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あとは死ぬだけ

2017.01.09 04:46


















遺書
















これは、遺書だ。






とても強く自分を持って、生きてきた女性の。






無駄だらけの人生だったが、それなりに私には意味のある人生だった。私の思考や言葉が誰にも何も伝えず、跡形もなく消え去るものであったとしても、少なくとも私にとっては意味があったのだ。そして、本人にとって意味のある人生だったなら、それで充分なのではないか?




中村うさぎ『あとは死ぬだけ』p.161






買い物依存症、ホスト狂い、美容整形手術、ゲイコミュニティへの出入り、デリヘル嬢。フリーライターとしての立派な職業を持ちながら、いろいろな場所に迷い込み、苦しんだり、あるいは興味深く楽しんだり、そうして、いろんなことを考えてきたのだろう。






考える人生は、辛い。




とくに、生きづらい現代では、その多くは悩みになり、それに苦しめられる。






この世界のこと、他者のこと、目に見えないもののこと、いろんなものに疑問を持たずに生きるのは楽だ。




社交辞令や他人の調子に任せて、自分の言葉を持たずに生きるのは楽だ。






多くの人が、当たり前だと思っていることに疑問を抱き、自分で考えて出した答えに基づいて行動する人は、たいていの場合、「変な人」だと認識される。






「自分の目に映っているものが、他人にも同様に見えているとは限らない。」




同じ経験をしていても、全く異なる経験として捉えているかもしれない。




想像力。行き過ぎれば妄想。






他者を意識して、自分を過大評価せず、私について、関係性について考える。




考えすぎるのは、疲れるし、たぶん辛くなる。






彼女もそういう人だったんだと思う。だから、とても共感できる。






自分の言葉を持っている人は、強い。




悩んで、苦しんで、心を病んで、薬を飲んでいたとしても、やっぱり強い人だと思う。






それは、流れに抗うことができる強さだ。








だから、うまくいかないこともある。
















あとは死ぬだけ







このタイトルと同じことを、思ったことがある。






というか、今も思っているし、思いながら生きている。






これほどまで「私」を意識して、世界に身を置いて生きてきたわけでもなく、




たくさん流されて生きてきた。






人並みに楽しいことをして、人並みにライフステージのそれぞれの段階を超えてきた。






仕事して、結婚して、子育てし、マイホームを持った。






自分の生きづらさは、そのライフステージを一通り経験していることとは全然関係ないけれど、そんなに順調に人生歩んでいるのになぜ?と思う人もいるだろう。




それこそ、他者を意識しすぎている無駄な自意識なのだけれど。






それでも、いつも「あとは死ぬだけ」と唱えて生きている。






あるときを境に、自分の人生はあとは「ゆっくりと降りていく」だけだと感じてしまうようになった。






30歳ちょっと過ぎたくらいで、そんな風に思うのはおかしいのだろうか。






自分の目で、自分を見ることには限界がある。




だから、うさぎ氏は、自分の主観に信用を置いていない。他者という装置に依存した。




「私」というものの存在を知りたくて、絶えず意識してきた彼女にとって当然の帰結かもしれない。






自分の「生きている意味」を考えている人は少ないのだろうか。




僕にとっては、自分の生きる意味を考えることが、「私」を知ることそのものだった。






他の誰でもない「私」の人生は、他の誰にもない価値を持っているのか。代替可能なものであるのならば、その「私」には意味があるのか。それとも、同じような価値を持つことが、素晴らしい人生になるのか。






他の誰にもない価値、を目指して生きてきた。




それが、自分の生きづらさの根源だ。






それを求められているような気がして、いつまでもそんなものは自分には無い気がして、ずっと苦しんでいた。いまも、その呪いに悩まされているかもしれない。






この先、いままで経験した幸せ以上のものはないだろう。




ゆっくりと降りていく人生を、歩んでいくだけ。






「あとは死ぬだけ」でいい。






そう思うことで、「私」という地獄から開放されたいのかもしれない。
















遺書を残すとしたら、こんな感じだ、と思った。






自分の言葉は、たぶん後世に残らない。






だけど、自分の人生くらい、自分の言葉で、自分のためだけに残しておきたい。






ざらざらとした本の感触から、そんな気持ちが伝わってきた。