からあゐ
万葉の花とみどり_からあゐ 韓藍・辛藍・鶏冠草 ケイトウ
我が屋戸に韓藍蒔き生ほし枯れぬれど 懲りずてまたも蒔かむとそ思ふ
山部赤人 巻三 384
『読 み』わがやどにからあいまきおおしかれぬれど こりずてまたもまかむとそおもう
『歌 意』我が家の庭に韓藍の種を蒔いて育て、それがもう枯れてしまったが、性懲りもなくまた蒔こうかと思っている。
韓の国から来た「あゐ」
からあゐとは現在におけるケイトウで、その赤く鮮烈な色が恋心を表し、ケイトウを美しい女性そのものにたとえています。美しいあの女性を将来妻にしようと大切にしてきたのに、自分から離れ、他人のものになってしまった…というような意味ととなっています。からあゐの名は、韓(から)の国から来たからとも、赤い藍(あかあい)が転じたともいわれますが、古くから花の赤い部分はもちろん、葉も染料として用いられてきました。ケイトウは熱帯地方を原産とするヒユ科の一年草で、漢字で鶏頭と書き、名の示すとおり花がニワトリの鶏冠に似ています。園芸種で先の尖ったものや黄色の花も見かけますが、やはり燃えるような濃い赤の鶏冠型の方が葉の緑に映えます。
写し染めの染料として
他の自然染料と同様、草木灰の汁や酸で定着を促し、布や紙繊維の染色に使うことができます。昔は、糊ににケイトウの染料を混ぜ込んで直接布に色を刷りこむ写し染めをおこなっていたそうですが、技法の詳細は不明です。次の歌からは、ケイトウが写し染めに使われていたことがわかり、せっかく育てたケイトウが盗まれてしまったことを嘆いています。
秋さらば写しもせむとわが蒔きし 韓藍の花を誰か採みけむ 作者不詳 巻七 1362
管理者『妬持』の声
後の歌ですが、ケイトウが抜き去られたくらいで嘆かわしいが歌にならないことは明らか。