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金山知明税理士事務所・国際税務コンサルティングオフィス

国際課税勉強会18(外国法人税の意義)

2022.02.19 09:38

冷たい雨雪の降る日、久々にバスで事務所に行き(いつもはバイク)、国際課税「一角塾」にオンライン参加しました。

今日は僕の発表日で、かねて準備をしてきた「ガーンジー島損保子会社事件」について研究報告をしました。これは、外国(軽課税国)にある子会社への所得移転を抑止する目的で規定されているタックスヘイブン対策税制(外国子会社合算税制)の適用が争点となった事件です。

ガーンジー島は、イギリス海峡(イギリスとフランスの間にある海)に浮かぶ小島ですが、もう1000年近く、イギリス王室の領地であり、高度の自治権をもっています。

もちろん独自の税制ももっているのですが、この税制がとても変わっていて、ガーンジーで設立した法人は、「国際課税資格」を得れば、0%超30%までの間で任意の税率を決めて申請することができました。外国子会社に対して究極の利便性を提供していたわけです。

当時の日本のタックスヘイブン対策税制は、外国子会社の外国法人税の負担率が25%超であれば、外国子会社の所得を日本法人に合算しなくてよいことになっていました。いわゆるトリガー税率制度です。

そこで日本のある損保会社(原告)は、ガーンジー島に再保険を引き受けるのための子会社B社をつくり、そこに再保険料を払って損金算入し、さらにB社はガーンジーで26%の税率を選択(申請)して納税しました。25%超の外国法人税を納めているので、タックスヘイブン対策税制の適用はないという解釈でした。

ところが、国税は、このように税率を選択できるような税は、そもそも租税ではないので、B社はガーンジーで外国法人税を負担しておらず、タックスヘイブン対策税制の対象となる外国子会社であるとして原告にB社所得を合算課税しました。(しかも外国税額控除なし)

原告はそれを不服として提訴。争点はB社がガーンジーで26%で払っている金銭は租税に該当するか、外国法人税に該当するかどうかでした。

1審、2審は、国の主張を認め、このような金銭は、強行性とか非対価性をもつ金銭給付という税の一般的概念から大きく外れるもので、タックスヘイブン対策税制の回避というサービスの提供を受けるための対価であり、税ではない(外国法人税でない)としました。

しかし最高裁は、1審、2審の判断を覆し、原告の主張を認め、ガーンジーの税制で定められて所得に対して課されている税を税でないというのは困難だとして、タックスヘイブン対策税制による課税処分を取り消しました。(原告逆転勝訴)。

税率を選ばせて本国での課税回避をさせるような税制は、たしかに有害かも知れないですが、法律に、「税率を選択できる税は、税でない」と書いていない限り、ガーンジーの特殊な税も、やはり税とみるほかなく、妥当な判決だと思います。

最高裁は、法の支配を尊重して、法に明文規定のない課税は許されないというルールを改めて示しました。ただ、その後の税制改正で、税率を選択させるような税は、外国法人税に当たらないという規定が入り、ガーンジーのような制度の利用によるタックスヘイブン対策税制逃れはもうできなくなっています。

先週は別の研究会で発表していて、二週連続はさすがに疲れました・・。