詩がもたらす魔法と、痛みを和らげるパワー
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【詩がもたらす魔法と、痛みを和らげるパワー】より
詩には痛みを和らげる力があります。詩を介して心の奥底へと続く道筋を作り出すことができ、それにより本当の自分を発見して輝きを放つことが可能になります。
詩がもたらす魔法と、痛みを和らげるパワー
詩というものは、人生の折々で訪れる、心が粉々に砕けてしまうような苦しい時期にその痛みを和らげてくれます。思考が破綻し、ヘトヘトな時がありますよね。そんな時、私たちは前進することを困難に感じたり、憂鬱状態に陥ってしまうかもしれません。まるで嵐が永遠に自分のそばに存在し続けるような気がしてしまうのです。
このような瞬間にこそ、詩に触れてみるべきです。なぜなら、詩にはその傷の一部を癒してくれるパワーがあるからです。この記事を読み進め、アートと健康との素晴らしい結びつきを巡る旅をお楽しみください。さらに、心のバックパックに詰め込まれた苦痛という名の重荷を、いかに詩が軽くしてくれるかについても説明していきますよ。
“生涯に一行も詩を書いたことのない人であっても、詩に描かれる情緒から気高い喜びを感じ取ることができる人は真の詩人なのだ” -ジョルジュ・サンド-
アートと健康
アートは、意識的なものも無意識的なものも含めたあらゆるテーマを表現する上で、その補助役にも媒介役にもなれる強力な伝達手段です。様々な形態のアートを介して、人類は感じたことや考えていること、そして自分自身さえをも表現することができます。アートを使うことで流れに身を委ねやすくなり、自己についてじっくりと考えやすくなるのです。
また、医学の世界でもアートは痛みを和らげる手段として用いられており、実際に、音楽や絵、写真、演劇など、あらゆる種類のアートセラピーが存在します。どんな人でもクリエイティブな作業に参加することで状態の改善が見られるのです。例えば、末期ガン患者は舞台芸術が生み出すユーモラスなシチュエーションから良い効果を得ることができます。これこそが、一部の病院でクラウンセラピーなどが取り入れられている理由です。また、アルツハイマーを抱える人々に匂いの刺激を用いて感情の放出をサポートするという形態のセラピーもあります。このように、多くの人々がアートを通じてトラウマと戦っているのです。
だからと言って、アートが完全に痛みを消し去ってくれるわけではありません。覚えておかねばならないのは、健康とは様々な要素が組み合わさって成り立っているという事実です。そのためこれは、精神状態や社交関係といった面も絡んでくる問題なのです。したがって、痛みの感覚はそういったあらゆる要素が相互に調和していると感じられた時に初めて減少します。
詩には痛みを和らげる効果がある
辞書を引いてみると、詩は「一つ一つの韻文や散文の美しさやそこに描かれる感情の耽美さが現れ出たもの」だとされています。言葉は感情や考え、行動を伝えるものであり、どんな人でも言葉を通して落ち着いた心にたどり着くことができます。しかし、その仕組みはどうなっているのでしょう?
詩歌は、人間の魂に触れるようなシンボルや物語、そして表現に満ちています。その力強さゆえ、私たちの心の一番深いところにまで響き渡るのです。そのため、詩を介して自分と同じ経験をしているような誰かと繋がることができます。
詩はまるで、その瞬間を切り取っているかのように言葉にできない何かを表現しています。その表現は非常にわかりやすいので、詩人たちに私たちの心の秘密を知られているような気分になるほどです。
心理療法や教育現場、コミュニティにおける詩の役割
人類は昔から、治療の目的で詩を用いてきました。例えばアリストテレスは心を癒すために詩を通してカタルシスを得よと奨励していましたし、19世紀初頭の精神医学界では、ベンジャミン・ラッシュの影響により精神疾患に対して詩を利用した治療を採用することが推奨されていました。
エリ・グリーファーは、精神医学者ジャック・J・リーディの誘いを受けてニューヨークにあるクリードモア精神医学センターに協力した詩人で、ポエトリーセラピーの創始者です。二人は共同でこの治療法の原理を記し、情動障害の治療に用いることを提唱しました。
1981年には全国ポエトリーセラピー協会が立ち上げられ、アメリカ合衆国で毎年会合が開かれるようになりました。そして近年では、このトピックを扱った書籍がどんどん増えてきています。詩を心理療法の手段として認識しているそういった書籍の中でも最も有名なものの一つが、『The Princeton Encyclopedia of Poetry and Poetics』です。
また、このテーマに関する最近の科学的研究をもっと知りたいという方には、『Jounal of Poetry Therapy』という本もおすすめです。
詩を介して、人は安心できる場所で自分自身を表現し、少しずつ心を開いていくことができます。比喩を用いることにより言葉の意味を超越して深い部分で共鳴できるようになり、感じていることや考えていること、そして行なっていることを視覚化することも可能になるのです。
また、書くことには痛みを軽減させる効果もあります。一方では苦しみを昇華させることができますし、他方ではシンボルや言葉、イメージを掘り下げて日常言語では言語化できないような内容を語ることもできるのです。
詩がもたらす魔法と、痛みを和らげるパワー
詩はどのように痛みを和らげているのか − 教育現場やコミュニティにおける活用も
詩は、教育現場において心の知能指数を高めるための学習ツールとして利用することも可能です。授業で詩を扱うことは他の科目と同じくらい重要なことであるにも関わらず実際に導入されている学校は少ないのですが、それでもその効果については十分な研究がなされています。
また、詩によってクリエイティブな表現力を高め、自己理解を深めることもできます。自らの心に潜む暗闇を表現したり、思いやりと共感力を育んだり、奥深い作品を作ったり、自分のアイデンティティを理解したり、苦しみから学びを得たりなど、詩を通して実現できることは多岐に渡るのです。
また、コミュニティの中でも詩は力を発揮します。なぜなら、詩とは人々の感情や思考、行動を結びつけ、それらをまとめあげてくれるものだからです。さらに、個々人のルーツや習慣、信条などに基づいた創作活動を促進してくれるものでもあります。
コミュニティの統合と超越を可能にするような詩の作品群を通して、コミュニティはもっと奥深いものへと変わっていきます。それに加えて、道徳的な教えの詰まった物語のなかで古くから用いられていたような比喩の価値が再評価され、人と人との結びつきも強めてくれるのです。
短く言うと、詩によって人々は自らの心の中の最も暗い場所へと近づくことができ、その新たな地平線へと光を届けるような言葉の道筋を組み立てることができます。つまり、心の暗闇を表現することで私たちの魂は穏やかになるということです。最後に、詩とは痛みが現れる場所で明るい光を見つけ出すために心の中を探検する手段であり、それにより私たちは痛みを昇華させて困難を乗り越えて行くことができると言えるでしょう。