ロマン派の時代4-ドイツオペラ誕生
2022.02.03 09:13
1821年、ウェーバーのオペラ「魔弾の射手」が上演されて大好評をとった。ウェーバーは、モーツァルトも交際していた音楽一族であり、コンスタンツェは父方の従姉にあたる。北ドイツのリューベックで生まれ、ザクセンの宮廷楽長となって、モーツァルトをはじめとするドイツオペラの普及に努めた。
「魔弾の射手」は、ザクセンではなくあえてプロイセンの首都ベルリンで初演した。テーマは、6発までは自分の思う所に命中するが、最後の1発は、悪魔の思う所に命中する、というドイツの民間伝承から取った。それまでのギリシャローマ神話から決別して、ドイツ独自のストーリーである。
登場者は、狩人と民衆。主人公は悪魔の誘惑に負けるが、最後に森の聖者に救われる。そして聖者は、「御前射撃」という悪い風習は止めるようにと勧告し、主人公は猶予をもらって掟の道に立ち返る。まさにドイツの近代プロテスタント道徳の革新のオペラなのだ。
ジングシュピーゲルの伝統を引き継ぎ、有名な「狩人の合唱」のように、ウェーバーのハーモニーはわかりやすい。まさにドイツオペラを確立した金字塔といえる。ベルリオーズやワグナーもこのオペラを見て作曲家を志した。しかしその後残念なことに結核を患い、これに勝る名作は生み出されていない。