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ロマン派の時代6-シューベルト「冬の旅」

2022.02.19 08:38

1827年、シューベルト歌曲の代表作「冬の旅」が出版された。「美しき水車小屋の娘」「冬の旅」の作詞者として知られるヴィルヘルム・ミュラーは、実は政治批判的な詩も書いて、検閲のチェックを受けていた。この「冬の旅」は失恋した若者の絶望的な旅の詩だが、ミュラーの時世への絶望感が反映されていると、F・ディスカウは分析している。

シューベルトも、健康を害しており、その影響を指摘する専門家もいる。そして同年、尊敬するベートーヴェンが亡くなったことが、シューベルトの死への想いを強くした。葬儀参列の後の打ち上げで彼は「この中で一番早く死ぬ奴に乾杯」という音頭をとった。

シューベルトの音楽の根底には、現実からロマン主義的な夢、童話の世界への脱出がある。確かに冬の旅の主人公は現実から脱出しようとしている。がその夢もわずかの間で中断されてまた厳しい冬の現実に直面し、またそこからも立ち去ろうとするとカラスが鳴く。

冬の旅」の演奏を聴いた友人達はあまりの暗さに絶句したという。そしてその翌年28年11月19日、31歳という若さでシューベルトは貧困のうちに亡くなった。彼の短い生涯で作った歌曲は600を越える。