2021年12月 高度動物医療センター診察
正直、この日のブログを書くのに、いつもの倍以上の時間がかかりました。
最初の一行を書いて全く進まない。この日にも救いがあって、出会いがあって、私が前向きに最後まで介護を出来たのはこの日があったからなのは間違いないのに。
それでも診断結果の確定と、余命宣告というのは心に重くのしかかっていたのだなぁと感じます。
よし。書くぞ!
琥珀は相変わらずとても元気で、よく食べ、散歩を楽しみ、グリニーズを催促し、ニコニコして、いい子でかわいい♡
この子が病気なんて本当かなぁ?
やっぱり転移はギリギリ間に合って手術が出来るんじゃないかなぁ。
でもI先生の歯切れの悪さと、レントゲンを見た感じだと駄目かもしれない。
大丈夫!って思っていて、最悪の結果を聞くよりも、ダメだと思っていてセーフでしたってことを聞く方がいいんじゃないか。
等と思いつつ、予約日を迎えました。
午前10時。遅刻厳禁。
カーナビで住所が出なくて、病院の近くでちょっと迷う。
紹介状はFAXされている。それ以外にI病院から持たされた検査結果や、エコー写真、その他もろもろの資料を携えて受付。夫も合流。
待合室では久しぶりの夫に、わかりにくくテンションが上がる琥珀。
トイレに行く夫を目で追って、出てきたら喜んで。良かったねぇ。
これまでのかかりつけI動物病院のI先生は、ご専門は整形外科。
今回は腫瘍科のドクターとお目にかかることに。
K先生。
明るくて、穏やかで、優しい印象の先生。
緊張させてしまうからわんこは自由にしていいですよ。まずはお話をというスタンス。
琥珀は珍しく人見知りもしないで、診察室内を探検。
探検するタイプじゃないのに。しかもなんか楽しそう。
先生からは今日のスケジュールを説明される。
正直あんまり細かい話を覚えていない。メモを付けていたのに見当たらない(;´・ω・)
ただ、麻酔をかけてCTを取ること。17時ぐらいに結果が出ること。費用を伝えられて、琥珀を預けて一旦病院を後にすることに。
時間がたっぷりあるので、一旦家に帰ることにする。
空模様が怪しくなってきて、雨の予感。
家に帰宅して、昼ご飯を食べる気にもならないけど無理やり食べる。掃除機をビシバシにかけた。
琥珀は大きい音と掃除機がとっても苦手でブルブル震えてしまうのでこの時とばかりにかける。
病院への道は混んでいたので、早めに家を出る。
なんだかんだで腰を落ち着ける暇もなく。雨が近くて、気圧が低いせいかやたら眠いし、頭痛もする。アスピリン1錠。
途中で雨が降ってきた。
なんとなく。ああ、涙雨だ。ダメなんだな と静かに覚悟した気がした。
しばらく待たされて、診察室のドアが開いて名前が呼ばれた。
琥珀が出てきて「(≧∇≦)早く帰りましょう!」とばかりに出口に向かって行く。
ピョコピョコご機嫌で大変かわいいのだが、診察室へ押し込めてお話を聞く。
放しておいてOKと仰るので、リードを離したら、先生のニオイをスンスンかいで足元にため息一つついて寝そべった。
そう、琥珀。先生の事好きなんだね。OK。
CTの画像を見ながら、先生から説明が始まる。
輪切りの画像も琥珀で、なんてかわいいんだろう。と思いながら持参したカラーリングアトラスを開く。
スウェーデン式ドッグマッサージセラピストのサブテキストと言ってもいいカラーリングアトラス。獣医学部の1年生の教科書らしい。
獣医さんへの訪問の際には、必ず持参する。
レントゲンや説明を聞く時に、これを見ながらだとスッと入ってくることが多いから。メモを付けるのに便利だから。もっと犬のことを知りたいから。
先生の口調はてきぱきしていて、朗らかで、質問があればいつでも、なんでも とこちらをリラックスさせてくれるお人柄。
そのうえで、先生はあっさりおっしゃったのです。
「余命3か月。」と。
夫はその瞬間泣き崩れ、私は「やっぱり駄目だったか」と小さな声でつぶやいたらしい。
らしい というのは、声に出したつもりがなかったからで、最近、「言ってたよ」と聞きました。
先生は続けて
「悲しんでる時間はないよ。この子が愛されて大事にされてきたのがわかるし、賢い子で間違いなく幸せな子だよ。顔を見たらわかる。余命を知ったということは残り時間を知ったということ」
というようなことをおっしゃいました。
私はその一言で心のモヤが晴れて「そうだ。余命はギフトだ。」と思考を前向きにすることが出来ました。
「先生。私はスウェーデン式ドッグマッサージのセラピストをしています」と名刺を差し出しました。ドッグマッサージに理解がない先生もいるけれど、この先生にはわかってほしいなと思って。
「それでそれ(カラーリングアトラス)持ってるのかぁ!」と納得されました。
「僕はスウェーデン式ドッグマッサージの資格を持った動物看護士さんのいる病院で働いたことがあって、とってもお世話になったんだよ。」
この看護師さんは間違いなく、私の先輩の誰かで聞いたらわかる人かもしれないけれど、個人情報だしとお聞きすることはなかったのですが、なんとなく「あの人かな・・・」と頭に思い描いた方はいました。
そこから一気に和やかなムードになって色んなお話をしました。
余命宣告されたのに、手術出来ないのに和やかって変な感じで、能天気に思えるかもしれないけれど、逆にしっかり現実のものとして受け止めて、逃げずに向かい合っていくんだと思えた貴重な時間だったのです。
ここまで泣いたら琥珀にバレそうで、彼女の前で一度も泣いていないこと。
先生の説明で余命は、突然訪れる発作や死ではなく、ギフトとしてとらえて楽しく楽しく笑って過ごそうと思えたことなどをお話しました。
先生は余命3か月と仰って、これがもちろん短くなることもあるのはわかっているけれど、逆にもうちょっと伸びる可能性もありますよね?だったら私、一緒に桜を見たいです。そこまで頑張りたい なんて話した気がします。
そのこともとっても褒めていただけて、よし、先生は3か月って言ったけれど少しでも伸ばして、先生にやりましたよー!と笑顔で報告できるよう頑張ろうと思えたのでした。
琥珀の最終的な病名は、腎細胞がんではなくて「血管肉腫」でした。
腫瘍のプロである先生はの説明で覚えているところを抜粋。
「背中の筋肉層の中にも2個転移がある。これはレントゲンでは絶対に見つけられない。」
「両肺転移。腎臓は左はまだ転移してないけれど時間の問題。肝臓と心臓は大丈夫」
「腎臓横の腫瘍がなにか気になる。違和感がある。なんか腎細胞がんの感じと違う」
そこで、夏からここまでの経過をお話していくと、先生は納得された顔で、これまでと同じくサラッと、さわやかにおっしゃったのです。
「ああ。納得しました。それはI先生の見立てが正しい。腎細胞がんじゃない。もっと質が悪い。血管肉腫だ」
質問はありますか?と聞かれて、いくつか見つかった腫瘍のうち、原発はどれかを伺ってみると、最初に見つけた「謎の構造物」と呼ばれた腎臓横の物でした。
もしあの時に手術という選択をしていたらという思いがよぎったけれど、「小さすぎて確定できないという判断は間違ってないよ」と先生のやさしさなのか、本音なのかわからないけれどその言葉を素直に信じることにしました。
やらなかったことを後悔しても、今そこにある結果は結果で、そのことで自分を責めて暗い顔をしてメソメソしているよりも、残された琥珀との日々、見つめ合って、笑顔でいる私の方が絶対琥珀は好きだから。
後悔するとしたら、琥珀がこの世界からいなくなった時にいくらでもできる。
そう思って。
「先生に、見つめ合ってオキシトシンをいっぱいだそうと思います。」とお伝えしたら
「うん、それがいいよ!」と先生が笑顔でうなづいて下さいました。
琥珀は麻布大学、菊水教授のドッグラボから引き取った子ですから。
犬だけが。人と見つめ合って、双方が幸福感を感じてオキシトシンという幸せホルモンを作り出すことを発表した菊水先生のところから来た子ですから。実践あるのみ。
等ということを本当に和やかにお話して、K先生は「麻布ってそんなこと(里親プログラムを授業をして採用している)してるのか―!凄いなー。」と感心したりと。
そんな中、夫はいまだ涙の海から抜け出せずにいたのですが、鼻をすすりながら質問しました。
「先生、僕は妻ほど詳しくないので、あれな質問かもしれませんが、何か出来る(治療)ことはありませんか」と。
このことは後で、重大な問題を引き起こし、私が唯一、本当に後悔していることにつながっていくのでした。