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第一章 桜花月団開花物語 四話

2018.03.30 12:00

🌸紅い月 破壊の目🌸




レミリア「当たりよ、霊夢」

紅魔館から翼を羽ばたかせて優雅にやって来たのは、霊夢の予想通りレミリアだった。

水色に光るウェーブした銀髪をナイトキャップで覆い、ピンク色のドレスをふわふわと揺らすその姿は遥かに幼い。

霊夢「で、混ざりたいって?」

レミリア「そのままの意味よ。というか、私が混ざりたいってより、フランがね……」

フラン「わぁっ! 見たことない人がいる!」

レミリアの後ろからその深紅の瞳を輝かせるのは、フランと呼ばれた少女。横で一つに縛った薄い金髪をレミリアと同じようにナイトキャップで覆って、半袖の赤い服を着ている。翼はクリスタルが八つ下がった不思議なもの。

里舞はレミリアを睨んでゆっくりと呟く。

里舞「……吸血鬼?」

レミリア「よく分かったじゃない、そこの人間」

里舞「人間、じゃなくて桜羅木里舞と呼んでください。よろしくお願いします」

美月「あっ、日暮美月です! よろしくお願いします!」

フラン「フランドール・スカーレットよ! よろしくね!」



??「お嬢様、妹様、突然飛び出すのはやめてください」

美月「え!?」

レミリアとフランドールの横に突然、懐中時計を腰に付けたメイド服の人物が現れた。目は青く、銀髪を三つ編みにして佇む姿は瀟洒だ。その突然、何てものは当たり前らしく、レミリアとフランドールは動じない。

レミリア「あら、咲夜。悪かったわね」

フラン「だって知らない人がいたんだもん!」

里舞「……どうも」

咲夜「里舞さんと美月さんね。さっき聞いたわ」

魔理沙「お宅のお嬢様が練習に混ざりたいって言ってるんだ」

咲夜「それはいいじゃないですか。里舞さんも美月さんも戦闘初心者のようですし、お嬢様方ならほどよく手加減できるでしょう」

霊夢「……!」

このとき、霊夢は里舞が自分の雰囲気……オーラを消したことに気づいた。自分の強さがバレないようにするためかしら、と改めて里舞への疑いを強める。

フラン「え! 戦えるの!? やったあ!」

魔理沙「フラン、手加減はしてやるんだぞ?」

レミリア「フランなら大丈夫よ。ニ対ニでいいかしらね」

美月「えっ、実践……」

霊夢「実践練習が一番身に着くしね。いいんじゃない?」

里舞「美月、合わせられる?」

美月「い、いけますよ!」

里舞と美月は互いに顔を見合わせ、頷き合った。

レミリア「フラン、体鈍ってない? 私について来られるかしら」

フラン「当たり前よ! ついていけなかったらスカーレット家の名が廃るわ!」

レミリアは満足そうに微笑み、フランドールに手を差し伸べる。

レミリア「……それじゃあ始めましょうか? 行くわよ、フラン」



レミリアとフランドールは手を繋ぎ、同時に浮上した。里舞と美月は二人を見上げつつ武器を構える。霊夢と魔理沙、咲夜は戦いが始まろうとしているのを里舞と美月の近くで見物していた。

レミリア「こんなに月も紅いから……本気で殺すわよ」

フラン「お姉様、いくよっ!」

里舞がレミリアとフランドールに向けていた目を空に移す。それを追うように美月も空を見た。

里舞「っ、面倒臭いわね……」

美月「空が……って、月出てません!?」

赤く染まる空が、月の光が、レミリアとフランドールの姿を浮かび上がらせていた。

霊夢「ええ。あれが吸血鬼の……いや、レミリアの力よ」

魔理沙「まったく、手加減する気があるんだか……」

レミリア「【紅符 スカーレットシュート】!」

フラン「【禁弾 スターボウブレイク】!」

レミリアの周りからは紅い大弾と中弾、フランドールの周りからは蒼い大弾と中弾が、里舞と美月に向かって勢いよく放出された。

里舞「美月!」

美月「うん!」

二人は後ろに跳び、一直線に飛んでくる紅い弾を避ける。霊夢たちも流れ弾を避けつつ、安全に観戦できる場所へと移動した。

フラン「私のも忘れないでよねっ!」

フランドールが放った弾幕は、レミリアの弾幕と違って何かにぶつかると反射するタイプの弾幕。

美月「えっ!?」

里舞「っ!」

里舞が反射する弾幕にいち早く気づき、地面に足を付けた後美月の前に走って、弾幕を刀で受け止めた。

レミリア「ふん、なかなかやるようね」

美月「ご、ごめん!」

里舞「大丈夫。それより……」

その瞬間、刃と刃がぶつかったときに起こる高い音がした。美月は驚いてその方向を見る。

フラン「あら、気づいてたのね!」

里舞「そんなに熱そうなもの持ってれば気づきますよ」

フランドールが持っていたのは常に燃えたぎる炎の剣。それを確かめるように一振りし、里舞に襲いかかった。

フラン「ふふ、【禁忌 レーヴァテイン】」

里舞「フランさんは任せて。美月は……」

里舞はフランドールを一瞥した後、美月に目線でレミリアさんに攻撃しろ、と伝えた。

美月「……分かりました!」

フラン「【禁弾 過去を刻む時計】」

地面に沿って時計のように回転しながら進むレーザー。間髪入れずにフランドールの周りの魔法陣から中弾が放出された。

里舞「飛べっ!」

美月「了解っ!」



美月が上に跳んだのと同時に、里舞がフランドールをレーヴァテインごと押し返した。

フラン「ぐっ、吸血鬼相手にやるじゃない!」

里舞「……こっちはね、吸血鬼以上にドギツイものを相手したり、斬ったり、刺したりしてたのよ。私をなめてたら後悔するわよ」

フラン「へぇ、里舞って面白いこと言うのね! 十分に楽しめそうだわ!」

フランドールは地面を蹴り、里舞と剣を交える。

里舞「……っ! さっきより威力が……!」

里舞は相手の動きに注意しながら、フランドールは近距離攻撃に特化している、ということを頭に入れた。それを察してか、フランドールは里舞の刀から剣を離す。

フラン「あはっ! 【禁忌 恋の迷路】!」

フランドールを中心に大量の米弾が回転しだした。このままでは巻き込まれる、と判断した里舞はすぐさま行動に移す。

里舞「【桜符 桜花斬舞】!」

桃色のレーザーを出し、弾幕を斬った。弾幕を斬ることで桃色の米弾が大量に出てくるため、近距離でも遠距離でも使える万能なスペルカード。

フラン「ん、やるじゃん! じゃあお次は……【禁忌 カゴメカゴメ】」

緑色の中弾が里舞を巻き込みながら格子状に広がっていく。

里舞「ふふ、結構トリッキーな戦い方をする吸血鬼なのね。もっと一直線なのかと思ったわ」

里舞がニヤリと口角を上げたのと同時に、フランドールは黄色の大弾を一つ、ゆっくりと放出する。

里舞「……?」

すると、黄色の大弾が通った場所から緑色の中弾が崩れ始めた。

フラン「さぁ! 押しつぶされてしまいなさい!」

里舞「くっ、こういう感じね〜!」

先ほど上げた口角を戻す。向かって来る大弾を地面から跳んだ後一回転しながら斬り、着地。そのままの勢いでフランドールに接近した。

里舞「【斬符 桜花戰斬】!」

里舞は刀に自身の魔力を注ぎ込み薙払いをする。だがフランドールは里舞を避け、刀が空を切った。

フラン「読めるわよっ!」

フランドールは避けた先で砂煙を巻き起こしながら上空に上がった。反撃しようとした里舞は砂煙のせいでフランドールに近づけず、地面に戻ってしまう。

フラン「【禁忌 クランベリートラップ】! これで……!」

地上にいる里舞を囲む様に桃色と青色の中弾が出現し、規則的に崩れだした。

里舞「なら私も……【飛翔 両翼桜舞】」

弾幕が里舞に迫ってくる前に、フランドールと同じぐらいの高度まで飛んだ。

フラン「っ!? あなた、なぜ上に来られたっ」

里舞「問答無用! 【桜符 桜花斬舞】!」

ほぼ距離が零の状態で、レーザーと米弾を被弾させる。

フラン「ぐっ!?」

フランドールは地上に落とされ、衝撃で砂が舞った。

里舞「強すぎたかしら」

フラン「ふ……そんなことないわ」

何とか立ち上がるフランドール。砂埃を払い、声を張り上げた。

フラン「私は四百九十五年間一回も、お外に出ていなかったのよ? まだまだ遊び足りないわ。里舞はもちろん……遊んでくれるわよねぇ?」

里舞「さすが吸血鬼、結構強く当てたのに生きているなんて」

フラン「その余裕……ぶっ壊してやるっ! 【禁忌 フォーオブアカインド】!」

下にいるフランドールの姿が一瞬霞み、里舞の背後に新たな気配が生じた。

里舞「なっ!?」

里舞が振り返ると“フランドール”に蹴り飛ばされ、地面に落ちる。一発。

体が地面に着く前に“フランドール”に横腹を蹴られ、地面とほぼ平行に飛んでいく。ニ発。

少し飛んだ先に“フランドール”が待ち構え、里舞を上に蹴り上げる。三発。

里舞は再び上空に上げられ、“本体”が里舞の顔を殴る。四発。



里舞「【飛翔 両翼桜舞】」

下に“フランドール”がいないことを確認した里舞は、足が地面に着く前に浮上した。里舞の顔には痛々しいほどの傷が付いている。

里舞「よくも私の御尊顔を……! 本気を出すしかないようね」

フラン「そうは……させないっ!」

四人のフランドールは一斉に里舞に襲いかかった。そんな状況でも里舞は冷静である。

里舞「……ふぅ。【桜符 桜影】」

フランドールの攻撃をいともたやすく受け止め、跳ね返した。その衝撃で分身が消える。

フラン「あなた、本当に強いのね! 【禁弾 カタディオプトリック】!」

カラフルに光る弾幕を流星のように降らせ、里舞を追い詰めた、と思っていたのはフランドールだけだった。

里舞「四百九十五年生きているのに、相手の気配は察知できないんですね」

フラン「はっ!?」

里舞「おらぁっ!」

里舞はフランドールの背後にいた。その背中に蹴りを入れる。そしてフランドールがバランスを崩して前傾姿勢になったのを確認し、正面に立って上空に浮上する。

里舞「さぁ! 桜が満開になるのはここからだ!」

フラン「桜……っ、大きい技が来そうね」

里舞「【襖絵 桜楼水鏡】!」

レーヴァテインを構えたフランドールは、思わず目を見開いた。

里舞の後ろから襖が現れ、段々と大きくなりここら一帯の空間を飲み込んでいる。そしてフランドールをも飲み込んだ瞬間、空間の中に強い光が溢れた。強く目を瞑るフランドール。

再び目を開くと、そこには大きな桜の木が妖しげに佇み、全方向から重々しい圧力を感じる亜空間ができあがっていた。

里舞「ここは私のテアーター。存分に舞わせてあげましょう!」

フランドールは一瞬その空間の美しさに目を奪われたが、里舞を見た途端地面を蹴り、空中の里舞に飛びかかった。レーヴァテインを振りかざすが、そこに里舞はいない。

フラン「!?」

里舞「後ろですよっ!」

フラン「速っ!? うわっ!」

里舞の速さに驚くフランドールを容赦なく水の張った地面に叩きつける。そして体制を崩したフランドールに好機、と思った里舞は素早く攻撃を仕掛けた。

里舞「【瞬符 迅速一閃】」

霞の構えから体制を低くし、フランドールの背後を取る。そして、衝撃波を出した。

フラン「ぐっ!」

里舞「……フランさん、終わりです」

里舞が後ろからフランドールの首に刀の切先を当てた。余裕そうな表情とは裏腹に、疲れたような声を漏らしながら。その後から大きな桜が段々と薄くなっていき、やがて空間自体が消えていたことにフランは気づく。

フラン「はぁ……はぁ……強いのね……」

里舞「……ありがとうございました」

里舞は刀を鞘に滑らすように納めた。



フラン「楽しかったわっ! また遊んでくれる?」

キラキラした目を向けたフランドールに、優しく微笑み返す里舞。

里舞「ええ。ぜひ、また戦いたいわ……フランさん、戻りましょうか」

里舞とフランは手を繋ぎ、紅魔館に向かう。

一瞬だけ里舞が後ろを振り返り、口角を上げた。



   《五話に続く》

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