タテ社会の人間関係 単一社会の理論
年功序列、終身雇用、など日本の企業の特色で会った雇用制度。その日本社会の組織の骨格の基本としてあった(ある)のが、いわゆる「タテの関係」つまり「タテ社会」です。これは、我々日本人にとっておなじみの組織構図です。そのタテ社会の人間関係について、非常に分かりやすく、しかも納得のいく考察を提示しているのが今回紹介する「タテ社会の人間関係 単一社会の人間関係」です。著者は中根千枝さん。日本の社会人類学者です。専門はインド・チベット・日本の社会組織。東京大学名誉教授で、イギリス人類学民族学連合名誉会員、国際人類学民族学連合名誉会員としても活躍。また、女性初の東大教授であり、女性初の日本学士院会員です。また学術系としては女性初の文化勲章受章者となった方です。
中根さんは、東大大学院終了し、日本の農村調査の後、インド、イギリス、イタリアなど世界各地で人類学の研究を続けます。その後、日本に戻ると、月刊誌『中央公論』から「どんなテーマでもいいから論文を書いて」と注文を受け、日本集団構造についての論文を書き上げます。これが、高い評価を受け、その論文を加筆し、修正を加えたものが本書「タテ社会の人間関係」です。1967年に(昭和42年)に出版され、現在までに117万部にもおよぶロングセラーを記録。イギリスでも英語版が出版され、その後、13カ国で翻訳出版さました。(以上、著者略歴、出版経緯 Wikipediaより)
本書で特に興味深いのは、第5章の「集団の構造的特色」です。中根さんは、日本のタテ社会を「底辺のない(開いた)三角形」として定義し、その三角形が下へ向かって拡大していくピラミッドのような構造としてとらえています。ここではその内容について詳しい説明は避けますが、例えば、日本の会社における年功序列、組織内のヨコの関係の希薄さ、集団の中での上下関係を含む人間関係、などなど、読んでいて腑に落ちることばかりでした。日本の集団組織を底辺の開いた三角形というイメージで視覚的にとらえた中根さんのこの発想は、社会人類学者が長々と言葉で説明するものより簡潔で説得力があると思います。またこの構図の延長には、日本人独特の「義理や人情」「長い物には巻かれろ」的な意識構造を結び付けて考えることもできると思います。日本の組織で感じてきたことで、「あれはこういうことだったのか。。」と今更ながら納得できることがけっこうありました。
新書版なので、ページも薄く読みやすいと思います。会社に限らず、日本の組織の強さ、窮屈さ、人間関係のある意味濃密さ、または希薄さ、、、おそらくみなさんも感じる(感じてきた)思いは「こういうことだったのか。。」と納得できることがけっこうあると思います。是非読んで見て下さい。