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アルコールとうま味 その①

2022.02.20 12:13

うま味は日本の池田菊苗先生(東京帝国大学(現東京大学))が1907年に命名し、1908年にだし昆布の中からグルタミン酸を発見したことが始まりです。1990年代には世界でUMAMIとして認知されることになり、2000年に舌の味蕾にある感覚細胞にグルタミン酸受容体が発見されたことによりうま味を含めた五味として広く世界に認知されるようになりました。

今回はアルコールとうま味について、デンマーク コペンハーゲン大学からの2021年の研究報告です。

アルコールのうま味

アルコール飲料には喉の渇きを癒すだけでなく、食事と合わせる楽しみがあります。

味わいには五味(甘味、塩味、苦味、酸味、うま味)が知られています。特にうま味は重要な役割があることがわかっています。うま味は、グルタミン酸、アスパラギン酸によって生じますが、これらを含む卵-ベーコン、チーズ-ハム、野菜-肉などの食品では分子レベルで良い相性を示すことが分かっています。これはうま味に甘味、塩味の知覚を高め、苦味を減らす作用があることによります。うま味の成分が野菜の香りに対して心地よい風味をもたらし、チーズの香りの知覚を増加させることが報告されています。また甘味にも香りへの影響が報告されており、甘味(ショ糖)のレベルが下がるとミントの香りの印象が低下しました。

グルタミン酸はタンパク質、ヌクレオチドは核酸など食品や飲料の種類に由来しているため量は様々です。タンパク質と核酸はそれ自体では味がないため、他の化合物と結合することによって味わいをもたらすようになります。

ワインなどのアルコール製造では、酵母と接触する工程があり、この工程によって液中に生成されるFAA(Free amino acid: 遊離アミノ酸)が大きくなります。つまりFAA量は微生物、特に酵母との関係性が強いことを意味します。

酵母と長く接触して生成され、滓と共に熟成させるシャンパーニュのFAAは、酵母の自己消化によるタンパク質の加水分解によってもたらされます。シャンパーニュやその他のスパークリングワインは、méthodeClassiqueはméthodeTraditionelle(以前のméthode Champenoise)と呼ばれる瓶内二次発酵によって滓からのグルタミン酸とアスパラギン酸などによってFAAが生成されます。

また、麹菌と酵母の両方を用いた並行複発酵で製造された日本酒は、高いレベルのFAAが生成されます。

またろ過されていないワインであったり、タンパク質や酵母などの沈殿物を含む無濾過ビールも豊富なうま味があります。

研究の目的

今回の研究では日本酒、ワイン、シャンパーニュ、ビールのうま味のポテンシャルを判断することを目的にFAA含有量のレベルを測定しました。

日本酒、ワイン(白、ロゼ、スパークリング)、シャンパーニュ、ビールのサンプルを分析し、うま味(グルタミン酸(Glu)、アスパラギン酸(Asp))と甘味(グリシン(Gly)、アラニン(Ala)、トレオニン(Thr)、プロリン(Pro)、アスパラギン酸(Asp)、セリン(Ser))と関係するアミノ酸を調査しました。

次回は研究結果について紹介します。

ゾエミ・ド・スーザ キュヴェ UMAMI

ド・スーザファミリーのトップキュヴェで三国ワインさんインポートです。シャンパーニュのエペルネのワインショップでこのボトルを見たときは飛び上がりました!漢字で旨味!フランスでも流行っているのだなと思いました。高いので飲んだことはないです(笑)


余談:旨味による霊長類の苦味克服

明治大学、北海道大学、京都大学、東京大学、日本モンキーセンター等からなる共同研究グループによって国際学術誌「Current Biology」に報告された2021年の研究で、ヒトのように体が大型化した霊長類は、葉に含まれるグルタミン酸に強い旨味を感じるよう進化したことが示されました。グルタミン酸に旨味という好ましい味を感じるようになったことで、タンパク質源でありながら苦みを持つ葉をおいしく食べられるようになったそうです。苦味を感じさせる葉野菜やゴーヤ、緑茶やコーヒーなどは栄養価が高く、更には抗酸化作用がある物質もあり、苦味の克服は人類の大きな進化だったかもしれませんね。

苦味を物ともせず食べるサルたち!人間もパクチーを好んで食べますね(笑)
画像:葉または昆虫を食べる霊長類の様子
体の大きな霊長類は葉を重要なタンパク質供給源として利用する((1)チンパンジー、(2)ニホンザル、(3)マントホエザル、(4)ワオキツネザル)。一方、小型の霊長類は昆虫を主なタンパク質供給源として利用する((5)バッタを食べるコモンマーモセット、(6)セミを食べるコモンリスザル)。

Reference: Umami potential of fermented beverages: Sake, wine, champagne, and beer
Authors : Vinther Schmidt C; Department of Food Science, Taste for Life & Design and Consumer Behaviour, University of Copenhagen, Rolighedsvej 26, DK-1958 Frederiksberg, Denmark. 
January 2021Food Chemistry 360(1):128971 DOI:10.1016/j.foodchem.2020.128971
Reference: 霊長類におけるグルタミン酸の旨味の起源 ― 体の大きな霊長類は旨味感覚で葉の苦さを克服 ― 東京大学大学院 新領域創成科学研究科 
https://www.k.u-tokyo.ac.jp/information/category/press/4086.html