キングスマン:ファーストエージェント 最強紳士スパイが過激に悪を撃つ その3
本作の主役となる英国の名門貴族、オーランド・オックスフォード公(レイフ・ファインズ)は英国軍人であったが、英国という国家の国外における欺瞞と戦場の殺戮に嫌気が差し、軍隊を退役後、世界の戦地に救援物資を届ける赤十字の活動を行っていた。
時は20世紀初頭、1902年の南アフリカにさかのぼる。英国は南アフリカの領有権を巡り、ボーア人(アフリカーナー)との激しい戦い・第二次ボーア戦争を繰り広げていた。
オックスフォード公は妻のエミリー(アレクサンドラ・マリア・ララ)、息子のコンラッド(幼年期:アレクサンダー・ショウ)、執事のショーラ(ジャイモン・フンスー)とともに赤十字活動で英国軍の基地を訪問。
オックスフォード公は盟友の指揮官・キッチナー(チャールズ・ダンス)と、彼の右腕となる副官のモートン(マシュー・グード)と基地内で面会するが、ボーア人兵士が放ったライフルの凶弾により、エミリーは命を落としてしまう。
時は流れ、1914年。「羊飼い」を名乗る謎の男が、世界に混乱を巻き起こすべく、とある断崖絶壁の小屋で秘密会議を開いていた。
そこにいるのはロシアの怪僧、ラスプーチン(リス・エヴァンス)、女スパイ、マタ・ハリ(ヴァレリー・パフナー)、セルビアのテロリスト、ガヴリロ・プリンツィプ(ジョエル・バスマン)、ロシアの革命家、レーニン(アウグスト・ディール)、ドイツのニセ預言者、エリック・ヤン・ハヌッセン(ダニエル・ブリュール)など、後に世界を揺り動かすことになるキーパーソンたちで構成される「闇の狂団」であった。
「羊飼い」は彼らに「闇の狂団」のメンバー証である動物の絵柄入りの指輪を渡す。指輪の中には、自決用の青酸カリが封入されていた。
「羊飼い」の目的は、いとこ同士となるイギリス国王のジョージ5世、ドイツ皇帝のヴィルヘルム2世、ロシア皇帝のニコライ2世(トム・ホランダーの1人3役)を反目させ、世界に破滅的な戦争を起こすことであった。
オックスフォード公はキッチナーの依頼を受け、成人したコンラッド(ハリス・ディキンソン)とともにオーストリア=ハンガリー帝国の皇位継承者であるフランツ・フェルディナンド大公(ロン・クック)を護衛する。
しかし、オックスフォード公の努力も虚しく、大公はプリンツィプに射殺されてしまう。
その後、キッチナーが乗船していた装甲巡洋艦ハンプシャーが魚雷を発射され、沈没するなどの不穏な事件が次々と発生する。
そこで、オックスフォード公は女執事のポリー・ワトキンズ(ジェマ・アータートン)に命じて、国家権力に頼らない諜報網の構築を開始した。
各地に散らばる使用人のコネクションを活かした独自の諜報網から得られた情報により、ロシアのラスプーチンが世界大戦の元凶になることを察知したオックスフォード公、コンラッド、ポリー、ショーラの4名はロシアの宮殿に潜入。
激しい戦闘の末、ラスプーチンは絶命する。
コンラッドは英国への愛国心から第一次世界大戦への従軍を強く希望するが、国家の欺瞞を知っている父親のオックスフォード公は乗り気ではなかった。
結局、コンラッドは父親の反対を振り切り英国軍に入隊、ドイツ軍との戦闘の最前線に従軍する。
コンラッドは英国軍の上官から帰還を命じられるが、下士官のアーチー・リード(アーロン・テイラー=ジョンソン)と入れ替わり、最前線への従軍を続ける。
現場で勇敢な活躍を見せるコンラッドだったが、アーチーと入れ替わったことが仇となり、別の英国軍上官からドイツ軍のスパイと誤認され、射殺されてしまう。
妻エミリーに続き、息子のコンラッドにも先立たれてしまったオックスフォード公は悲嘆に暮れ、酒に溺れる日々を送っていた。
しかし、「闇の狂団」が動き続けていることに気づいたオックスフォード公は立ち直るとともに、執事のポリーに命じて世界中の諜報ネットワークを駆使してドイツ軍の暗号を読み解く。
オックスフォード公はアメリカにドイツの陰謀を伝えるが、アメリカのウィルソン大統領は「闇の狂団」メンバーのマタ・ハリのハニートラップにより淫行フィルムを盗撮されたことで弱みを握られ、動きが取れなくなっていた。
オックスフォード公は盗撮フィルムを取り返すべく、ポリー、ショーラとともに3人で断崖絶壁にある「闇の狂団」の本部に乗り込む。
しかし、黒幕の「羊飼い」は驚くほど意外な人物であった。
マーク・ミラー原作の「キングスマン」シリーズ第3作。今回は、「キングスマン」結成のきっかけとなった第一次世界大戦時の秘話と戦いを描くエピソード0作。
「キングスマン」結成には、戦争で息子と妻を亡くした夫である貴族の男の平和への願いが込められていた。
戦争の残酷さを知り赤十字活動に専念するオックスフォード卿と国のために尽くしたいコンラッドの父子の愛とすれ違い、オックスフォード卿とショーラやポリーの主従関係を超えた強い絆は、前2作でのエグジーとハリーとマーリンの師弟愛とブロマンスを彷彿とさせる。
オックスフォード卿とコンラッドとショーラが、怪僧ラスプーチンと戦うアクロバティックなソード格闘バトル、クライマックスでのアメリカ大統領の秘密が記録されたテープを奪って「闇の狂団」のリーダーを倒す最大のミッションでは断崖絶壁をフリークライムで踏破して潜入したり敵とのバトルでは鮮やかなコンビネーションのアクションが楽しめる。
ただ、「闇の狂団」という悪が、ラスプーチンとマタ・ハリ以外は魅力が薄く、特に「闇の狂団」の黒幕は存在感が薄過ぎるのが残念。
とはいえ、「なぜキングスマンのコードネームが、アーサー王と円卓の騎士にちなんでいるのか?」「キングスマンのコールサインがなぜ「オックスフォードだ。ブローグではなく」なのか?」など、「キングスマン」のルーツが分かるので、紳士スパイアクション+歴史奇想モノ+戦争映画という新しいスタイルのスパイアクション映画。
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