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J News International (イギリス拠点)

どちらがネオナチ?プーチン?それともゼレンスキー?

2022.02.28 21:36

著:大澤史來

今月24日から突発的に始まったロシアによるウクライナ侵攻。5日目の28日、ベラルーシ共和国の国境でロシアとウクライナの交渉団によって話し合いがもたれた。しかし、歩み寄りは難しく何も合意することなく1回目は終了し、2回目の話し合いが数日以内に行われる予定だ。


プーチン大統領、ウクライナの「Denazification - 非ナチ化」を訴えるロシアのプーチン大統領は、ウクライナ軍に対し、「テロリスト」「麻薬中毒者とネオナチの一団」と呼び、同国指導者の打倒を呼びかけた。


しかし、皮肉なことにゼレンスキー大統領はユダヤ人である。そして連日世界中で行われている反戦デモでは、プーチン大統領が逆にネオナチと呼ばれ、彼の写真にヒトラーの髭を加えたプラカードを多くのデモ参加者が振りかざしている。
さて、ソーシャルメディアやニュースでは「体を張って自国を守る」ゼレンスキー大統領の英雄ぶりに賞賛の声が上がっている。


今や世界中から注目を浴びている、ヴォロディミル・ゼレンスキー大統領とは何者なのだろうか?


ゼレンスキー大統領とは?

彼ははウクライナ東部のロシア語圏に生まれ、ユダヤ人の両親はホロコーストで命を落とし、祖父と親戚は第二次世界大戦で、ソビエト赤軍としてナチスドイツ軍と戦った。(ウクライナは当時ソビエト連邦)
彼は法律を学んでいたが、コメディアンとして成功し、旧ソ連全土で公演を行う人気コメディーグループに参加。2015年に「サーバント オブ ザ ピープル」シリーズに参加する頃には、いくつかの映画にも出演し、ウクライナで著名人の一人となっていた。ノンポリとしても知られており、彼が政治の道を選んだのを不思議に思う人も少なくないらしい。


彼が2019年にウクライナ大統領に当選したとき、彼が直面した反対勢力はネオナチなどの極右民族主義者ではなく、ウクライナの他のユダヤ人たちであったことは非常に意外である。苦しい過去を背負う彼らは、もしゼレンスキー氏が失敗したら、自分たちがその結果に苦しむことになると恐れていたからだ。当時、ドニプロの首席ラビはニューヨーク・タイムズ紙にこう語っている。「彼は出馬すべきではない。うまくいかなければ、2年後にここで再びポグロムが起こるだろうから。」ウクライナの最新の世論調査では、ゼレンスキーの支持率は96%である。世界有数の強国を前にして、ゼレンスキーは自らができる最大限の抵抗している。

ソーシャルメディアで支持者を増やす

亡命したと噂されたゼレンスキー大統領は即座に自分の携帯で自撮り映像をソーシャルメディアに投稿し、自分はキエフから逃げていないことをアピール。元コメディアンで40代の若い大統領はソーシャルメディアを上手く利用して世界中の指示を得ることに成功した。


そしてその後も世界に向けて「生きている私を見るのはこれが最後かもしれない」と、ウクライナが、ロシアの進出を阻止するために欧州連合が検討している措置について、欧州連合の指導者に語っていた。
25日金曜には、ロシア軍が首都キエフを攻撃している状況について、同様に率直に語った。「敵は私を第1の標的とした。彼の家族は第2の標的である。」と彼はビデオメッセージを投稿。


東欧で厳しい人生を送ってきたユダヤ人たち

他の中東欧諸国と同様、ウクライナのユダヤ人の生活は非常に厳しいものであった。ホロコーストの最も残虐な虐殺の一つであるバビン・ヤールはキエフのすぐそばで起り、1919年には首都の路上で数万人のユダヤ人が虐殺され、50万人が家を失うなど、ウクライナには様々な形で多くのポグロムの歴史がある。
反ユダヤ主義の暗黒時代を経験したウクライナのユダヤ人が、今、指導者として、英雄として受け入れられるなら、他の虐げたれてきているユダヤ人にも希望が持てるのかもしれない。

ユダヤ人としての誇り

彼は、自分のユダヤ人の生い立ちや宗教については詳しく述べていないが、時折、ユダヤ人の誇りやイスラエルとの強い連帯感を示すメッセージを口にしている。そして、そのユダヤ人としてのアイデンティティは、敵やライバルによって繰り返し踏みつけられてきたが、世界中のユダヤ人に支持されてきている。


また、ゼレンスキーはTimes of Israelのインタビューで、ユダヤ国家についてコメントしている。

「特に、イスラエルの統一性、国家の統一性という点では、非常に特別な存在だと思います。ユダヤ人は、人と教養以外、何も持たずに、国を作り、国を発展させることができたのです。イスラエルに住むユダヤ人は、ユニークな民族であり、ユニークな人種です。経済力もある。世界には自国を守れる国はたくさんあるが、小さな国であるイスラエルは、自国を守るだけでなく、外部の脅威に直面しても、対応することができる。」


駐米ウクライナ大使、オクサナ・マルカロワ氏はユーラシアユダヤ人支援全国連合のウェビナーで、ウクライナは「ユダヤ人大統領を選んだ数少ない国の一つであり、ゼレンスキー大統領は心の底からウクライナ人でありながら、ユダヤ人でもあるのです。」と語った。


ユダヤ通信社も、2019年、何人かのウクライナのユダヤ人は、ユダヤ人排斥のポグロムやソ連時代の迫害の歴史を経てきた自国が、ユダヤ人の大統領を選んだことを誇りに思うと伝えた。