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国際開発協会に関する法律の改正案について(参議院浜田聡議員のお手伝い)

2022.02.17 06:00

 王様が見ている・・・ルッキング。王様が考えている・・・シンキング。王様が話している・・・トーキング。裸の王様はストリートキングだ。一貫性のない王様に・・・ショッキング。近くで話を聞いても気分はトーク。誰も何も言わず。マイケル弱者。おどおど踊らされるだけ。

 さて、今国会で議題に上がる関税法改正法案に関して国際開発協会(IDA)関連法の改正法案について検討してみます。

 関税法案に関しては昨年にも同時期に法案を検討しました。今年も惰性的改正法案ではありますが、ほんの一部だけ改善的な内容も含まれています。惰性的と言えるのは暫定税率及び特別関税が適用品目に関して適用期間の1年間の延長です。ただし、たまねぎに関しては現在の暫定税率を廃止して基本税率を10%と規定し、1キロ73.7円を超える場合は無税とすることをスライド関税制となっています。これはたまねぎの輸入量が多いことから価格が高騰した場合にも輸入量を維持できるように配慮するための施策です。

 関税法の改正で目を引くのはブランド品のコピー商品の個人輸入に関しての取り扱いです。これまでは事業性の無い者が輸入する意匠権や商標権を侵した模倣品に関しては個人使用を目的としていると推測されることから税関での取締り対象となっていませんでした。このことから模倣品を輸入しようとする者からの個人使用目的での輸入である旨の主張が増加していました。知的財産を侵害する疑義のある荷物に対しての認定手続きを税関が行った34128件に対して3696件が個人使用目的だと主張して争う姿勢をとっています。このような状況下で令和3年5月に特許法(改正商標法および意匠法)が改正されて海外の事業者が模倣品を郵送で日本国内に持ち込む行為についても権利侵害行為となることが規定されました。このことから関税法についてもそれに対応すべく個人宛の荷物であっても権利侵害になることが明確化された行為に係る物品として認定手続きの対象とすることを規定する法案となります。法整備が遅すぎたように思いますが、今回の改正案によってブランド商品のコピー商品の水際での取締りにおいて、事業者と個人の区別がなくなり、純粋に商品の違法性だけで取り締れる規定を整備できることになります。

 次に国際開発協会(IDA)に関する法律の改正案に関して検討してみます。国際開発協会とは世界銀行の関連団体です。主に低所得国向けに超長期で低利融資、もしくはグラント(無利子)を提供している機関です。同様の機関に国際復興開発銀行(IBRD)というものがありますが、そちらは中所得国を対象して長期融資を提供しています。戦後の日本政府も新幹線網や高速道路網の整備の為にIBRDの融資を受けたことがあります。いわずもがな、それらの社会インフラ整備が進むことによって日本経済は高度経済成長を遂げました。目覚ましい経済発展を遂げた日本は巨額の借入国から世界有数の資金供与国となっています。IBRDに対してIDAは第二世銀と言われ、貧困国をはじめとした発展途上国の社会資本への長期融資を行っています。ちなみに発展途上国の民間企業への投資促進を行っているのが同じく世界銀行グループの国際金融公社(IFC)です。

 今回のIDAに関する改正案はIDAの増資に対して政府が約4206億円の追加出資を行うことを規定する法案です。IDAは1960年に設立されて以来、3年ごとに増資を繰り返しており、今回は第20次の増資です。今回は前回の増資から2年しか経過していませんが、新型コロナウイルス感染症の世界的なパンデミックにより、ワクチンや医療提供体制を含む対応の支援によりIDAの資金不足が見込まれた為に1年前倒して増資を行うことになったようです。

 また、今回の増資の計画とその枠組みの組成を日本が担いました。昨年12月に日本が主催した最終会合でコロナ対策の支援規模を930億ドルとし、資金提供国(ドナー国)から235億ドルを調達することで合意しました。日本政府の負担額はこれまでの日本政府の出資比率を維持することを前提としており、3767億円を提供するとともに、最貧国の重債務に対する救援費用として438億円を追加で提供し、合計4206億円を予定しています。

 IDAの融資対象国は74ヶ国に上ります。これまでに中国や韓国やタイやトルコなど37ヶ国がIDAの投資対象から卒業しています。IDAの対象国の債務負担リスク、一人当たりの国民総所得、IBRDからの信用力などを参考に決定されています。債務負担リスクが高い国は100%を贈与の形で資金援助を受けています。債務負担リスクが中程度の国は融資額の50%を贈与の形で受領しています。通常の融資条件は40年返済、当初10年は据え置き、金利0.45%程度である場合が多いです。これに加えて融資残高の0.75%の手数料が必要となります。

 IDAの中で第20次の増資における日本の出資割合についてです。政府案ではこれまでの出資比率を維持する方針です。では、第19次の増資時の主要国の負担比率をみてみます。

 筆頭は英国で12%です。続いて日本が10%です。そして、アメリカが9.31%、ドイツが5.62%、フランスが5.06%、中国が3.72%、カナダが3.45%、スウェーデンが3.02%、オランダが2.93%などとなっています。名目GDPを参考にした比率からするとアメリカが少し少ないような気がします。逆にイギリスはGDP比で言うと圧倒的に大きな負担をしています。日本は2番目の負担比率ですから妥当と言えます。問題は中国です。日本の約3倍のGDPを誇る中国がなんと日本の負担の1/2.5です。際立って少ない負担です。本来ならばアメリカ、中国、日本が主導して出資するのが妥当だと思いますが、そのバランスは保たれていません。ではなぜ中国の出資は少ないのでしょうか。その答えは簡単です。中国はIDAとは別に独自の低所得国向けの融資を行っているからです。IMF、世界銀行、国連などに活動理念や役割に相応することなく覇権主義的な外交路線を執るようになってきています。

 2020年の全世界的に深刻化するコロナ禍の中で、IMFと世界銀行は融資している73ヶ国を対象に返済支払猶予をG20に対して要請しています。低所得国が十分なコロナ対策をとる為の人道上の理由と共に世界経済の回復を促進するための施策です。この73ヶ国はIDAの融資先国とほぼ同一です。それに対してG20の一員である中国も他国と足並みを揃えて支払猶予を受け入れています。中国は拒否することもできましたが、中国によって債務危機に陥ったと認識されることを避けたのでしょう。半面、中国無しでは債務危機に対応できないということも明らかになりました。

下記資料:世界銀行データより、日本総合研究所作成

 中国の低所得国への融資残高は1030億ドルに達しています。一方、世界銀行の低所得国への融資残高は1157億ドルとなっています。G7の融資残高が571億ドル、日本の融資残高が239億ドルですので、中国が1国での融資残高がずば抜けて巨額だということがわかります。中国の融資規模はG7と比べて約2倍、日本と比べて4.5倍に上ります。

 中国はなぜ世界銀行グループなどと足並みを揃えて発展途上国への融資を行わないのでしょうか。なぜ、中国は独自路線をとるのでしょうか。それは、単独での融資は中国に都合の良い発展途上国を恣意的に選別して融資できるからです。

 中国からの融資が大きい国はパキスタンとアンゴラです。パキスタンは215億ドル、アンゴラは157億ドルです。中国から100億ドルを超える融資を受けているのはこの2カ国だけです。パキスタンとアンゴラが重視されるのは、両国が一帯一路および資源確保にお いて欠かせない拠点になっているからです。パキスタンはインド洋から陸路による中国への輸送を可能とする経済回廊の要です。アンゴラはナイジェリアに次ぐ産油国で、中国にとってはサウジアラビア、ロシア、イラクに次ぐ原油輸入先となっています。

 中国の融資スタンスは経済的な独自の権益の確保にあるので世界銀行に比べて与信が緩い傾向があります。つまり、中国の融資先には返済負担率が非常に高い国が多くみられます。ジプチの負担率は37%、今後は29%、ラオスは27%、キルギスは21%、モルディブは20%となっています。世界銀行の融資先ではカーボンベルデが20%を超えていますが、その他には負担率が20%を超えている国はほとんど見受けられません。

 中国依存国は、一帯一路(キルギス、ジブチ)、南シナ海における領有権確保(ラオス、カンボジア)、資源確保(コンゴ共和国)、インド洋、太平洋への進出(モルディブ、トンガ)といった外交戦略において重視されている国々です。これら中国依存国のリスクが「高い」ないし「窮迫」と評価されるのは債務の持続可能性より外交上の利益を優先する中国と新たな債権国として存在感を高める中国を積極的に利用しようとする低所得国の思惑が一致したからにほかなりません。

 中国はG7各国を含め世界的に疑心暗鬼を招いてきました。前述のように返済負担率を無視した低所得国への融資を自国の利害を図って進めて来たことによります。中国は融資によって世界各国に影響力を強めてアメリカに対する勢力圏の構築を目論んでいるとされます。それはそうだと思います。ただし、中国が強権的に融資先国を従えるような振る舞いはありません。中国に依存する国も利害関係が一致することから依存しているのです。それぞれの国が主体的に国家運営を行っているのは間違いありません。

 中国は自らが開発途上国であり、植民地支配といった被援助国との間で負の歴史がない中国はそもそも戦後賠償を出発点とするわが国、あるいは富めるものが貧しいものに施しを与えるというキリスト教を起源する欧米諸国が実施しているような援助をする必要がないとしています。

 では、中国は自国の飛躍的経済発展による資金力を背景に一帯一路をおし進めてきたわけですが、今後もその路線で行くのかというとそう容易いことではないようです。他国への融資によって急激な資本力の低下を招いていることと中国国内でのインフラ投資が一巡し、且つ米国をはじめとした先進国との貿易摩擦が拡大していることから国内の景気は失速しがちな状況となっています。

 中国は決して発展途上国の盟主ではないと言えるのかもしれません。中国は自らを「開 発途上国」とする一方で、欧米諸国を源流とする価値観や制度を代替しうる「大国」としてきたこと、つまり、国際社会における立ち位置を都合よく使い分けてきたことにあります。中国は、「中国モデル」を欧米諸国に追従しない経済発展の道としながらも、それが具 体的にどのようなものであるのかについては必ずしも明らかにして来ませんでした。中国は確かに長期にわたり安定的な成長を続けてきましたが、政治、経済、社会などの初期条件が異なる国にその経験をどのように移植すれば成功するかということは何も示していません。そればかりか、中国は深刻化するアメリカとの対立、潜在成長率の低下、そして、今回の債務危機においても開発途上国を満足させる対応が出来ていません。中国の求心力が低下するのは当然とことと言えます。

 米国のバイデン大統領は同盟国との同盟強化を急いでいます。中国は経済回復のペースが速く、G20のなかで唯一2020年のプラス成長が期待出来る国です。中国は発展途上国への積極的な融資を再開する体制が整いつつあります。ただし、新型コロナウイルスの蔓延による途上国の経済状況の悪化がそれを阻んでいます。

 米国をはじめてとして日本も世界銀行及びIDAにも積極的に関与を強め、中国の権威的で高圧的な外交姿勢に対抗していくべきだと思います。

以上、最後までご拝読を賜りありがとうございました。

参考:IDA第20次増資

https://ida-ja.worldbank.org/ja/replenishments/ida20-replenishment

税関、改正について

https://www.customs.go.jp/zeikan/seido/classification/hs2022.html