Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

近代思想5-ヘーゲル「法の哲学」

2022.02.11 02:57

1821年哲学者ヘーゲルの「法の哲学」が出版された。この序文で、ヘーゲルはブルシェンシャフトが「国家が個人の心情から生まれてくる」と言ったロマン主義的考え方を批判している。つまり国の在り方は建築術なのであって、しっかりとした理性に基づいて構築されるものなのだと。

ヘーゲルの考えでは、歴史とは絶対精神が自己を展開していく過程である。従って、それを哲学は理性的に把握しなければならないという。彼は、啓蒙主義に則って、人間の自由精神からはじめ、それが自己展開していくなかで、家族ができ、そして市民社会ができる、と述べる。

市民社会は国家にたどりつく。市民社会では利害関係の調整は限界があり、国家がそれを行うのである。他の啓蒙主義者のように個人からいきなり国家ができるのではなく、個人が家族となり、市民社会になるという段階を経ているのは、ヘーゲル独自の慧眼である。

しかし彼は国家の権力として、立法権、統治権、君主権があるという。つまり立憲君主制を最高のものと考えるのである。確かに共和制は不安定で、オランダも君主制に帰ってしまい、現代でも君主制は残っている。だからといって君主制が最高と考えるのは恣意的だという批判を受けていく。