細胞周期調節系の解明
胚の形態形成は局所的な細胞分裂の促進と抑制によって調節されると理解されることから、細胞周期調節系についても研究を進めています。
ニンジンでの制御系
ニンジンから細胞周期マーカー遺伝子(G1期マーカー:cyclin D3,S期マーカー:PCNA, G2期マーカー: cyclin B、下左図)を単離同定し、細胞周期同調系の構築を進めています。現在、ハイドロキシウレア処理により10〜15%(最高30%)の同調率を得ています。この系を使って、ニンジンNC細胞(下右図)ではGA合成阻害剤ウニコナゾールによっておこる細胞増殖抑制(約50%)について解析を進めています(未発表データ)。
ニンジンからは、また、細胞周期を直接的に制御し得る細胞周期停止因子(ICK)に注目し、コードする遺伝子2種類を単離しました。うち一つはmRNAレベルでスプライング・バリアントが存在することが判りましたを(下図、未発表データ)。各器官におけるバリアント-mRNAの存在量は成熟型-mRNAの4〜6%と一定であることから、バリアント-mRNAはスプライシング装置の誤作動によって生じたものであると考えられます。
最近、ニンジンICKがファゴソーム因子と結合していることが観察され、分解経路についても調べ始めています。
これらの研究は科学研究補助金(基盤研究(C)、課題番号14560056)のサポートを受けて行われました。
シロイヌナズナでの制御系
シロイヌナズナのICKは2つのファミリーから形成されており、主要なファミリーはKip-related porteins (KRPs)ファミリーと呼ばれています。下図はWangらの論文から引用したものですがKRP1過剰発現体での葉の形質を示しています。植物体自身は細胞周期を止められ矮性を示しますが、葉の変形は単純な細胞周期の停止では説明がつきません。こうした謎の解明を目指し、KRPと相互作用する新規タンパク質(をコードする遺伝子)を酵母two hybrid法でスクリーニングしました。約16,000コロニーから12個の遺伝子を得ました。これらは、オルガネラ関連、ホルモン関連、代謝関連、機能未知タンパク質等、多岐にわたり一貫した説明はつかない状態です。現在、これら候補について解析を進めているところです。
この研究は科学研究補助金(基盤研究(C)、課題番号2358127)のサポートを受けて行われました。