第5章 その2:「47ミリ→19ミリ→8ミリ」
2017.11.17 17:00
やっぱり、尾田平先生はすごい。
パクリタキセルの投与が始まって数回後、副作用の手足のしびれがとてもひどかったので、一生治らなかったらどうしよう…と不安になっていた。
ところが、全十二回の折り返し地点に達した時、つまり六回分を終えた時のエコー診断の結果を聞いた私は、そんなことも一瞬忘れるくらい、驚いた。
しこりの大きさは、なんと、
「8ミリ」
にまで、小さくなっていたのだ!
明確に数字で示されたのがうれしかった。また、自分で触っても、しこりが小さくなっているのが明らかにわかった。じわじわと、反逆するように力が湧いてくるのを感じた。
かつては47ミリだったものが、19ミリになり、今、8ミリになったなんて…。
完全奏功するぞ!
と、決意した。
この頃、一冊の本に支えられていた。小堀昌子さんの、『乳がんを抱きしめて』。
39歳で乳がんと診断されてからそれを乗り越えるまで、とても分かりやすく、詳細に綴った治療記だ。「いつも心に太陽を」というご本人のモットーから想像できるとおり、つらい現実を前向きにとらえ、聡明に対処されていくさまが、心の動きとともによく伝わってくる。仕事もバリバリ続けられていて、同じトリプルネガティブでもこんな人もいるのかと、読みながら何度も心を打たれた。
少し長いけど、勇気づけられたところを引用させていただきたいと思う。
「がんになったのは誰のせいでもない。強いて言えば、体の持ち主である私自身のせいなのだろう。そうでないとしても、これは私の宿命として仕方のないこと。だから、誰のせいにするつもりもないし、決して自分自身をも責めるつもりもない。いや、むしろ、いったんは「これまでの39年間よくがんばったね」と自分自身を誉めてあげたい。そして、きちんと状況を理解して、この事態を必ず好転させてみせる。がんになったからといって、私の未来が不幸の一途だとは思わない。これからが、本当に私自身が試されるときなのだと思う。」
――『乳がんを抱きしめて』/小堀昌子(PC出版 2009年)
実は、これを読んで、私も声に出してみた。
「杏莉、35年間、よくがんばったね」
そっと自分に言ってあげたら、涙があふれた。ときには、こんないたわりかたも、いいのだと思う。
乳がんだと初めて診断されて約半年。もうすぐ、誕生日がやってこようとしていた。