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麦酒物理研究所

ギネスカスケードを計算してみよう

2022.09.01 08:45


ギネスカスケードとは?

 ビールの泡が上から下に移動する現象です。ギネスビール(https://www.guinness.com/ja-jp/)でよくみられることから、ギネスカスケードと呼ばれています。この現象は120秒近く続くそうです。ピルスナーでもこの現象は見られますが、ギネスの方が観察しやすいようです。ビアパブでプロに注いでもらった動画と自宅でグラスに注いだ動画をのせておきます。自宅でも同じような現象が観察できます。



オーストラリア・メルボルンにあるCSIRO(豪州連邦科学産業研究機構)が流体シミュレーションソフト(Fluent)を使って解析しています。今回は、OpenFOAMを使ってシミュレーションで計算してみました。図は通常のビール(ピルスナー)とギネスビールの比較(推定)です。ここで注意したいのは、ギネスビールは泡が小さいということ、そして粘度が少し高いということです。ピルスナーよりもギネスの方がカスケード現象が起こりやすいのは、このあたりにありそうです。

上昇する気泡が引き起こす対流がキーになるため、粒子(気泡)と流体の強練成解析となります。計算は粒子と流体の弱練成ソルバーであるuncoupledKinematicParcelFoamを強練成解析ソルバーに改良して実行しました。表示はグラス右半分の断面です。ゆっくりと粒子(気泡)が上昇し、上に到達した後、ゆっくりとガラス面(右側)を下降していくのがわかります。気泡の直径は60um、粘度2cPでの計算。粒子は全部で12万個以上です。

これを3次元で表示した結果が次の動画です。再生速度は上の動画よりも早くしています。色分けは気泡の動く方向で、赤が上昇、青が下降です。グラス中央を上昇し、表面を下降していることがわかります。外から見ると気泡が上から下に移動して様子が見えるはずです。

さらに計算モデルを進化させて、表示をギネスビールっぽくすると、実際と似た映像になります。このあたりはかなりマニアックな話なので、また別の記事で紹介します。

計算モデルの変遷1


計算モデルの変遷2