Chant Mozarabe & Samaa Marocain
Marcel Peres , ensemble Organum (harmonia mundi)
中世音楽・グレゴリアン・チャントの権威として知られるMarcel Pérèsと彼が創設したEnsemble Organumは既に40ほどのアルバムをリリースしてきている。特にharmonia mundiからリリースしている一連のチャント集はとても評価が高い。
今回はアルジェリア生まれのマルセル・ペレスが25年の歳月をかけて研究してきたモサラベの聖歌とサマアのチャント集。
モサラベとはイベリア半島がイスラム人によって占拠されていた8世紀初頭から1492年までの間(レコンキスタの時期)のキリスト教徒のことでサマアとはイスラム神秘主義スーフィー儀礼の中で歌われる宗教声楽。スーフィーズムでは舞踏とか音楽も精神修養とみなされている。このアルバムではモロッコに残るその音楽を取り上げてある。
長年、チャントを研究してきたマルセル・ペレスは宗教の違いはあれどもこの双方に多くの類似性を認め、このアルバムではモサラベ聖歌とサマアの歌を交互に配置することにより、いかにこの両者の音楽表現・背景の文化が相互に混在しているかを示している。テーマは『愛は全てを救う』。
低めの男性の声で歌われる渋い単声の両チャントはとても瞑想的な響きを持っており、かつて祈ることと歌うことは同一だったということを思い起こさせる。
2022-199