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第一章 桜花月団開花物語 二話

2018.03.30 13:30

🌸華麗な少女 桜は舞って🌸




里舞「美月! 下がって!」

美月「えっ!?」

美月は疑問に思いつつ後ろに飛ぶ。自分が思ったより跳べたらしく、驚いたのも束の間。

前……否、空から星が降ってきた。それは里舞の足元に着弾し、煙が立つ。

煙が空気中に溶けていったときには、魔法使いのような帽子を被った金髪の人物と煙の中で魔法使いに向けて跳んだのであろう里舞は上空にいて、そこで魔法使いが乗っていた箒から里舞の腕を手刀で叩き、刀を叩き落とした。

??「おらっ!」

里舞「……っ!」

美月の前に刀が突き刺さった。

里舞は刀の場所を空から降下中に一瞬で確認した後、魔法使いの身体を蹴り地面に叩き落とした。里舞も地面に降りて刀を取り、体制を立て直す。

里舞「誰ですか……?」

??「こっちの台詞だぜ! さぁ、お手並み拝見!」

魔法使いは再び空に飛び上がり、自分を囲うように小さめの魔法陣を十個出した。

里舞「あなたがその気なら私だって……」

??「【恋符 ノンディレクショナルレーザー】!」

技名が発された直後に、魔法使いを中心に回っている魔法陣から緑、青、桃、赤、黄のレーザーが放出された。少しすると規則的に星弾が放たれ、その中の小さな星弾は不規則に落ちてくる。

美月「うわぁ……すごく綺麗……!」

美月がカラフルな光線と弾に見惚れているのとは対照的に、里舞は若干の焦りを感じていた。

里舞「うへぇ、避けられるかな」

??「幻想郷に来て間もないお前には厳しいかもな?」

里舞「そうですね。避けるのが厳しいので壊しますね!」

里舞は思い切り地面を蹴り、向かってくる弾幕を刀で斬った。弾幕はすべて砂のように化していく。そして再び地面を蹴って上空に上がり、間合いを詰めた。

??「!?」

里舞「【斬符 桜花戰斬】」

刀に魔力を込めて弾幕が出てくる魔法陣を壊そうとした、そのとき。

??「私の神社で何やってるのよあんたたち!」

下から札弾がいくつも飛んできた。

里舞「お札?」

その方向を見ると、紅と白を基調とした巫女衣装の人物が仁王立ちしている。

里舞と魔法使いはゆっくり地面に降りた。



??「まったく、何でここで弾幕ごっこしてるのよ」

紅白巫女、魔法使い、里舞、美月は揃って縁側に座っている。博麗神社は荘厳な神威ある神社、ではなく庶民的で身近な神社なので、こんな風に気軽に縁側に座っても誰も咎めない。むしろ歓迎するように、立派に育った境内の杉の木が風によって爽やかに葉を揺らす。

里舞「すいません……って、私悪くないですよ」

??「私も悪くないぜ」

それを聞いて諦めたように溜め息をついた紅白巫女は、黒髪に赤いリボン、腋を出した紅色と白色の巫女服を着た少女だ。お祓い棒を持つ姿はこれまた神威ある巫女に見えるが、今のところそんな雰囲気はなく、普段からのんびり暮らしていることを窺わせる。

悪気を微塵も感じない目で紅白巫女を見る魔法使いは、金髪に黒い三角帽、黒の服に白いエプロンといったいかにもな格好の少女。先ほど乗っていた箒を縦に置き、八角形状の何かを横に置いている。

??「ったく……そこの黒髪さん、名前は?」

里舞「桜羅木里舞です」

美月「あっ、私は日暮美月です!」

魔理沙「私は霧雨魔理沙だ」

霊夢「ここの神社の巫女、博麗霊夢よ。あんたたちは初めて幻想郷に来たの?」

美月「はい!」

里舞「……はい。ついさっきです」

魔理沙「初めての弾幕ごっこなのにあそこまで食らいついててすごいじゃないか」

霊夢「ここまで達者な新人は初めてね。どこで学んだの?」

里舞「ちょっと戦闘に経験があって。技については本能で動いた、というか」

霊夢「それは才能ってやつね。いや、それでも弾幕に物怖じせずスペルカードを放とうとするなんて……」

美月「あ、あの、今のって何なんですか? 弾幕ごっこ? すぺるかーど?」

恐る恐る質問をした美月。自分の知らない単語、見慣れない光景が多すぎて頭が思うようについていけなかったのである。

魔理沙「そうだな……弾幕ごっこというのは、スペルカードルールの呼称だ。弾幕、は分かるか?」

美月「弾を多数発射して幕のように張ることですかね……?」

霊夢「そう。さっき魔理沙が星弾とかレーザーを撃ったでしょう、あれを弾幕と言うの。基本的に大弾、中弾、小弾、米弾、鱗弾……それと、ナイフを投げたり美月が弓で矢を射ったりしても弾幕になり得るから、まぁあまり制限はないわね」

美月「なるほど……でもそのような星弾、大弾などはどういう方法で撃っているんですか?」

霊夢「気を、集める……」

魔理沙「化け物茸を加工してだな……」

急に言葉を詰まらせた二人に対して、里舞ははっきりと声を張った。

里舞「体内のエネルギー、魔力をぎゅっと凝固させるイメージよ。集めて放出すると弾幕を放てる。集めて固定すると魔力を込められる」

まるで長く弾幕の鍛錬を行ってきたかのような具体的な発言。霊夢は里舞が隠している、才能だけではない何かを感じた。

美月「なるほど……!」

霊夢「そして、弾幕を使って決闘するのがスペルカードルールだわ。真剣に戦うわけじゃなく、遊びに近いわね。あくまで美しさに重きを置くのよ」

魔理沙「戦闘前にあらかじめ技と名前、意味を決めておいて、スペルカードという名の契約書に記すんだ。その技を使う回数、技名を宣言して戦いを行う。細かい決まりごとは最近だとやられていない場合も多いな」

里舞「そんな決まりがあるんですね」

美月「そういうことですか!」

里舞と美月が納得したように頷くと、魔理沙は少し間を空けて打ち明けた。

魔理沙「里舞と美月が来たとき、結構な魔力の量を感じてな。さっきのお手並み拝見ってのはそのままの意味だ。これじゃこの世界の住人に戦いを挑まれるし、そこら辺の妖怪に食べられる可能性もある……練習ぐらいは積んだほうがいいぜ?」

里舞「それも、そうですね」

美月「私にそんな……魔力が? いやいや……」

霊夢「練習ねぇ。博麗神社でやるのは掃除が面ど……神聖な場だから傷つけたくないわ。紅魔館とかどうかしら。あそこの連中ならいつでも暇だと思うし」

美月「紅魔館? どんなところですか?」

魔理沙「そうだな……吸血鬼がいるな。あとは魔法使いとか、だな。それに大図書館ってのもあるぜ」

美月「大図書館!? き、気になります!」

霊夢「それじゃあ、幻想郷の案内のついでに紅魔館に行きましょうか」

里舞「……そうですね」



四人が博麗神社から人間の里に向かう道を降りている途中、里舞と美月に聞こえないよう、霊夢と魔理沙は小さく声を交わした。

霊夢「外の世界から迷い込んだ外来人にしては、あの魔力量はおかしいわよ。帰りたいとも言わないし、里舞は初心者に見えないし……」

魔理沙「とりあえず二人とも保護するしかないな。監視の意味合いも込めてだが」

そして何事もなかったかのように、再び歩き出す。



            《三話に続く》

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