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取材執筆|広島大学放射光科学研究センター 松尾光一 准教授(国立大学附置研究所・センター会議)

2022.02.01 08:02

記事へのリンク

世界で初めて開発した解析法で、溶液中の生体分子の構造を明らかにする

広島大学放射光科学研究センター 松尾 光一 准教授


去年の話になりますが、広島大学に取材に行ってきました。


取材した松尾先生たちのグループは世界で初めて「放射光真空紫外円二色性分光法」を実用化した、とのこと。やたら強そうな必殺技みたいな名前。難しそうな取材だなあと思いつつ、でも放射光といえば世界最大級の放射光施設SPring-8の広報誌を担当させてもらっているので、これはわたしがやらねばなるまいと、勇んでいってきました。


その結果、松尾先生がとても親切に分かりやすく教えてくれたので、ようやく放射光とは何なのか、何がすごいのか、どういうことができるのかがわかったのでした!

まず放射光というのは電子をでっかい装置の中でサーキットのF1のごとく(もちろんそれよりももっと速く)高速でびゅんびゅん走らせて、磁力をかけてぐぬぬぬっと曲げると、エネルギーが放出される、それが放射光!


この放射光には電磁波の全部の成分が含まれているので、好きな成分だけ取り出して使うことができる。強いエネルギー(高輝度)で、好きな大きさの電磁波(広範囲な波長範囲)の光を使って、小さなものを見ることができるのでした。


光というのは波でして、波の大きさによって、いろいろな名前がついている。わたしたちが目で見ている光は可視光。もっと細かい波だと紫外線、さらに細かくなるとX線。物を見るというのは、この波が当たって跳ね返ったり波の形が変わったりする様子を検出しているわけで、波と波の間の距離を波長というけれど、波長が長いと小さいものにはぶつからない。すりぬけてしまう。わたしたちが普通の歩調で歩いていたら、滅多にアリを踏みつぶさない、みたいなイメージ。アリに当たるためには小さい歩幅が必要で、可視光では見えない小さなものをみるためには、波長の短い紫外線やX線が必要になるわけです。


ちなみに、X線は細かすぎて原子の間も通り抜けるから、体を透視できるんですねえ。原子より小さい電子を見ているんですね。電子がぎっしり詰まった分子と、そうでない分子を見分けて、あのレントゲン画像ができるわけですねえ。

・・・と、わたしが理解できて面白かったことをつらつらと解説しましたが、分子や原子の形や動きを見る方法を開発し、そこからどういうことがわかったのか、ぜひ記事をご覧ください。


研究内容だけじゃなく、先生の生き方にも感銘を受けた取材でした。世界初の方法を開発したなんてすごいじゃないですか。でもそれって、先生の努力や才能も大いに関係しているけれど、先生がたまたまこの時期に広大にいて、たまたま放射光施設が建設されて、たまたまこの分野に興味をもっていたから、成し遂げられたことだ。


今ある環境を生かして、やるべきことを、そしてやりたいことを突き進んだ結果が、世界初になった。


わたしも、そんなふうに生きたらいいのかもしれないと思った。誰かに憧れたり、別の人の環境をうらやましがったりせず、今ここで、わたしという人間が、与えられた環境を生かして、やりたいことをやっていれば、気がつくと、何か世の中に役に立つことを成し遂げられているのかもしれない。あなたがいてくれてよかったと、思われるようになっているかもしれない。


いやはや、たくさんの素敵な人の人生に触れることができる、インタビューライターのお仕事は本当に楽しいです。


この取材をしたのは去年の秋。まだオミクロンも猛威をふるっていなかったし、秋~年末まではあちこち出張三昧でした。大変だけど、やっぱり直接会ってお話できて、研究室を見せてもらって、カメラマンさんといろいろ交流して、リアル取材は楽しい。


広島で高校生まで育ったけど、広大に行ったのは初めてだった。

広大のある東広島市西条は酒蔵の街。

お好み焼きもばっちり食べました。


「真心デイズ酒蔵通り店」さん。おいしかった。取材前なのでお酒は飲んでないですよ!水ですよ!お酒の瓶にお冷が入ってて可愛い~!と思って写真撮ったけど、これじゃあ疑われるじゃないかと思った。言い訳するほどあやしい(笑)

取材にご一緒してくれた広島のカメラマン吉岡小百合さん(映像制作TASKA取締役)が、取材風景もついでに撮ってくれました。やったー。貴重!

取材したけど、ブログに書いていない記事がまだまだたくさんあるので、ぼちぼち紹介していきます。