Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

マヤ

『W旦那+(プラス)』 三代目妄想劇場 番外編(小さな憧れ35)最終話

2022.03.05 15:20

「ねぇ、それよかるーたん。たぁくんがいないのよ」




「ああ、俺たちのベッドで寝てるよ」




「そうなの?まだまだ甘えん坊なんだから、たぁくんってば…」




「乃愛も来る?その前にパウダールームへ案内するね」




「パウダールーム?お手洗いのことでしょ?」




「へへへ…そうだよ、お姫様」




「ねぇ、やっぱオバケいたの?」




「そ、そうだね…」





隆二は嘘がつけない性格だ。




乃愛に真っ直ぐな目で見つめられると尚更はぐらかせない。




「乃愛やたっくんが生まれるずっと前の話だよ」




「直己さんが退治してくれたから、もう出てこない」




「ホントに?」




「うん、心配ないよ」




「たっくんがね、乃愛を怖がらせてしまったから、明日の朝ごめんなさいするって言ってた」




「でもぉ、たぁくんがオバケのお話したから、今るーたんとこうやって一緒にいられるんだもんね」




「あ、ホンマや」




「るーたん、関西人になってる 笑」




「乃愛、やっと笑ったね」




「るーたん…」




隆二に廊下で待っててもらい、お手洗いを済ませて出てきた乃愛が言った。




「陽翔くん、ひとりぼっちになっちゃうから、乃愛、子供部屋で寝るね」




「優しいね、乃愛」




「乃愛の何倍も優しいのは、るーたんと陽翔くんよ」




「ありがとう」




乃愛の心の変化を隆二は見逃さなかった。




小さく灯った淡い恋心が、いつか大きな愛に育って、誰よりも幸せになって欲しいと願った。




乃愛をエスコートして子供部屋の前に着いた時だった。




どこからともなく冷たい風が入ってきた。




「あれ?どこか窓が開いてるのかな?」




「乃愛、ちょっと待ってて」




「やん💦乃愛も一緒に見に行く」




「そうだね、じゃ、一緒に見に行こ」




廊下の突き当たりに通気用の小さな窓がある。




そこから風が入ってきた。




「あれ?臣、換気したのかなぁ」




子供達の手が届く高さではない。




岩田一家と陽翔の父が帰ってすぐに、家中の戸締りは隆二がしたから、開けたのは臣しか考えられない。




隆二は少し背伸びをして通気窓をスライドさせ閉じた。




「やだ、オバケの仕業かな💦怖い…」




乃愛の言葉を聞いて一瞬、隆二も背筋が凍った。




「まさか、ね」




怖がっている乃愛を再び抱き上げた。




「なぁんて、ないない💦オバケなんていないよ!もっと楽しいお話しよう」




「楽しいお話?」




「うんとね…あ、そうそう」




隆二は歩きながら明るい声で話し始めた




「あのね、たっくんが寝言でパンマンのお医者さんごっこセット買って欲しいって」




「たぁくんずっとおねだりしてるよね!あ、あとアンパンマンのおしゃべり掃除機も欲しいって」




「言ってたね!うちはただでさえ賑やかなのに、掃除機まで喋りだしたらもう訳わかんなくなるからダメって、臣に却下されてた 笑」




「たぁくん最強よね、臣ちゃんもウケる」




「あ、それでね。たっくん、臣と俺にお医者さんごっこセット貸してくれるんだって」





「え~💦なんかエモ過ぎて嫉妬ぉ💦」





「エモい?どんな想像してんの、乃愛…ウケる 笑」




「でも、ドクターになったたぁくんに、追いかけ回されるよりはいいかも」




「やめて💦…腹痛い 笑」




「るーたんも笑ったね!」




「アハハ…やべぇ💦」




体を揺らして爆笑する隆二を見ながら、乃愛は思った。




(るーたんがどんなに臣ちゃんのことをいっぱい愛してても、ね)




(乃愛の憧れのてっぺんはいつも、これからもずーっとるーたんだよ)




笑う口角の端っこ、愛しい髭が途切れたところに軽くキスをし、乃愛は満足げに隆二の胸に顔を埋めた。




~完~






長期に渡ってのご愛読、心から感謝します。


いつもありがとうございます。