公立小中学校の教員不足問題について(予算委員会質疑より)
千葉県内の中学校で教鞭をとる先生から、悲痛な訴えがありました。
近年、病気で休む先生が増えたことに加え、若手の先生方が産休や育休を取ることにより、一部の教員に負担が集中してしまい手が回らなくなっている。また、仕事を自宅に持ち帰ることができないため、平日は深夜まで学校で事務作業を行い、休日は部活動の指導があるため、休むことができずに限界である。とのことでした。
ご相談をいただいたタイミングと同じタイミングで、文部科学省が、全国の公立小中学校を対象に行った「教員不足の実態調査」の結果が公表されました。2021年度における始業日時点で、教員が不足している学校数とその割合は、小学校が937校で全体の4.9%、中学校が649校で7.0%の結果でした。また、不足している教員の数は、小学校で1,218人、中学校で868人でありましたが、本県での現状が気になります。そこで、本県における理由別欠員状況とその対応について伺いました。
本県の産休・育休・病休者の現状と、その対応状況はどうか?
令和3年5月1日時点で、小中学校において、代替講師が必要な産休取得者は178人、育休取得者は873人、病気等による休職者は77人となっております。
その合計は、1,128人となっており、そのすべてに、臨時的任用講師を配置するべきところですが、30人の不足が生じてしまいました。
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文部科学省の調査報告によると、教員不足の理由として、産休・育休取得者が増えた以外に、定年となった教員の大量退職に伴い、これまで講師だった方が正規教員として採用されたことによる講師登録者が激減したことも挙げています。
県教育委員会では、公立学校で勤務する講師を確保するため、千葉県講師登録情報twitterや講師登録説明会を行っていますが、学校現場の不測の事態に対応するためにも、講師の確実な確保と講師登録のすそ野を広げることが重要です。そこで、本県における講師の登録状況の推移について確認しました。
講師の登録状況の推移はどうか?
小中学校の講師登録者数は、年々減少しており、平成30年度の3,598人から、本年度は3,234人となり、率として約10%減となっております。
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働き方改革推進プランについて
あらゆる分野で人材の確保が叫ばれる中、教育の分野も同様に人材確保は容易ではありません。業務を分担する教員や講師の頭数が増えないのであれば、業務量を減らすしかありません。
千葉県教育委員会では令和3年3月、教職員が心身ともに健康を保つことができる環境を整え、子どもたちの成長に真に必要であり、かつ効果的な教育活動を持続的に行うことができるよう、学校における働き方改革推進プランを改訂しました。
業務量の適切な管理を行うことで、令和5年度末までに子どもと向き合う時間を確保できている教職員の割合が100%になるよう、年度ごとの目標値を設定して取り組みを推進しています。推進プランの目標に対して、着実に達成されていくことが重要です。
令和3年11月に実施されました「教員等の出退勤時刻実態調査」によると、小学校教員の平均残業時間は月45時間、中学校教員の平均残業時間は月59時間の結果となりました。また、一般に過労死ラインと言われている月80時間を超える残業を行っている教員の割合は、小学校で6.2%、中学校で26.6%でありました。
これまでも、働き方改革推進プランの取り組みにより、様々な負担軽減を図ってきておりますが、子どもと向き合う時間が確保できている教職員の割合が64%であるなど、現場としては負担軽減につながっている実感がないのが、現実のようです。
そこで、学校における働き方改革推進プランの取り組み状況と課題について伺いました。
学校における働き方改革推進プランの取り組み状況はどうか?
県の目標である「子供と向き合う時間を確保できている教職員の割合」は、今年度の目標値80%に対して、64%という結果でした。 また、取組が進んでいるものとして、夏休み等における学校閉庁日の設定、スクール・ サポート・スタッフ等の配置の促進、学校に対して実施する調査・報告数の削減等があげられます。
学校における働き方改革推進プランの課題は何か?
小中学校ともに、月の時間外在校等時間が45 時間を超える教員が半数程度いることから、学校における教員の総業務量縮減に課題があると考えており、今後とも、教員の負担軽減につながる部活動改革や、スクール・サポート・スタッフ等のさらなる配置を進めてまいります。
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部活動の負担軽減について
中学校の場合、教員不足に加えて、部活動などの課外活動指導により、多忙を極めていることが指摘されています。
OECD国際教員指導環境調査(TALIS2018)の報告書でもあったように、日本の中学校教員の仕事時間は、OECD加盟国等48か国中で最長であり、その長時間業務をけん引しているのが課外活動と事務業務でした。
学校における働き方改革推進プランの中でも、業務改善の柱として部活動の負担軽減を謳っています。 教員の負担軽減へつなげるためには、教員に代わって部活の技術指導や引率を担う外部人材の活用、いわゆる部活動指導員の確保と活用が重要であると考えます。
そのため、部活動の負担軽減への取り組み状況および部活動指導員の確保について質問しました。
部活動の負担軽減への取り組み状況はどうか?
教員の負担軽減への取組として、国の予算を活用した部活動指導員については、今年度、12市町42校に65人が配置されているほか、国が示している地域部活動について、本県でも令和5年度以降に段階的に移行できるよう、現在、3市町において実践研究を行っています。
部活動指導員の更なる確保に向け、今後どのように取り組んでいくのか?
部活動指導員は、市町村において人材の確保が難しいと聞いていることから、県のスポーツ協会や競技団体等と連携を図り、各学校のニーズを踏まえながら指導者を確保できるよう、市町村に対し情報提供などを行ってまいります。
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教員自身が心身ともに健康であってこそ、しっかりと児童・生徒と向き合うことができ、よりよい教育を行うことができると確信しています。一朝一夕での劇的な改善は難しいとは思いますが、教員にとっても改善されているという認識がもて、希望が感じられるような働き方改革の推進を要望いたしました。
【参考資料】