ついに最終戦!同志たちと目指す麻雀の頂点! RTDリーグ2017決勝最終日7、8回戦(最終戦)レポート
11/3(金)16:00よりAbemaTV「麻雀チャンネル」にて放送された、RTDリーグ決勝7、8回戦(最終戦)の様子をお届けします。
レポートは、鈴木聡一郎(最高位戦日本プロ麻雀協会)がお送りします。
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前回、白鳥が執念のトップラスを決め、ワントップで平賀に追いつくところまでやってきた。
残りは2戦。果たして追いかける3者は平賀を逆転することができるのだろうか。
白鳥が追い上げムード、平賀がラスを引いて心機一転もう1度攻めるぞ、という頃合いだろうか。
こういうとき、スルスルっと堅実な仕事をするのが小林コンピュータだ。
まずはこの1300・2600で先制すると、役牌の西と發をポンしてドラを先切り。
すると、これが平賀にポンされるという最悪の展開になる。
その直後の小林。
手順では打1pだが、上家平賀のタンヤオ模様を視認すると、小林は6pをツモ切った。
その後、平賀が打5pでテンパイを果たす。待ちは3p6p。
結果、小林がこの5pをチーしてテンパイを組み、平賀の7mで2000をアガるのだが、もし6pを先切りしていなければ、テンパイと同時に平賀に8000放銃となっていた。
この辺りのブレない精密な仕事ぶりには、AIの擬人化なのではないかと疑う。
小林リードのまま、3者の2着争いで平賀のオヤ番を迎えた。
平賀のオヤリーチを受けると、白鳥がカン8sから手替わり。白鳥は、一呼吸置き、意を決してリーチといった。
しかし、白鳥がすぐに1mを掴み、平賀に2900を放銃。これで平賀が2着の地盤を固めると、オーラスでは前に出るしかない白鳥が小林に捕まり、大きなラスを食ってしまう。
前回、奇跡のトップラスを決めた白鳥が後退。優勝条件は、概ね5、6万点ほどのトップで、平賀をラスにするという厳しいものだ。
一方、小林は大きく前進。自身がトップを取れば、平賀が2着でも3万点ほど離せばOK、平賀が3着以下ならほぼOKである。
佐々木は10万点以上の特大トップが優勝への絶対条件。
そんな最終戦、最初にアガったのは平賀。
佐々木のマンズホンイツ仕掛けと白鳥のリーチに対し、うまく回ってチーテンを入れると、佐々木のテンパイ打牌4mを捕らえて1000。
どうしても破天荒な押しが印象に残る平賀だが、条件戦後半でのこういったかわし手による局消化が、実は非常に鋭い。
すると、自身のオヤ番では、アガれば優勝をぐっと引き寄せるマンガン確定リーチ。
平賀は3着に落ちなければ概ね大丈夫であるため、ダマテンの5800でも価値があるところだが、自分らしくリーチで前に出続けた。
しかし、ここは白鳥が小林から8sで8000をアガり、なんとかかわし切る。
白鳥としては、できれば平賀のオヤ番で、直撃かハネ満・倍満クラスのオヤかぶりを狙いたいところだったが、平賀のリーチがあっては仕方ないと、鳴いてマンガンを脇からアガった。
これはいわば、平賀のリーチが白鳥にアガらせたようなものではないだろうか。
すると、その白鳥のオヤ番に山場が来る。
まず、小林がこのテンパイを組むと、アタリ牌を何枚も見逃す。
「残り3局でこの点差では、少なくともあと1翻は必要なので、これはイーシャンテンだと思っていた」とのこと。
確かに論理はわかるが、普段見逃しなど絶対にしない小林が、何回も打たれる5m8mを見逃し続けたのはインパクトが大きい。
続いて、白鳥もテンパイ。
8mは2枚切れなのだが、平賀の現物であるため、直撃を狙ってテンパイを取り、ダマテンを選択した。
「打点は3900だが、1回直撃を取れば、前に出てきて次の直撃が取れるかもしれない」と、どこまでいっても冷静な白鳥。
そして、ついに小林に本当のテンパイが訪れる。
ここから9p切りでフリテンリーチに踏み切った。
すると、佐々木もツモ切りリーチ。
オヤ番も落ち、優勝の可能性が消滅した佐々木にとって、1つでも上の着順を目指すのが、不本意ながら流儀である。
このリーチを受け、なんと白鳥が5sを掴んでしまう。これにはたまらず長考に入った。
ここで、白鳥が思いがけず発する。
「すみません・・・」
競技麻雀では、長考する際、「すみません」などとは通常言わない。その1打の重みを全員が理解しているからだ。
最良の選択により、最高の試合を作りたい。だから、長考に断りは不要なのである。
しかし、それでも、白鳥に「すみません」と言わせたのはなんだろうか。
「優勝するためにはこの5sを切るしかない。しかし、この超危険牌をテンパイのために打つのが本当に自分の麻雀なのだろうか。9m7mと払って、残り1巡で5s周りを引きにいくのが自分の麻雀ではないのか」
そんな葛藤と対峙している白鳥だが、5sを掴んだ瞬間、結論は見えていたのではないか。それゆえについ出た断りだったように見えた。
一方、佐々木はいつも通り無言だ。
「おれだって、できることなら優勝争いしたいんだよ!でも、この状況では、1つでも上の着順を目指すことが、対局者への、視聴者への礼儀だろう」
そんな思いが痛いほど伝わってくる。
長考の末、白鳥はやはり5sを打った。
これは、我慢を重ねて対応するという自分のスタイルを曲げることにつながるのかもしれない。それでも、白鳥は優勝にこだわったのである。
この5sに手牌を倒した佐々木は逆に、優勝を捨て、着順アップを目指すという、不本意な苦渋の決断を迫られたのであった。
小林が、白鳥が、佐々木が、普段のスタイルを崩してまで、つかみ取ろうとしたものは、我々に見せようとしたものは、一体何だったのだろうか。
思うに、それは麻雀プロであるための矜持だ。
自分の麻雀を打ち切ることがいかに難しいか、自分の麻雀を打ち切れる状況がいかに幸せなことか、それを伝えてくれたのだと、私はそう思う。
だから私は彼らに言いたい。
みなさんは、最高の麻雀プロです。ありがとうございました、と。
そして、彼らがスタイルを曲げねばならないほどの状況を作り上げたのは、平賀聡彦という一介の侍であることも忘れてはなるまい。
自らを無冠の侍と名乗るその男は、繊細な技巧が主流の現代競技麻雀において、猛者を相手にベタ足で立ちはだかり、一歩も退かずに攻撃を続けた。
当然ながら、自身が負った傷も多い。
しかし、自ら傷を負いながら相手につけた刀傷は、小林にアタリ牌を見逃させ、白鳥に不本意なアタリ牌を打たせ、優勝を諦めざるを得ない状況に佐々木を追い込んだのである。
RTDリーグ2017優勝 平賀聡彦 (最高位戦日本プロ麻雀協会)
実に、競技麻雀人生14年目の初タイトル獲得であった。
ついさきほどまで一介の侍だったその男は、勝利というものをあまり知らない。
そして、今までたくさん負けてきた平賀だからこそ、表彰式の段になってもうまく笑えない。
相手の痛みが自分のことのようにわかるからだ。
普段笑いの絶えない平賀が、勝ったときだけは笑えないのである。
平賀はいつも言う。
「今何リーグかとか関係ない。みんな、頂点を目指す同志じゃないか」
平賀は、自団体のリーグ戦では、自分の負けが確定していようと、必ず最後まで残り、勝者に祝福の声を一言届けてから会場を去る。
タイトル戦の決勝でもそのスタンスは同じであり、そこについては白鳥が最後にコメントしていた。
白鳥「自分が初タイトルを獲った麻雀マスターズの決勝で戦ったのが平賀さん。最終局が終局したとき、真っ先におめでとうと言ってくれたのが平賀さんだった。だから今度はぼくがおめでとうと言いたいです」
真剣に勝負に入り込めば入り込むほど、負けた瞬間におめでとうと言える人間は、そうそういない。
しかし、平賀は必ずそうしている。
侍だから。
礼に始まり礼に終わる。
そんな侍だから、みなに祝福される。
実は白鳥、平賀が席を立つ瞬間に「おめでとうございます」と絞り出し、頭を下げていた。
これを見ては、白鳥が初優勝したときの麻雀マスターズを想起し、胸が熱くなる。
奇しくも、平賀が最高位戦の門を叩いた年齢と、現在同年齢の白鳥。
白鳥はもっと強くなるだろう。
この若さで、直後におめでとうを絞り出せるのだから。
侍は、刀を鞘に納め、家路につく。
慣れない凱旋の帰途に、歩を進めるほどに充実感が増していった。
勝った実感に、ようやく笑みをこぼす。
今日だけは、勝利に現を抜かすのも、また勝者の役目というものだ。
2017年11月3日、愛すべき同志たちと目指す麻雀の頂に、狂気の侍・平賀聡彦が立った。
私は、平賀とは14年の付き合いになるが、ようやく言わせてもらおう。
平賀さん、本当におめでとうございます!
鈴木聡一郎(最高位戦日本プロ麻雀協会)
■執筆後記
RTDリーグ2017をご覧のみなさま、観戦記に最後までお付き合いいただきありがとうございました。昨年に引き続き、観戦記者を担当しました鈴木聡一郎です。
見ごたえがありすぎるRTDリーグですので、当然ながら文量の関係で取り上げられなかった局面のほうが多いぐらいです( ̄▽ ̄;)どの半荘をとっても、常に見ごたえのあるRTDリーグですので、ぜひAbemaTVの再放送やAbemaビデオで何度でも観ていただければと思います。その際、私の書いた観戦記がどの試合を観るかの判断材料になれば幸いです。
また、後日平賀選手へのインタビュー記事の掲載も予定していますので、ぜひそちらもよろしくお願いいたします。
では、またお会いする日まで~(^^)/
■今後の放送予定
・RTDリーグ24時間特番「RTD駅伝」が1/1~1/2に放送予定
・RTDリーグ2018が2018年1月より放送開始予定