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yoyo

やさしい文学レッスン

2022.02.17 13:12

小林真大『やさしい文学レッスン』読み終える。


“作品に含まれている作者の意図や訓話を読みとるだけの自己形成の場として国語が利用されている”昨今の国語教育に危機感を抱いた著者が、そこに一石を投じるためにまとめた一冊。引用されている批評もいわゆる「現代文」分野のものが多い。


古今東西の様々な名文と、それに対する学者たちの批評をたっぷり引用し、読みを深める20の手法を解説している。昔はこういう本を読むと、引用ばかりなら原典にあたった方がいいのではと思っていたけれども、それはとんだ思い上がりで、さまざまな事物が並列に提示されることで広がる世界があると読みながら思う(それにこうやって網羅的にまとめることの大変さ、要する体系的な知識の膨大さも今は分かっているつもり)。


特にこの本は登場する作者や批評家すべてに脚注がついていて、かつ同じページにその概要が記してあり、読者が次の作品や小説家や学者、学問へ手を伸ばすための工夫が体裁レベルでなされているのが良いなあと思った。過去に別媒体で読んだ「読み」と違う解釈もあったりしてその違いを知るのも面白かった。


文フリ前から書けない日々が続いているのだけれども、読みながら少しずつ書こうという気になり、少しずつ書いている。


文章や論考そのものにオリジナリティがなくとも一本の意図があり、それに沿って作られているなら、それで十分なのではと思った。そのことに救われる。