イギリス紀行21
しかしこの式典は華々しかった。アメリカ・ロスのWORLD FILM FAIRの時とは大違いである。その時は式典らしいものもなくて正直ガッカリした。もちろん旅自体が収穫だったのだが、映画祭自体はあまり芳しいものではなかった。アメリカにはるばる日本からやってきたというのに、少し凹んだ。今回のロンドン国際映画祭はさすがだった。これが映画祭、という感じ。みんな着飾って、ドレスなんかも着てて、シャンパンやワインが出され。最初の待ってる場所ではテンションが上がって、とにかく片言英語で皆に話しかけたりしてしまった。そしていくつか写真も撮影。香港の俳優さんや作品を拝見した監督さんたちとも(インドの女性監督、エストニアの監督など)。話してみると彼らもちょっと緊張してて(彼らだって外国人なのだ)、同じクリエイターとして共感が持てた。また日本の林監督ともお話して、情報交換したりした。
そしていよいよ会場がオープン、授賞式の始まりである。席は決まってて、中央のテーブルだった。少し英語が話せるせいか、英語圏の監督さんたちの輪である(あとイタリアの若手女性監督)。そのグループの中には上映会で会ったクリスもいた。やはり彼も監督だったのだ。再びクリスは「コングラチュレーション。」と声をかけてくれた。なんとも優しいのだ。そのクリスの短編に出演してるというアメリカ人の俳優が隣。彼はロス出身で、ヒョウヒョウとしてて(たしかサーファーで)、その雰囲気がすごく好きだった。なんていうか、式典を楽しんでるんだけど、どこか達観してるような感じもあって。
うん、自分にとってもこの映画祭というのはどこか別世界というか。その場にいてたらダメな気さえしてくる(これは東京のテレビ局スタジオでもかつて感じことである)。そういう最先端の場所にいると、どこか違和感というか「なにこれ。」というひねくれた気持ちになってしまう。それは元々のシャイさの裏返しか、または流行に対するどこか斜めに見る価値観のせいかもしれない。クリエイターとしては不思議な気持ちだ。なぜなら、同時にミーハーな気持ちもあったりするから。この式に参加するまでは、受賞しなくても来れただけで幸せな気持ちだった。満足してしまっていた。でも順番にノミネート作品から唯一無二の受賞作品が選ばれてゆく。そうすると、やはり受賞したいなって気持ちも芽生えてくる。そして無冠に終わってしまい、最後には悔しさを感じていた。