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ポケモンと出会う

2017.11.21 14:31

 この日、良人さんはポケットモンスターのゲームを始めた。

 だが、まだゲーム冒頭の博士の説明を聞いて、主人公の性別と名前を設定しただけの段階である。

 午後になり、ご飯も食べて、良人さんもようやく腰を落ち着けてゲームを始められた。

 まだまだ導入部分だけど、順調に進めていっているようだ。

 良人さんはニヤニヤしながらプレイしている。

「おっ! よしおの家、だって」

「うふふ。よしおさんのおうちなんですね」

 ノノちゃんはソフトを始めた最初の頃を思い出したのか、楽しそうだ。

「表札は名字にしてもいいのにね。わざわざ家にいないよしおの家って言うよりさ」

「言われてみればそうだね。まあいいさ、どんどんいこう」

「頑張れー」

「がんばってください」

 凪とノノちゃんに応援されて、良人さんはまた「よーし、頑張るぞー」と声を上げる。

 それから二、三分後。

 読書している俺の視界の端にいた良人さんがそわそわ動いているのが見えた。

「え? え? 凪くん、ボクこの中のモンスターどれかもらっていいの?」

「良人さん、そこはモンスターじゃなくてポケモンって呼ぼうよ。慣れてない感じだよ」

「そうだったね。ポケモンだ」

「うん。ポケモンだ」

 復唱して凪はまったりとお茶をすする。

「違うよ、違くないけど違うって。もらっていいんだよね?」

「ダメだよ、これはぼくのどら焼きなんだ」

「ポケモンっ!」

 良人さんの話をまともに聞いていない凪に代わり、ノノちゃんが教えてあげる。

「ポケモン、もらえるんですよ。くさとほのおとみずの三つから選べます」

「この三匹ってことでしょ? どれがいいかな~! どれも可愛いから迷っちゃうよ!」

 にんまりと三匹を眺めて嬉しそうに悩んでいる。俺は口を挟まず悩ませてやるか。

「どれが強いのかな?」

「進化するとどれも強いです」

「ふーん。進化するんだね。そういえば、ピカチュウがライチュウになるとか聞いたことあるな。そうなると、この赤いほのおの子なんて強くなりそうだぞ!」

「その子も可愛いですよね。ノノは最初みずにしました」

「みずか~。可愛いよね! そっちの方がいいかな?」

「どれもいいと思いますよ」

 ノノちゃんのアドバイスを聞いても迷っているらしく、今度は俺に聞いた。

「開くんはどれにした?」

「俺はいつもほのおタイプ選んでます」

「おお! 強くなる?」

「どれも強くなりますし、深く考えなくても」

「そうだよ。ぼくはいつもくさにしてる。前回はみずだけど。良人さん、インストラクションだよ」

「インストラクション?」

 と、首をひねる良人さん。わかってないみたいなので、俺は良人さんのために凪につっこんでやる。

「それを言うならインスピレーションだ」

「ああ、そういうことか。でも、ボクのインスピレーションだとこのくさのモンスター……じゃなくてポケモンが、進化したら姿が変わりそうで見てみたいんだよね! だからこれにしてみるよ。強くなりそうだし」

「うん、いいと思うよ。ぼくと鈴ちゃんと一緒だ」

「わからないことがあったら凪くんに聞けるね」

「最初に選んだポケモンでどうこうないからそこは関係ない」

「はい」

 と、良人さんは素直に答えて笑った。

 良人さんは最初のポケモンを受け取ったらしく、ブイサインを作って言った。

「ポケモン、ゲットだぜ」

「ピッピカチュウ!」

 と、凪とノノちゃんもブイサインを作る。

 三人共楽しそうでなによりだ。

 良人さんは「ん?」と画面を見て、なにげなく聞く。

「ニックネームだって。これって、つけなくてもいいんだよね?」

 それに対して、俺たち六人は声を揃えて言った。

「ダメ!」

「わ、わかりました」

 ここまで読んで、これから初めてゲームをやってみようかなと思った読者に言っておきたいのは、俺たちが「ダメ」と言ったのは、ただ良人さんがつけるニックネームが気になるからだ。面白そうというだけの話である。

「自分で名前付けてあげると愛着も沸くし、付けてあげてください」

「そうだね。ボク少し考えてみるよ」

 良人さんは悩み、一分ほど考えてようやく口を開いた。

「よし、くさタイプだしリーフにしよう」

「つまんなーい」と凪がぼやく。

「なんか普通だよね」

 俺がそう言うと、逸美ちゃんとノノちゃんが残念そうに続ける。

「個性がないわね~」

「ノノ、なんて言ったらいいのか……」

 基本的にはあまり他者のプレイに興味なさそうな作哉くんだが、これについては良人さんに言及した。

「ノノを困らせやがって。こういうのはな、そいつのポイントを見るとか逆に一旦離れたところから名前を借りるとかするんだよ。やり直しだ」

「はい、すみません」

 顔が怖いというだけの理由で良人さんは年下の作哉くんをちょっと怖がっているらしい。結構話せばいい人だってわかるのに。で、ノノちゃんの保護者としてノノちゃん関係のことには厳しいから、余計いまの顔が怖く見えるのだろう。

「あ、凪くんもくさでしょ? なんてニックネームにしたの?」

「ぼくは『クク』にしたよ」

 良人さんはぼそりと、「なんだよ、単純じゃん」とつぶやく。

「確か、鈴ちゃんもくさだったよね? なんてつけたの?」

「うちの子は『マシューくん』です」

「へえ。外国人名か。いいじゃない! そういうのもあるんだね」

 鈴ちゃんは英国人名をよくポケモンにつけている。

 ちなみに、鈴ちゃんのバトル用のパートナーでもある色違いメタグロスは『ウィリアムくん』、もう一匹のパートナーのチルタリスは『ステファニーちゃん』だったりする。

 良人さんはちょっと考えたあと、うんとうなずいた。

「決めたよ。この子の名前はいまから『かっちゃん』だ」

「いいじゃないか」

「面白れェな」

 凪と作哉くんのお墨付きがもらえたところで、良人さんは朗々と説明する。

「この名前はね、ボクの小学校時代の同級生の名前なんだ。この子に似ているんだよね、かっちゃん」

「そーいうのだよ。やればできんじゃねェか」

「えへへ」

 と、三歳年下に褒められて照れる良人さん。ほんとに人がいい。

 作哉くんは最後に一言だけ言った。

「まあ、くさは初代以外、序盤苦戦するから覚悟するんだな」

「えー!? それを最初に言ってよ!」

 あははは、とノノちゃんは楽しそうに笑っている。みんなも笑って、良人さんも笑ったところで、また再開する。

 その間、俺と逸美ちゃんはポケモンを交換していた。

「いまミラクル交換してたらツタージャもらっちゃった。特性はあまのじゃくだって」

「夢特性じゃん。俺もってないんだ。欲しいな」

「いいわよ」

「ホント? ありがとう」

 気になったのか、良人さんが俺と逸美ちゃんに振り返って、

「そのミラクル交換とかツタージャってなに? あまのじゃくとかも言ってたよね?」

 どう説明したらいいだろう。

 俺は考えながら頭の中でまとめて説明する。

「ミラクル交換っていうのは、ネットを使った通信システムですよ」

 誰からどんなポケモンが来るかわからない、ランダム交換みたいなものだ。自分がその瞬間あるポケモンを交換に出したら、同じときに交換に出した人のポケモンと交換される。ネット環境を利用した面白いシステムだと思う。

 だが、この説明は長くなるから良人さんには言わない。

「良人さんもミラクル交換を使って、早めに強いポケモンをゲットしてもいいですね」

「いいじゃないか。それやろうよ」

「でも、まだできないと思いますよ。手持ち一匹しかいないし。それに人にもらったポケモンは、よしおがまだ弱いうちは言うこと聞かないから、ちょっと捕まえて仲間が増えてもうちょっと強くなってからです」

「言うこと聞かないとかあるんだ。弱いトレーナーは認めない、とかなのかな? でもそうだね。まずは仲間を増やそう!」

 と、良人さんは拳を握る。

「それで、ツタージャっていうのは、昔のソフトで最初にもらえるくさタイプだったポケモンです」

「ふーん。ツタっていうのも草っぽいね」

「また、ポケモンはそれぞれに特性というものを持っているんですよ。その中で珍しい特性を夢特性っていうんです。良人さんのかっちゃんのステータスを見てください」

「はい、見たよ。しんりょくって書いてある」

「それは残りHPが少なくなるとくさタイプの技の威力が上がる特性です。こういう特性をうまく利用することがバトルでは大事になるんですよ」

「へえ」

 こういうちょっとした能力っていうのは、今時どこのソシャゲのキャラクターやカードにもあるよね。

「でも、初心者は楽しむことだけ考えて、まずは戦ってレベル上げていくのが一番です」

「そうだね! レベル上げも頑張らなきゃ。仲間を増やしてレベル上げ。うん、オッケー!」

 なんかちょっとどこかの商品の宣伝用マンガみたいな会話内容になってしまったけど、要はポケモンは色々と豊富な設定があるが、やればすぐに慣れるし知らなくても楽しめるということだ。

 そして、ゲームのストーリークリア後も、対戦や図鑑集めなど、楽しめるのが魅力のひとつである。

 鈴ちゃんがゲーム内のバトル施設で戦っているのを横で見て、

「開さん、これってどうしたらいいですかね?」

「ここは一度メタグロスに引いて、ポケモンを交換した方がいいと思うよ」

 と、意見を述べる。

 ポケモンバトルは駆け引きも大事で、囲碁や将棋のように手番のあるターン性のゲームだから、相手の行動を読み裏をかいたりして考えながら戦うのも面白い。

「あ、やっぱり開さんの言ったように交換して正解でした。これは有利」

 ただ、色々言ったけど、小学生がメインターゲットで小学生でさえやれているゲームだから、難しいこともないのだ。

 良人さんもまずはストーリークリアをして欲しいものである。

 すると、ここで良人さんに動きがあった。

「ああ、なんか勝負挑まれたよ」

「頑張って、良人さん。ここは楽勝だよ」

「そうです。最初のバトルはやさしいです」

 最初にライバルと戦うところらしい。

「どの技がいいかな?」

「どれでも勝てるよ」

「なんでもいいので押してください」

 凪とノノちゃんにせかされて、良人さんは適当に戦い始めた。

「もういいや! それっ! それっ!」

 そしてものの一分ほどで、良人さんはガッツポーズをした。

「やったー! 勝てた! 初勝利~!」

「わー」

 と、凪とノノちゃんが賑やかしのように手叩きする。

 良人さんは得意そうに鼻の下をこすり、ふふんと鼻を鳴らした。

「これは幸先がいいねー。ボク、バトルの才能あるかも」

「それは誰でも勝てるさ」

「じまんになりません」

 良人さんはガクッとこけるリアクションをする。

「さっきまで拍手してくれてたじゃない。ほんとに二人共、ボクがちょっとお調子に乗るとつっこむんだから」

「これも良人さんのためさ」

「そうです。バトルもこれからいっしょにがんばりましょう?」

「ありがとう。ボクはこのかっちゃんと一緒に強くなるよ」

 それからまたしばらくして。

 俺は作哉くんのバトル(レーティングバトル――通称レートという、ネット通信によるガチ勢同士の対戦)を見ていた。

 そのとき、良人さんが急に立ち上がった。

「やったー! 野生のポケモンゲットしたー!」

「よかったね」

「おめでとうございます」

 凪とノノちゃんの手を取って握手し出す良人さん。

「ありがとう。ボク、ポケモンを捕まえることがこんなに感動的なことだなんて知らなかったよ。ポケモンGOを誰かがやってるのを見たときも、なにしてるんだろうって感じだったし」

 酔っ払いでもないのにいちいち大げさな人だ。元々、結構感激屋さんなのだろうか。

 真剣バトル中の作哉くんは良人さんの方を一切見ない。

 俺もまた作哉くんのバトル画面に視線を戻す。作哉くんの対戦は相手の裏をかくプレイや奇襲性のあるプレイがあって面白んだよな。

「よーし! もっと野生のポケモン捕まえちゃうぞー」

 頑張ってポケモンの捕獲に乗り出した良人さんだったが、さっきからなんかすごいカチカチ音が聞こえる。

 原因はなんだ?

 見ていると、ポケモンのバトル時のBGMが流れる。野生のポケモンに遭遇したらしい。

「このポケモン、強そうじゃない?」

「進化したら強くなるよ」

「じゃあ捕まえよう。せっかくだから図鑑も埋めたいしね」

 ここまでは普通にやっている。良人さんは「たいあたりだ!」とか声に出して指示しながら戦っていた。

 野生のポケモンを弱らせたところで、凪に聞く。

「そろそろ捕まえられそうじゃない?」

「うん。ボール投げてオッケーだと思う」

「だよね! いけっ! モンスターボール!」

 そして、良人さんはボールを投げたあと、Aボタンを連打し始めた。

 なるほど。これか。これがカチカチうるさかったのか。

 でもそれ、特に意味はないんだけどね。連打した方が捕まりやすくなりそうな気がするし、力入っちゃうから気持ちもすごくわかるけど(無意識に俺もやってたりして……そしたら恥ずかしい)。

 良人さんは両手挙げて、

「あー! ボールから出ちゃったー! ちゃんと弱らせたのにっ。なぜ? ホワイ?」

 なんで最後に英語使った。しゃべれないくせに。

 俺は凪に聞いてみる。

「良人さん、どのポケモン取り逃がしたの?」

「大丈夫。ただのキャタピーだから」

 進化してもそんなに強くならないじゃないか。ちなみに、俺はキャタピーの進化形のバタフリーも好きだから割と旅のメンバーに入れたりするけど。

 しかし良人さんは画面を向いたまま俺に言う。

「開くん、ボクまだ取り逃がしてないからね! もう一球投げるんだ! ピッチャーよしお、振りかぶって~、投げた! いけっ! それっ! 捕まれ!」

 やかましいな。楽しんでいるようだからいいけど、よしおも立派なポケモントレーナーになれるといいな。

「よーし! キター!」

 良人さん、今日何度目かになるガッツポーズ。

 作哉くんの対戦が終わり、なんとか作哉くんが勝利を収めたところで、俺は良人さんのプレイ画面を凪&ノノちゃんと見てみることにした。

 いまはまだ、捕まえたばかりのキャタピーのニックネームを考えているところだ。

「うーん、なにがいいかな?」

「じゃあここは鈴ちゃん風にオシャレなカタカナ名にしたら? たとえば、マイケルとか」

「そういうのも面白いか! マイケルいいね~!」

 と、良人さんが納得したところで、自分のゲームをやっていた鈴ちゃんがバッと凪と良人さんを見て抗議する。

「ダメです! マイケルくんはあたしのポケモンにいるんですから、違う名前にしてください!」

 そういえばいたな、マイケルくん。思い出した俺は確認する。

「鈴ちゃんのマイケルくんって、確かプクリンだっけ?」

「はい。いまも主力で戦ってくれる、頼れるマイケルくんです」

「なんかマイケルっぽいよね、プクリン」

「わかります? さすが開さん。男の子だったのでマイケルくんにしたんですが、自分でも気に入ってるんですよ」

 それから良人さんを見て、

「だからダメですからねっ」

 と、念を押す。

「わかった、わかったよ。違う名前にする。でも、なにがいいかな? ノノちゃんと開くんはアイデアある?」

 良人さんに聞かれて、ノノちゃんがピッと手を挙げた。

「はい! タッピー」

「うん、採用」

 即決だった。良人さん、ノノちゃんに甘いというより、あまりニックネームを考えるのが得意じゃないタイプだな。俺も悩む方だけど、良人さんほど時間かけないし。

「ノノちゃんはポケモンの名前からニックネームつけること多いよね」

「そうですね。ノノ、元の名前も好きだから近い感じになっちゃいます。開さんは違うんですか?」

「ボクのフシギバナはフシギダネの頃から『ふしぎちゃん』だよ」

 聞かれてもない凪が答えて、俺はそのあとから答える。

「俺は色々。相棒のエーフィは紫色だから『シオン』だし、イーブイは英国人風に『ジャック』、頑張って作った色違いのリザードンはその風格から『りゅうおう』様だからね」

「開さんのシオンくん、強くて綺麗で可愛いですよね」

「はは。ありがとう」

 ポケモンには、オスやメスと性別がある。無機物っぽいポケモンなどでは性別不明のポケモンもいる。

 そんな中、なぜか鈴ちゃんとノノちゃんの女の子コンビは、ポケモンの性別に合わせてくん付けやちゃん付けをするのだ。逸美ちゃんは全員ちゃんを付けて呼んだりするのも面白いところである。

 俺が頑張って色違いのリザードンを作ったときも、

「あら。カッコイイ! リザードンちゃん、黒いとより強そうね。よかったね、開くん」

「うん」

 てな具合で、人がつけたニックネームじゃないときでさえ、割とちゃん付けをすることが多い。ピカチュウはそのままピカチュウだったりするのに。

 また、みんなニックネーム自体に『シオンくん』みたいに『くん』や『ちゃん』は入れず、呼ぶときに付けるだけなのだが、凪だけは歴戦の友であるフシギバナを『ふしぎちゃん』と名付けている。

 さて。

 良人さんはまた道にいるポケモントレーナーとバトルになったようだ。

「あ、対戦だ。目と目が合ったらポケモンバトルだってさ」

「戦いたくなかったら目を合わせなければいいんだよ」

 凪のアドバイスに、良人さんは難しい顔をして問う。

「目をつぶるの?」

「良人さんが目をつぶっても意味ないって」

 俺と凪があははと笑って、ノノちゃんもふふふと笑っている。

「避けて通ればいいんです」

「なんだ、そう言ってよ。目をつぶったままゲームできないもんね。でもボクは、全員と戦って強くなろうと思ってるから関係ないけどさ。フフ」

 最初のトレーナー戦も難なく勝ち、良人さんは順調に進めた。

「おっ! このポケモン知らない。捕まえなきゃ」

 知らないポケモンと出会うのって楽しいよな。良人さんは頑張って弱らせている。

「いけっ、たいあたり! ああぁっ! ダメー! なんで? 倒しちゃったよ、とほほ。急所に当たったってなに?」

「クリティカルヒットです。ラッキーってことですよ」

「全然ラッキーじゃないよ。いまのポケモン、倒れちゃって捕まえられなかったもん」

 また、あはははと俺と凪は笑う。笑っちゃ悪いと思っている様子のノノちゃんだけど、我慢できずに笑ってしまっていた。

「あるよね、捕まえたいときに急所って」

「ノノもありました」

「草むら歩いてたらまた出会えますし、気を落とさずに」

「はい。また会ったら捕まえるよ」

 そして、さっき取り逃がしたポケモンを捕まえて次の街に到着すると、外で夕方の音楽が鳴った。

 もう夕方になって、俺たちは帰る。

 良人さんは俺と凪とノノちゃんに、意気揚々と言った。

「また明日ね! 明日にはかなり進んでると思うから、覚悟しててね」

「はい。楽しみにしています」

 素直なノノちゃんがうなずき、俺も微笑む。

「俺も楽しみにしてますね」

 凪はスマホを開いて、なにやらいじり始めた。

「ん? なんだ?」

 着信があったのか良人さんがスマホを開くと、「おお!」と嬉しそうな顔になる。

「凪くん、攻略サイトを教えてくれたんだね!」

「うん。迷ったらこれでも見てね。それでもわからなかったら開かノノちゃんに聞くといいよ」

「あはは。凪くんって選択肢はないの? 三人の誰かに聞くよ。あ……」

 思い出したように、「あ」と声が漏れた良人さん。理由は簡単だ。ノノちゃんはまだ小学四年生だから携帯電話など持っていない。そのため、ノノちゃんと話したければ一緒に住んでいる作哉くんに電話をかけないといけないのだ。

「やっぱり、できれば、開くんに聞きたいかな。凪くんだとふざけてきそうだし。まあ、凪くんの方が詳しそうではあるけど」

「まあ、迷うほど進むかわからないし、明日もみんな学校終わったら探偵事務所に来るんですから」

「そうだね。じゃあ進めておくよ。なにかあったら報告するから! じゃあね」

「さようなら」

 ノノちゃんがぺこりと頭を下げると、良人さんは手を振って、探偵事務所の向かいにある自分の家に帰って行った。正確には、良人さんが居候している家だけど。

 俺たちも解散して、自宅についたとき、一件のメールが届いた。

『開くん、ボクのポケモンがみんなひんしになって目の前が真っ暗になっちゃったよー。頼りのかっちゃんが負けちゃうなんて。おこづかいだって半分になっちゃうし、どうすればいいのー?』

 ひんし? ポケモンセンターでこまめに回復するのが基本だろ。そこ最初に凪とノノちゃんに教わらなかったのかよ。

 初歩の初歩を教えるのは面倒だけど、仕方ないから返信してやった。

『ポケモンセンターでこまめに回復』

 すると、すぐに返信がきた。

『回復完了! ボクのかっちゃんも元気リンリンリザードン!』

 あはは。俺は苦笑いを浮かべてスマホを消した。

 楽しそうでなにより。

 また、さらにもう一件きた。

「なんだ?」

『ボク強くなっちゃうし、もし明日バトルしたら開くんにも勝っちゃうかも! なんてね。てへぺろ』

「……」

 なんだ、てへぺろって。

 俺はさっそく自室に入り、ポケモンの育成を始めた。


つづく