ダイバーシティは「理想」から「切実」へ。
ダイバーシティという言葉が企業での人材活用に使われるようになって、かなりの月日が流れました。しかし、そこで語られるニュアンスは時代の中で大きく変わっているような印象を受けます。
「ダイバーシティ」が盛んに言われ始めた当初は、それは今でいうポリティカルコレクトネスに基づいた理想の追求といったニュアンスが強かったように感じます。「新卒の男性正社員」だけではなく、女性を、障がい者を、シニアを、外国人を、母親を、なるべく活用しよう的な。目指すべき理想の姿。だからこそ、そこには「推進」という言葉が、よくくっ付いていました。
でも、今は切実です。労働人口は減る一方で優秀な人材を確保する難易度はあがりつづけています。こうなると、もう「新卒の男性正社員」にこだわり続けるのは限界です。どう考えても、負け筋。そんな余裕はありません。属性は問わない、働き方も時短やリモートワークだっていい、とにかく有能であればいい。そのためには、様々な属性や働き方の人材を活用できる制度と風土を準備する必要があります。ダイバーシティへの取り組みは「(政治的に)しなければならないもの」から「(競争力を維持するために)しなければならないもの」に変容しつつあります。
そして多様な属性や働き方の人材を活用するには制度や風土はもちろんですが、必要になるのはより高度なマネジメントです。同質的な集団をマネージするのとは、本質的に違うスキルが求められるはず。人材の多様化、採用手法の多様化、働き方の多様化は、人事や採用のプロ化を促していますが、同時にマネジメントのプロ化を促している気がしてなりません。
ただマネジメントコストを除けば、同質的な組織より多様性のある組織の方が本質的には強いはず。それはこのアニメの名言に集約されている気がします。
戦闘単位として、どんなに優秀でも同じ規格品で構成されたシステムは、どこかに致命的な欠陥を持つことになるわ。組織も人間も同じ。特殊化の果てにあるのは、ゆるやかな死…それだけよ
引用元 攻殻機動隊製作委員会 「攻殻機動隊 S.A.C.」