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とある冒険者の手記

V.ヴァルの地雷

2022.01.26 14:53

オールドシャーレアン行きの船の中。

船員として紛れ込んでいるヴァルの姿があった。

化粧で肌の色を変え、服はハイネックタイプの長袖と長ズボン。

手袋を着用し、髪型、髪色も変えていた。

船員の仕事をこなしつつ、ガウラの様子を遠目から見守る。

彼女の周囲で変な動きがあれば、すぐに動けるように、警戒を怠らない。

まぁ、暁の血盟のメンバーが誰かしら傍に居るので、危険は無いだろうが、万が一という事がある。

ただでさえ、彼女は何かのトラブルに巻き込まれやすいのだから…



何事もなくオールドシャーレアンに着くと、ヴァルは誰にも気づかれないように船を降りた。

船を降りる際に何かの検査があるのか、乗客はなかなか降りてこない。

その隙にヴァルは宿を取り、化粧を落とし、髪色を戻し着替えをする。

そして、いかにもここの住人と言う姿に変え、宿の窓からこっそりと抜け出し、堂々と街に溶け込む。

髪型と服装を変えるだけで溶け込めるのは、ここに来るのが初めてだからである。

顔見知りと言ったら、先にここにいるヘリオと、今さっき同じ船に乗っていたガウラとアリスくらいなものだ。

そして、ヴァルは先にオールドシャーレアンの偵察に来て、情報を伝達していた協力者との待ち合わせ場所に向かった。

偵察をしていたのはザナ。

ヴァルを見つけると、嬉しそうに手を振った。


「ご苦労だった」

「お前の為なら何だってするさ」

「はぁ………本当に相変わらずだな……」


大きく溜め息を吐き、辺りに人がいないことを確認して、ヴァルは小声で話し始めた。


「守備は?」

「先日、バルデシオン分館の方にサベネア島から依頼が来てる。恐らく、各地に現れた塔絡みだろう」

「…なら、ガウラはそっちの依頼を優先しそうだな…」

「ヴァルはサベネア島に行ったことあったよな?」

「あぁ。あの時の依頼内容は、錬金術のレシピを盗んで来るって依頼だった」


ザナの言葉にそう答えると、ヴァルは考える仕草をする。

サベネア島に行く為の支度の算段を頭の中で構築していく。

その時、聞き覚えのある声がした。

ヴァルは咄嗟に身を隠す。

ザナも同じように身を隠した。

声のするほうを見ると、ガウラとヘリオが会話をしながら歩いているのが見えた。


「なぁ、ヴァル。あれがヘラか?」

「あぁ」

「ふーん。確かに美人だけどさぁ。ヴァルの言う可愛いとは程遠いと思うんだが…」

「………なんだと?」


ザナの言葉に、ヴァルの声に怒気が混じる。


「可愛いというより、どちらかと言うとカッコイイじゃないか?どこが可愛ィィイイイイイイッ!!!」


言葉の途中で悲鳴をあげるザナ。

原因は、ヴァルがブーツのヒールで、思いっきりザナの足を踏みつけたからだった。


「あたいの前でヘラの批判を言うとは、いい度胸だなぁ?ザナ」

「痛い痛いっ!悪かった!俺が悪かった!」

「ふんっ!」


ザナの足を解放すると、ザナは踏まれた足を上げてピョンピョン跳ねて痛がる。


「ヘラの可愛さは、あたいが分かっていればいい。お前なんかに理解されてたまるかっ」


完全に機嫌を悪くしたヴァルは、ザナの元から去った。

それを見て、ザナは“やらかした“と後悔したのであった。