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Rare minerals Research, Kyoto

【日本産新鉱物】 今吉石 Imayoshiite

2022.03.19 15:00

今吉石 Imayoshiite IMA2013-069 Iys 

Ca3Al(CO3)[B(OH)4](OH)6·12H2O;六方晶系 (エットリンゲン石グループ) 

IMAステータス:"Approved" (IMAが設立された1958年以降に承認された有効な種) 

鉱物名:鉱物コレクターの今吉隆治氏 (1905-1984) にちなむ (地質・資源調査のローカルガイド,第二次世界大戦後の東京大学でのキュレーション活動などを通じた鉱物学への貢献,および原記載者の一人である稲葉幸郎の師であることによる). 

模式地:三重県伊勢市宇治館町 水晶谷 

模式標本:国立科学博物館 (ホロタイプ:NSM M-43749,コタイプ:NSM M-43750) 

原記載:浜根大輔 (東京大学),大西政之 (京都市在住),門馬綱一 (国立科学博物館),下林典正 (京都大学),宮脇律郎 (国立科学博物館),稲葉幸郎 (稲葉真珠) 


 本鉱物は1980年代には産出が知られ,皆川ほか (1986) に  "エットリンジャィト族鉱物" として記載されたものである.それから20年以上が経った2010年代初めから再検討を進めたところ,新鉱物であることが明らかになり,今吉石と命名した.鉱物名は,著者の一人である稲葉氏が教えを受けられた元国立科学博物館職員で著名な鉱物コレクターの今吉隆治氏にちなむ.

 この鉱物はエットリンゲン石グループであるだけあって,ほぼ50%がH2Oからできている.加熱すると100℃の手前から150℃までに一気に約40%も減量する.潤沢な分析試料が得られない希産鉱物にもかかわらず,その他にCO3 7.5%,B2O3 5.5%も含まれており,分析屋泣かせである.CO3は熱分析の重量減量から得られたが,B2O3は直接定量することが困難であった.幸いFTIRで定性的に存在が確認され,単結晶X線構造解析にも成功したため,計算によって求められた.


三重県伊勢市 水晶谷 (Suishodani, Ise, Mie Prefecture).FOV ~2.5 mm.

 今吉石の単結晶の欠片.


三重県伊勢市 水晶谷 (Suishodani, Ise, Mie Prefecture).FOV ~7 mm.


文献

  1. 松尾源一郎 (1985) 今吉隆治さん逝去.京都地学会会誌,39,133-134.
  2. 皆川鉄雄,稲葉幸郎,野戸繁利 (1986) 三重県水晶谷産大江石.岩石鉱物鉱床学会誌,81,138-142.https://doi.org/10.2465/ganko1941.81.138
  3. 浜根大輔,大西政之,門馬綱一,下林典正,宮脇律郎,皆川鉄雄,稲葉幸郎 (2014) 新鉱物 今吉石/Imayoshiite.日本鉱物科学会年会講演要旨集,R1-P19.https://doi.org/10.14824/jakoka.2014.0_60