令和4年 2022年2月4日(金) 「2月歌舞伎、歌舞伎座1部元禄忠臣蔵、お浜御殿綱豊卿、石橋」
2月歌舞伎座の第一部は、元禄忠臣蔵、お浜御殿綱豊卿、石橋の二本。昨日の、第二部、義経千本桜は満員の盛況だったが、一部は入りが悪い。
綱豊を梅玉6度目、富森助右ヱ門を松緑が初役で演じた。中臈お喜世は莟玉。莟玉は、ふっくらとして,可愛すぎて、町娘、茶屋の人気者ならいいが、殿様の手が付いた中臈には見えず、やたら動きすぎて、幼く見える。梅玉は、上品さに加えて、沈着にして、堂々としていて、正に次期将軍の器の雰囲気。この役は、出で、将来6代将軍家宣になる綱豊卿の雰囲気が出せるかどうかが重要だが、この点梅玉には、ニンがあり、劇の上では、一歩引いて、自分は次の将軍を狙ってはいないと見せる、謙虚さをよく出している。
赤穂事件に関して、将軍綱吉の処理に批判的で、浅野家再興より、大石内蔵助の敵討ちに賛成で、なんとしても討ち入りを成功させたい気持ちを持ちながら、ぐっと抑え、顔は甲府藩の35万石の大大名の顔を冷静に保ちながら、心の中では、怒ったり、笑ったり、探ったり、恍けたりと、場面に応じて、使いわけ、喜怒哀楽を見せながらも、大名の殿様の品格を落とさないところは、堂々としていて、大変結構だった。
酒に酔いながら、助右ヱ門の話を聞き、大石内蔵助が、お家再興の願書を出している手前、討ち入りに踏み込めず、幕府の決定を待つため、京都で遊んでいる苦衷を、助右ヱ門に説いて聞かせる場面は、大石が乗り移ったようで、心を打った。自分の赤穂事件に関する主張は、酒を酌みながらも、助右ヱ門との問答の中で、諭すように、説く、明晰な頭脳を持った大名であることをはっきりさせていてよかった。松緑の初役の助右ヱ門は、吉良の顔を覚える目的で、大名家を訪れたのだが、ただ主君の仇を討ちたいだけの、直情的で、大局観のない人物を、実直さをみせながら、ストレートに演じていた。妹の伝手で、大名屋敷に忍び込んだのだが、綱豊の前に引き出され、自分の主張をおどおどと述べる。ただ吉良を暗殺するだけでは、本質的な解決にはならないという綱豊の考えを理解できず、いらいらするところを、うまく演じていた。吉良を殺せばいいのではないと厳しく言われているに、最後に吉良を槍で殺そうとするところは、愚か者を通り越して、いかにも直情的で、まっしぐらな武士を演じていて、爽快感があるが、最後の最後まで、大石の苦衷を理解できない、頭の悪さも感じた。助右ヱ門は、元々頭にいい人物に設定されていないので仕方がない。
石橋は、錦之助、鷹之助、左近。万年青年の錦之助が獅子の精の芯を務めた。首振りが奇
麗だった。