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空想都市一番街

卒業の日 ①

2022.03.09 14:31

その日はよく晴れた。


絶好の卒業式日和だ。


すばるとシュリは一緒に大学に向かった。友達のレナは先に着いていた。


「おはよう。ついに来たね。」


レナはすばるの顔を手で包んで微笑んだ。


「うふふ。もう卒業なんだね、私たち」


なんだか信じられないくらい、短かったような、でもいろんなことがあったような。


それぞれの道を歩いていくことへの希望と、別れの寂しさ。


今日大学にいる卒業生のみんながそれを感じていた。


「さぁ、着替えに行こうぜ。学長のスピーチもあるし。」


シュリが声をかける。


三人は更衣室で黒い制服を身につけて帽子を被った。


今までの努力が、この姿に現れている。鏡に映る姿を見てすばるは思った。


卒業式は滞りなく進められた。


ひな壇に並んだ卒業生たちは学長のスピーチに涙したり勇気づけられたり。


これから社会に出ていくのだ。

みんなその希望を胸に、卒業式を終えた。



式にはタクヤもルイも来ていた。


「卒業おめでとう。立派な姿だね。4年間、頑張ったな」


タクヤは本当に嬉しそうにすばるに言った。あの小さかった少女が、こんなに大きく立派になった。


「ありがとうパパ。私パパのおかげで大人になれたよ。」


すばるも深く感謝していた。この人が見捨てないで育ててくれたおかげで、大人になれた。



「シュリ」


シュリは声に振り返るとルイが近づいてきていた。


「ルイ!見て、俺、大人になっただろ?」


嬉しそうに姿を見せるシュリ。


「うん。すごく立派だよ。あの小さかった君がこんなに大きくなって…お母さんに見せてあげたい。きっと今頃見てるかな。優里ちゃん。」


ルイはいつものように優しく言った。

久しぶりにシュリの母の名を口にして。


「母さん、喜んでくれてるかな」


「もちろん!優里ちゃんの大事な息子なんだから。誰より喜んでるよ。」


シュリは嬉しかった。新しい母のことも好きだったが、ルイはいつも亡くなったシュリの母も大切にしてくれた。新しい母でさえ、シュリの母を心から大切にしてくれた。


俺は家族に恵まれた。


そう思った。そしていつも愛してる、と亡き母に心の中で思うのだった。

「レナ、卒業しても、友達でいてね。体に気をつけて頑張ってね」


すばるは病院勤務が決まっていたし、レナは兼ねてから活動していた音楽活動が軌道に乗り、メジャーデビューすることになっていた。


「もちろんだよ。すばるはあたしの親友だから。あんたこそ、幸せになりなよ」


すばるは母を赤らめて、うん、とうなづいた。


「今日のAZEMICHIの卒業式ライブ、あたしも招待されてるから。一緒に行こうよ。シュリも」


うん、と答えて、すばるは空を見上げた。


久しぶりのパパのライブ。こんな卒業式の日に見られるなんて、幸せだな、と思った。


「なんかあるかな?」


と言ってレナは笑った。


「なんかって?」


アハハ、とレナは笑って、何でもないよと言って立ち上がった。


「さあ、行こう。」


レナの差し出した手をすばるは取った。


新しい日々、幸せが、これから満ちてる。


そんな希望が溢れていた。