資源ごみの公共回収が無くなる?実証試験の実施手法に重大な問題あり!
久喜宮代衛生組合は、資源ごみ(紙・衣類)の収集に関して、現在行われている 「公共回収」から「集団回収」への変更を検討するべく、実証試験を 開始します。
この変更が実施された場合、資源ごみの処理に行政は基本的に関与せず、町内会等の団体で資源ごみの処理を完結させる必要が生じます。
▼用語の解説▼
公共回収
集団回収
町内会などの団体が各自の責任で行う資源ごみ収集
◆
この実証試験は「廃棄物減量等推進審議会」の答申が実施根拠となっています。
実際の答申書はコチラ
自治体は、自ら意思決定が難しい問題において方向性を決める時に、外部有識者による「審議会」を活用します。
審議会が審議を経て出す「答申」(こうした方がいいですよ!という意見)を受け、行政が事業を組み立てていくわけです。
今回の資源ごみ収集方法の変更問題に関しても、
審議会の答申を受けた後に、実施主体である久喜宮代衛生組合が地域向けの説明会を開催し、実施を目指すことになります。
(実証試験を実施する流れ)
①審議会から久喜宮代衛生組合に「答申」
↓
②答申を受けた久喜宮代衛生組合から、区長会はじめ、地域住民への説明
↓
③モデル地区(実証試験地区)募集
言うまでもなく、これらのフローには
情報の「一貫性」が求められます。
しかし、
久喜宮代衛生組合が実証試験実施にあたって進めている広報活動は、残念ながら一貫性と公平性を著しく欠いています。
以下大きく3点、重大な瑕疵を挙げます
■審議会資料と区長説明会資料で、報償金単価が大きく変わっている点■
資源ごみを「集団回収」した場合、集めた資源の重さに応じて、自治体から報償
金が支払われます。
久喜宮代衛生組合は、審議会に提出したコスト比較資料において、
報償金1キロあたり3~4円である横浜方式、新座方式を参考に、「現状よりもコスト削減効果があります!」と謳っています。
それにも関わらず!
実証試験の区長向け説明会資料では、同じ
横浜、新座方式において、
いつの間にか、報償金は1キロあたり7円と設定されているのです。
つまり
審議会では
「報償金3円か4円(/kg)に設定すれば、現状よりコスト削減効果があります!」
区長会向けの説明では
「報償金たくさんもらえます!(7円(/kg))=コスト度外視」
と、場面と相手によって、180度違うアナウンスをしたことになります。
この理由を、議会で質問したところ
「(報償金を高く設定した方が)実証試験がスムーズにいくと思ったから」
といった趣旨の答弁が返ってきました。
実証試験は、あくまで「試験」ですから、そもそもスムーズに進む必要はありません。
成功も失敗も試験の結果であり、その結果が今後の事業の進路を決めるわけですから、
成功するように、プレーンな状況に手を加えることなど絶対にあってはいけません。
さらに以下の観点からも、このダブルスタンダードは極めて重大な問題であると考えます。
① 実証試験は審議会の答申に基づいて行われる
② 審議会の答申にも書かれているように、収集方法変更の目的の一つは「コスト削減」である
③ ②の判断材料となる審議会資料では、報償金のキロ単価を3円~4円で設定しており、現状との比較によりコスト削減効果を明示している
④ ③より、答申が導かれた根拠に、審議会資料が影響していることは明らか
➄ 報償金金額が変わる(3円、4円→7円)ならば、3,000万円近いコスト増となり、コスト削減効果は著しく下がる。つまり、審議会の答申の方向そのものが変わる可能性がある
⑥ 審議会における判断材料となったデータを根底から覆すことを、審議会メンバーに説明していない
この審議会軽視かつアンフェアな段取りを、見過ごすことは出来ません。
今後の住民説明を注視し、それに応じて議会で継続的に質問を行います。
■報償金金額は変わる可能性があるのに、区長会説明資料にはそのリスクを書いていない点■
審議会の答申にでも、審議会資料でも、
市況の変化などにより、一度設定した報償金の金額が不変ではないことが明記されています。
資源リサイクルの機運が高まった2000年代、2008年をピークに、資源の市況価格は長期では下落傾向にあります。
今後の紙需要の低下を考えると、市況価格は下がる事が予想される中、
その市況価格の下落リスクには一切触れず報償金「7円」としか明記しないのは、フェアではありません。
市況価格に伴う、報償金の下落リスクに関しては
「今後、周知していく」
と答弁がありましたので、しっかりと履行されるよう推移を見たいと思います
■メリット・デメリットの広報がされていない点■
集団回収には、メリットもありますが、デメリットもあります。
メリットは、区長会説明資料では以下3点があげられています。
①住民相互の親睦
②物を大切にする意識の育成
③報償金の有効活用
一方で公共回収と、集団回収を比較したデメリットに関しては、区長説明会資料で、一切触れられていません。
私が予想するデメリットは以下4点です。
①各自治会が収集企業と契約し、管理運営を行わなくてはならない➡自治会事務の
負担増
②高齢化、自治会加入率の低下が進む現実➡自治会が資源収集を継続的に維持する
ことが可能か?
③資源ごみの収集量、買取価格は下落傾向にある➡下落が明らかな事業を自治会が
請け負うリスク
④PTAなどは既に集団回収を実施し、貴重な財源としている➡自治会による集団回
収との棲み分けは?
ちなみに前議会で、公平を期すべくデメリットの広報をするべきと質したところ、
「デメリットを広報すると混乱する」
との答弁がありました。
メリット、デメリットを正確にお伝えして、事業の有効性を判断するのが実証試験のはずで、
都合のいい部分だけを伝えるのは、真摯な姿勢ではありません。
加えて、
デメリットを説明すると混乱が生じるような事業は、遅かれ早かれ混乱を生じさせますから、そもそも不要でしょう。
以上、私が感じる久喜宮代衛生組合の瑕疵を述べました。
◆
私は、ゴミ収集は行政が責任を持って完結させるべきであり、公共回収のセーフティネットは守るべきと考えます。
もちろん、公共回収のセーフティネットを前提に行う、各団体の自主的な資源ごみ集団回収は素晴らしい取り組みです。
各団体の貴重な財源であることからも今の報償金7円を維持するべきと思います。
公共回収を無くし、全てを集団回収にすることは、これまで集団回収に取り組んできた団体にも混乱を生じさせるリスクも付記しておきます。
このように、長きにわたって市民生活に影響を与える重大な問題です。
私がとにかく、久喜宮代衛生組合に望むことは、
一貫性を持った情報開示と、
デメリットやリスクを含めた正確で公平な広報周知活動です。
議会答弁であったような、
「試験がスムーズに進むように」
「混乱を招かないように」
など理由で、情報の選別をするべきではありません。
引き続きしっかりと調査し、議会から声を挙げて参ります。