#146.質問に答えるシミュレーション
「教えると自分が勉強になる」と小学生の時に先生から聞いたのを今でも覚えています。
まさに正論で、今自分が教える立場になって実感するのは、レッスンをするたびにブーメランのように返ってくる自分の言葉に刺激を受けて、もっと成長しなければ、説得力のある人間にならなければと痛感する毎日です。
人間は意外と曖昧に理解していることが多くて、その状態だと自分のスキルとして発動することが難しく、音楽においても演奏テクニック、表現力などに大きく影響します。
例えばタンギング。みなさんはタンギングをどのように行っていますか?
「舌をタイミングに合わせて使って…。」
いえ、もっと具体的に解説してください。舌のどこがどのように動いていますか?そもそもタンギングとはどういう行為で、それがなぜ実現するのか、という原理を説明できますか?
そう言われるとアバウトに認識しているな、と思う方が多いのではないでしょうか。ただ、そうした状態でもある程度クオリティの高いタンギングができている方が多いのは事実。なので理屈っぽい認識が絶対に必要なわけではありませんが、例えば指揮者から「もっとハッキリタンギングをして」とか、逆に「もっと柔らかいタンギングがほしい」と言われた時に「ここをこのように使えば指揮者の要求に応えられる」と瞬時に切り替えるスキルとか、今のレベルよりもひとつ上の要求や、今の自分には知識がないこと、初めて知ったことを即座に実現する応用スキルは、実はこのような原理を理解していることでできる場合も多いのです。
いわゆる「器用さ」は基礎力を持っていて、なおかつ原理を理解し、それらを組み替えて応用できる人を指していると私は考えています。
質問に答えるシミュレーション
ですので、やはり原理は理解しておくほうが良いと思うので、そのためのオススメの方法を紹介します。それは、
『後輩や子どもに質問されている状況を想像する』ことです。
このブログを読んでくださっている方の年齢や演奏している環境はいろいろだと思うので、みなさん自身で想像してほしいのですが、自分より年下の人や、小学生くらいの管楽器を始めたばかりの子どもなどに、とてもシンプルな質問をされたと想像してください。例えば、
「タンギングってなんですか?」
と聞かれてどのように応えますか?舌を使って音を区切るんだよ、と応えて果たしてその子は理解、納得するでしょうか。多分しないと思います。なので続けて「音を区切るってなに?」と聞かれてどのように応えますか?「区切る」を説明できたら「それってどうやったらできるの?」と聞かれたとしましょう。どうしますか?ここまでくると「舌を使って」というアバウトな表現はむしろ混乱を招くだけになってしまいます。
どこまで質問されても的確に、具体的に答えられること。一方で「それはここでは必要ない」と線引きをすること。それらができるためには、自分自身がタンギングについて深く理解していることが必要であり、そういう人は自身の演奏でも的確な方法を用いることができている、と言えるわけです。
いかがでしょうか。誰かに質問をされて的確に答える。このシミュレーションをすることで、自分が理解できていること、曖昧にしか理解していなかったことがはっきり見えてきます。
「ロングトーンってなんでやらなきゃダメなの?」
「リップスラーって何?なんのためにするの?」
「どうしてトランペットから音が出るの?」
「唇の振動ってなぜ起きるの?」
「ウォームアップって何するもの?」
「基礎練習って何するもの?」
「楽譜に書いてあるこの文字(記号)、なんて読むの?どういう意味なの?どうやって演奏するの?」
「なんで練習しなきゃダメなの?」
いろいろと考えて、質問に答えてみてください。とっても勉強になるのでおすすめです。
ということで、今回はここまでです!
荻原明(おぎわらあきら)
4月30日(土)17:00トランペットアンサンブル講習会
第4回「聴く?合わせる?」開催
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