじゃん!


《ジャズの世界では》

小一時間論争しているうちに、もしかするとジャズコードの表記からこう呼ぶようになったのでは?という可能性が出てきました。 

確かに、ジャズのパート譜に表記されているコードネームは、移調したものを表記します。


(トランペットの楽譜)

出典 http://umjazz.com/blog/2014/06/18/trp/


(アルトサックスの楽譜)

出典 http://adlib.music.coocan.jp/adlib2/kirokusonota2/kirokusonota2.html


このように、ジャズでなくてもパート譜にコードネームを表記する場合は、移調したものを記載するのが通例。


しかし結局、サックスの方は終始「サックスはそういうものなんだ!」という持論だったため、どうしても論理的な納得ができませんでした

一応、これまでの情報をまとめてみると、あくまでも仮定として、


・サックス奏者の誰もが通過するらしい伝統的な教本の表記からすべては始まった。
・サックスはジャズで活躍する場が多いので、コードネームとの折り合いを合わせることになった。
・オーケストラと関わることが極端に少ないので、他楽器との共通認識の必要性が少なかった。
・サックスだけで広い音域を網羅できる結果、同属アンサンブルの機会が多い。


昔から存在していた楽器たちと、現代の技術によって生まれた楽器とのジェネレーションギャップによる結果ではないか、という点で少し落ち着きました。


…いや、でも、でも!!やっぱりG durはG durですよね、そうですよね、みなさん!!!  

ご意見お待ちしてます。どなたか論理的に納得のいく答えをください。


【追記】

結局何が言いたいのかわかりにくいので単刀直入に言うとですね、

サックス同士や個人の中でどう認識するかは別になんでもいいんです。そうではなくて、教育的な観点で、「これはG durです」となってしまうと、それは完全に間違っていて、今後様々なところで他の楽器や音楽をしている人と噛み合わず、面倒なステップを踏む可能性があることは指導する側はわかっているはずです。それについて疑問を持ちました。

したがって、『ト長調/G dur(ただし実音B dur)」と追記すればひとまず問題はない、と思っていますが、サックスの楽譜にそういった配慮をしているものが(僕が見た限りでは)見当たらなかったので、それはなぜなのか、なぜそんな手間を生む必要があるのか。それともちゃんと配慮している本があり、それが一般的になっているのか、などの情報が欲しいこともひとつあります。

そして、指導している人はどんな認識、配慮、意識でレッスンをしているのか、教わった人はその後に面倒なステップを踏んだことがあるのか、未だにそれがきっかけで実音や音名を理解することが難しいとか、そういったことを聞きたいのです。

論破して欲しいのではなく、もっと情報が欲しいのです。



荻原明(おぎわらあきら)