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空想都市一番街

とある夜、ふとした記憶

2022.02.16 13:39

すばるは勉強の合間に、シュリとリビングルームでお茶を飲んでいた。


「ねぇ、私たまにさ、なーんか、1人足りないなぁって思うんだ。誰かいないって」


「え、それ俺もあるよ。なんだろうね。気のせいだと思うけど。」


「そうだよねぇ…へんなの。なんか、ナ…」


「ナ?」


「ううん、なんでもないや。」


特に意識したわけでもなく自然にぽつりと出てきた言葉。なぜ出てきたのか分からなかった。


「怖い話でさ、実はもう1人いたのにいつの間にか何かに消されてて、他の人の記憶からも消されてて、存在が無いことになってるって話あるよね。ああいう話不気味だよなぁ。ここでも起きてたりして」


シュリが冗談めいて言う。


「うん…案外起きてるかもよ。だってよく一個余るじゃない?


おやつの数、ぴったり買ってるはず

なのに一個多かったり。うちに買ってあるお友達用のグラスも一個多いし。

あとゆでたまごいつも一個多く茹でちゃったりさ。」


「それはすばるがおっちょこちょいなだけなんじゃないの」


シュリは笑ったけど、思い当たることはあった。


「じゃあもし俺たちの他に1人、無かったことになってる人がいたとして。すばるならどうする?」


「うーん…思い出せなくてごめんね、忘れてても愛してるよって心で思う」


「忘れてても愛してるの?」


「当たり前じゃん!きっと友達だったんだから。ナ…」


すばるはそれ以上声が出なくなって黙った。


頭の中が霧かかって声が出なくなる。


何かの魔法にかかったみたいだ。


「そうだよな…じゃあ、俺も心で思う」


そしてシュリは祈るように手を組んで目を閉じた。


何故か急に涙が出そうな気持ちになった。


とても懐かしい感じがした。


何も心当たりは無いのに。


(もしも本当に忘れてたら…きっといつか、お前を思い出すから)


愛してる、と祈った。