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なるの台本置き場

【男2:女2】夜明(姉弟版)

2022.03.14 13:00

男2:女2/時間目安50分



【題名】

夜明

(よあけ)



【登場人物】

シュゼット:リアムの姉

リアム:シュゼットの弟

アリエル:アルバ大聖堂の司教

ラクウェル:アルバ聖騎士団の団長



(以下をコピーしてお使い下さい)


『夜明』作者:なる

https://nalnovelscript.amebaownd.com/posts/32781541

シュゼット(女):

リアム(男):

アリエル(女):

ラクウェル(男):




-------- ✽ --------






001 リアム:『今から1000年前、太陽の神ソルと月の神ルナは大きな大きな喧嘩をしました。その喧嘩は生き物全てを巻き込んでの世界戦争へと発展し、長きに渡る大戦は、ソルがルナの胸を一突きした事で終戦。その後、ソルを筆頭に平和な世の中が訪れました。』


002 シュゼット:しかし今から100年ほど前、復活したルナがソルを暗殺した事で世界は真っ暗な闇に包まれ、夜は開けなくなりました、とさ。


003 リアム:姉さん。


004 シュゼット:建国記なんて読んでどうしたの?


005 リアム:そこの机に置いてあった。ただの暇潰しだよ。


006 シュゼット:そう。……このお話懐かしい。子供の頃よく読んだなぁ。


007 リアム:まぁこの国に住む人間なら誰でも知ってる話だからね。


008 シュゼット:好きだったなぁ。この太陽の神がかっこよくてさ。


009 リアム:僕はこの話なんか残酷で好きじゃない。


010 ラクウェル:あんまり大声でそういうことを言うんじゃない。反逆者に間違われるぞ。


011 シュゼット:父さん!


012 ラクウェル:2人とも揃ってるな。


013 リアム:父さんが1番最後だよ。こんな埃まみれの倉庫部屋に呼び出してどうしたの?


014 ラクウェル:2人は大聖堂からお告げが出た事は聞いたか?


015 シュゼット:噂程度は。


016 リアム:『太陽と月の神子(みこ)がこの闇を終わらせる。』だっけ?


017 ラクウェル:あぁ、そうだ。


018 シュゼット:それについて私達は呼ばれたと……。


019 ラクウェル:そうだ。今度その、神子を選ぶ選定会を執り行うことになってな。2人には護衛を取り仕切ってもらいたい。


020 シュゼット:何故それをここで私達に?いつも通り呼び出せばよかったんじゃないの?


021 ラクウェル:あそこは盗聴の可能性があるからな……。


022 リアム:どういうこと?


023 ラクウェル:その選定会、少し嫌な感じがするんだ。根拠はないが、何が良くないことが起きる気がする。


024 シュゼット:良くないこと……。


025 ラクウェル:とりあえず2人は太陽と月の選定会の護衛を頼む。何が起きても対処出来るようにしておいてくれ。


026 シュゼット:了解。


027 リアム:誰をどこに配置するかは追って話そう、姉さん。


028 シュゼット:そうね。どっちがどっちの護衛を担当するかだけ決めておこうか。


029 リアム:姉さんはどっちがいい?


030 シュゼット:うーん、どっちでも。


031 ラクウェル:太陽の神子は女性が多くなりそうだと聞いているからシュゼットが太陽を担当する方がいいかもしれないな。


032 シュゼット:了解、じゃあ私が太陽で、リアムが月ね。


033 リアム:りょーかい。


034 ラクウェル:選定会に参加する候補者が決まったら連絡を貰う手筈になっている。それまでに護衛につくメンバーも決めておいてくれ。……また追って連絡する。







035 アリエル:ラクウェル。


036 ラクウェル:……なんだよ、ノックくらいしろ。


037 アリエル:いること気付いてたくせに。


038 ラクウェル:(ため息)……何の用だ。


039 アリエル:選定会の事で。……教皇様が神からのお告げを民衆にも分かるようにして下さったのであなた方にも。


040 ラクウェル:司教のお前がわざわざこれを?


041 アリエル:ええ。


042 ラクウェル:どうせこちらの状況を偵察しに来たんだろ。


043 アリエル:そんなことは無いわ。


044 ラクウェル:こちらから出せる情報はもう提出済みだ。お前の大好きな教皇様が今頃書類を確認中だろうよ。


045 アリエル:そう。……護衛の指揮は誰が取るのかしら?


046 ラクウェル:帰って確認しろ。既に連絡してある。


047 アリエル:いいじゃない、そのくらい。私達の仲じゃない。


048 ラクウェル:二度手間は嫌いだ。


049 アリエル:人の名前を言うのも面倒ってどういう事よ。それでよく団長が務まるわね。


050 ラクウェル:これでも仕事は出来るんでな。


051 アリエル:はぁ……ねぇ、教えて頂戴。指揮官は誰?


052 ラクウェル:何故そんなに知りたい?邪魔でもする気か?


053 アリエル:まさか。選定会の成功はこの世界を闇から救う為に絶対必要なもの……教皇様も神子に会えるのを楽しみにしてるし、壊すようなことはしないわ。


054 ラクウェル:なら帰って教皇様に聞くんだな。


055 アリエル:(ため息)……ねぇラクウェル、どうしてそんなに冷たくするの。私が何をしたと言うのよ。


056 ラクウェル:……何もしてないと?


057 アリエル:えぇ。少なくとも貴方には。


058 ラクウェル:……帰ってくれ。お前とはもう話したくない。


059 アリエル:何よ。私達仲が良かったじゃない。……これをジゼルが知ったら……(※被せ)


060 ラクウェル:(※被せ)お前がその名を口にするな!!!


061 アリエル:ふふ。


062 ラクウェル:何がおかしい。


063 アリエル:熱くなっちゃって。まだ愛してるのね、ジゼルの事。


064 ラクウェル:……。


065 アリエル:残念だったものね……まさか……。


066 ラクウェル:うるさい!出て行け!!!


067 アリエル:そんなに声を荒らげなくても聞こえるわよ。じゃあね。







068 シュゼット:ねぇリアムー。


069 リアム:何?


070 シュゼット:私達が見てきた空の色が変わるなんて信じられる?


071 リアム:うーん。まだ半信半疑かなぁ。


072 シュゼット:今まで生きてきて、空の色が変わる日が来るなんて思いもしなかった。


073 リアム:そうだね。僕も。


074 シュゼット:どんな色だと思う?


075 リアム:うーん、姉さんはどう思う?


076 シュゼット:私はね、白だと思う。


077 リアム:なんで?


078 シュゼット:黒の反対は白じゃない。


079 リアム:あはは!なるほど!姉さんらしいね!


080 シュゼット:じゃあリアムは何色だと思うの。


081 リアム:僕はね、青色だと思う。


082 シュゼット:どうして?


083 リアム:童話の挿絵の空はいつでも青色だから。


084 シュゼット:たしかに。それはそうね。


085 リアム:童話は僕達が生まれるよりもっと、ずっと前に書かれてるものばかりだ。中にはまだ夜が明けていた頃に書かれたものもあると思う。


086 シュゼット:ふふ。


087 リアム:何か面白い事言った?


088 シュゼット:ううん。私の弟は頭がいいなって。姉さんは誇らしいぞ、このこの!


089 リアム:うわっ!ちょっと!やめてよ!


090 シュゼット:おりゃおりゃ〜!!


091 リアム:ちょ、姉さん!やめてってば!……ほら、おしまい。


092 シュゼット:……ふふ、力強くなったね。


093 リアム:ごめん、手首痛くない?


094 シュゼット:イタズラした私が悪いから気にしないで。


095 リアム:でも。


096 シュゼット:あんたのそういうところ、直した方がいいと思う。


097 リアム:どういうところ?


098 シュゼット:優しすぎるところ。


099 リアム:そんな事ないよ。


100 シュゼット:あるから言ってるの。姉さんの言う事が信じられない?


101 リアム:いや、そういうわけじゃないけど。


102 シュゼット:ふふ、ほら、そういうところ。


103 リアム:今日の姉さんはイジワルだね。


104 シュゼット:そう?気のせいよ。……あの丸い月が見えなくなるのかぁ。ちょっと寂しいかも。


105 リアム:もし本当に夜が明けるなら、この世界はどうなっていくんだろうね。


106 シュゼット:電力問題とか解決するかも!


107 リアム:今よりも快適になるかもしれないね。


108 シュゼット:でも太陽の光に人間は耐えられるのかな?


109 リアム:陽の光で人間が溶けるとでも?


110 シュゼット:分からないじゃない!陽の光がどれだけ強いかも分からないのに!


111 リアム:まぁそれはそうだね。


112 シュゼット:光が強すぎたら世界は真っ白になるかもしれないわ。その時はどうしよう、ちゃんと生活できるのかな。


113 リアム:……ふふ。


114 シュゼット:何笑ってんのよ。


115 リアム:いや、姉さんにしか出来ないよ、その発想は。


116 シュゼット:そんな事ない。


117 リアム:ある。


118 シュゼット:ない。


119 リアム:いや、ある。


120 シュゼット:なーい!


121 リアム:あるよ。ある。『陽の光が強すぎたらどうしよう!』なんて今から考えてる人間はほとんどいないよ。


122 シュゼット:だって。


123 リアム:だって何?


124 シュゼット:分からないじゃない。何が起きるのか。


125 リアム:そうだね。僕も分からない。この世界の誰も、まだ分からないよ。


126 シュゼット:そうね。……ねぇ、リアムはどう思う?


127 リアム:さぁね。……僕はどっちでもいいかな。姉さんと一緒なら何でも。


128 シュゼット:何それ。……父さんも入れてあげないと、後でいじけるわよ。


129 リアム:あぁ、そうだな。姉さんと、それから父さんと。2人がいれば僕は何でもいい。


130 シュゼット:そう。とても、リアムらしい。……さーて、そろそろ本部に戻ろうか。


131 リアム:うん。少しは気が晴れた?


132 シュゼット:とっても。







133 ラクウェル:さて、選定会は明日な訳だが……。


134 シュゼット:顔が暗いけど何かあった?


135 ラクウェル:大聖堂のやつら、歴史を繰り返す気でいるらしい。


136 シュゼット:どういう意味?


137 リアム:まだ僕達が小さい頃に同じような事があったの覚えてない?


138 シュゼット:そんなことあったわね……確か、その時に選ばれた神子は2人ともまだ幼かったよね?


139 ラクウェル:これは表に出ていない話だが……その時に神子は教皇が勝手に決めたらしいんだ。


140 リアム:神に選ばれたわけではない、と。


141 ラクウェル:あぁ。神からのお言葉は頂けず、致し方なかったと。


142 シュゼット:その子達の御家族はなんと?


143 ラクウェル:身分の低い家の子供だったから、適当に言いくるめたんだろうな。


144 シュゼット:そんな……酷い。


145 リアム:今回もそうなる可能性がある?


146 ラクウェル:分からない。反応を見ている限りお告げがあったのは本当らしい。が、選定会で選ばれる神子が本物の神子なのかは分からない。


147 シュゼット:それをどう見分けるの?


148 ラクウェル:どうやら、神子には太陽と月の紋様(もんよう)が現れるらしい。どこにどう出るかは知らないがな。


149 リアム:前任の神子にはその紋様は出なかったんだよね、その辺はどうしたんだ?


150 ラクウェル:聞きたいか?


151 シュゼット:その聞き方、嫌な感じね。


152 ラクウェル:その方法が最悪だからな。……焼印をしたんだと。


153 シュゼット:っ……!


154 リアム:最悪。


155 ラクウェル:諜報部からの情報だから間違いはないだろう。


156 シュゼット:そんな事絶対止めなきゃ……!


157 リアム:でも、選定会の進行は大聖堂がやる事になってる。もしそうなったとしても僕たちが確認する時間はないんじゃ?


158 シュゼット:確かにそうね……。分かりやすく光りでもしてくれたらいいのに。


159 リアム:光る?


160 シュゼット:こう、天から光が指すみたいな。


161 ラクウェル:それはたしかに分かりやすくていいが……。


162 シュゼット:本にそう書いてあったの!


163 リアム:……姉さんそれどこの本で見たの?


164 シュゼット:リアムまでバカにするのね!2人とも酷い。


165 リアム:いや、真面目に聞いてるんだよ。それどこで見た?


166 シュゼット:絵本だったと思うけど。絵で見た、と思う。


167 リアム:うーん。


168 ラクウェル:まぁ絵本だから、信憑性は薄いだろうな。


169 リアム:紋様が浮かぶっていうのもな……本当かどうか……。


170 シュゼット:まぁ明日になってみれば分かるでしょ!……父さん、明日、本当に夜が明けるのかな?


171 ラクウェル:どうかなぁ……。


172 リアム:父さん?


173 ラクウェル:……お前達とこの真っ黒な空が明けるのを見るのが楽しみだよ。







174 シュゼットN:選定会当日。教皇の名の元に集められた子供達が太陽の間(ま)と月の間に揃っていた。奇妙にも、太陽の間には金の、そして月の間には黒の髪を持つ子供が集められていた。



(間)



175 アリエル:聖騎士団長。


176 ラクウェル:あ?なんだぁ、見て分からないのか俺は……はぁ、お前か。


177 アリエル:そんな反応しなくてもいいじゃない。


178 ラクウェル:うるさい。何の用だ。


179 アリエル:聖騎士団の様子を見てこいと。


180 ラクウェル:お前達みたいに暇じゃないんでな。こちらは問題ない。持ち場に戻れ。


181 アリエル:相変わらず冷たいわね。……聞いたわよ。シュゼットとリアムが指揮を執るらしいじゃない。……ふふ、結局、あの子と同じ道を辿るのね。


182 ラクウェル:あぁ。あいつらは俺の右腕だ。優秀な騎士だよ。……ジゼルと同じように。


183 アリエル:あの子が聞いたらきっと泣いて喜ぶわよ。あの子、騎士のくせに涙脆いから。すーぐ泣いてたものね。


184 ラクウェル:……司教様。


185 アリエル:あの子、魔物を前にして怖い〜って泣いてたものね。それでもってとても感情的。生き物全てを愛してた。


186 ラクウェル:……アリエル。


187 アリエル:……なに?ふふ。


188 ラクウェル:……ここでお前を怒鳴りつけたくはない。


189 アリエル:そんな怖い顔しないで。今日はおめでたい日なのよ。その眉間のシワを無くす努力くらいしてほしいものだわ。


190 ラクウェル:お前が煽って来なければこうはなっていない。


191 アリエル:あら、そうだったの。それは失礼。教皇様には問題なく進んでいるとお伝えしておくわ。じゃあね。



(間)



192 ラクウェル:シュゼット、リアム。どんな様子だ?


193 シュゼット:今のところ太陽の間は問題なし。


194 リアム:月の間も同じく。


195 ラクウェル:何かあったら直ぐに伝えてくれ。


196 リアム:了解。


197 シュゼット:選ばれた神子は私達が保護者と一緒に教皇様の元に連れていくのでいいんだよね?


198 ラクウェル:そういう手筈になっている。


199 リアム:その間に保護者に紋様を確認してもらうと。


200 ラクウェル:その通り。


201 シュゼット:……何事も起きなければいいけど。


202 リアム:きっと大丈夫。


203 ラクウェル:そのために我々がいるからな。……さ、時間だ。



(間)



204 リアムN:選定会が始まり、何事もなく予定通り進んでいた。教皇が神に祈りを捧げ、そこで聞こえたお告げを皆に伝える……はずだった。



205 アリエル:(小声)さぁ、神子はだれ?



206 リアムN:闇に染った空が、赤く光り出したのだ。



207 シュゼット:ちょっと……何よ、あれ。


208 リアム:空が赤い……。


209 ラクウェル:お告げは本当だったってことか?どうなってんだ。



210 リアムN:誰も叫ばず、誰も動かず、皆(みな)ただ唖然と空を眺めていた。



211 アリエル:さぁ、誰が神子なの……!



212 リアムN:赤く染った空から、2つの光の線が伸びた。その先にいたのは。



213 ラクウェル:シュゼット!リアム!


214 シュゼット:何これ、なんで、光って……?


215 リアム:姉さん!


216 シュゼット:リアム!……痛っ……!


217 リアム:くっ……!


218 アリエル:ふふ……あはは……!あの子達が本物の神子!


219 ラクウェル:聖騎士団に告ぐ。子供達を皆両親の元に無事届けろ。指揮権は全て副団長に。……シュゼットとリアムは別室に。……(副団長に向けて)すまない、あとは頼む。



(間)



220 リアム:姉さん!大丈夫?


221 ラクウェル:リアム。お前もちょっとじっとしてろ。


222 シュゼット:そうよ、リアム。あと、頭に響くから叫ばないで。


223 リアム:ご、ごめん。


224 ラクウェル:それで、2人とも調子はどうなんだ?


225 シュゼット:まだ目の奥が痛い気がするけどそれ以外は平気!今からでも訓練できるわ。


226 リアム:僕はもう何とも。


227 シュゼット:強がっちゃって。


228 リアム:なんだよ。


229 シュゼット:本当はまだ痛いくせに。


230 リアム:僕は大丈夫だって、


231 シュゼット:手、摩ってるじゃない。


232 リアム:あっ、これは、その。


233 ラクウェル:まぁ2人とも今日のところはこの辺にしておけ。今週は安静にな。任務からも外す。


234 シュゼット:いや、と言いたいところだけど、私が任務に就いたら絶対にどこかの誰かさんもついてきちゃうだろうし。


235 リアム:そんな言い方しなくてもいいじゃん。


236 シュゼット:いい機会だし、街にでも行こうかなー。


237 リアム:僕も行っていい?


238 シュゼット:ふふ、いいよ。


<アリエルがドアをノックする>


239 アリエル:……ふふ。失礼します。


240 ラクウェル:司教様が何の用だ。


241 アリエル:私は神子様に会いに来たまで。それが仕事、ですので。


242 ラクウェル:それで?要件は。


243 アリエル:まずは、神に選ばれたお二人にお会い出来光栄です。私はアルバ大聖堂司教のアリエルと申します。以後お見知り置きを。


244 リアム:は、はぁ。


245 シュゼット:もうご存知かもしれませんが、私はシュゼット。こちらは弟のリアム。……よろしくお願いします、アリエルさん。


246 アリエル:ふふ、ソル様はご立派でいらっしゃいますね。それに比べてルナ様は……ふふ。今後お二人には神子として、儀式のためのお勉強をして頂きます。私が担当致しますので何かございましたらお申し付けくださいませ。授業の開始時期はまた追ってお伝え致します。


247 シュゼット:ちょっと待ってください。私達には騎士としての任務があります。それは……。


248 アリエル:儀式以上に大切な事がございますか?


249 シュゼット:え?


250 アリエル:世界を救うための儀式以上に大切な事はこの世にございません。正しく儀式を行うために必要な知識をお教え致します。……納得はしていないようですね。


251 シュゼット:えぇ、まぁ。


252 アリエル:そうですね……聖騎士団のお仕事は民を魔物から守る事、そして街の治安を守る事でしょう?授業はこの国、いやこの世界の人々を救う任務とお考え下さいませ。


253 リアム:いい様に言いくるめられてるな。


254 アリエル:そんなことはございませんよ。


255 リアム:夜が明けるのはいいが、その後はどうする?どうなるかも分からないのにどうして救う事と言いきれる?


256 アリエル:……はぁ?何を仰っているのかよくわかりませんね、ルナ様。貴方は神子。我々の言う通りになさったら宜しいのです。シュゼット様……いえ、ソル様。これからよろしくお願い致しますね。それでは。


<アリエルが部屋を出る>


257 シュゼット:……なにあれ!感じ悪!


258 リアム:父さん、あの人何者?


259 ラクウェル:あいつは元々聖騎士団に所属していてな、俺の同期なんだ。大聖堂に入ってからあいつはおかしくなっちまった。


260 シュゼット:教皇に洗脳でもされたんじゃないかな。


261 ラクウェル:かもな。お前たち、あいつには気をつけろよ。何を吹き込んでくるか分かったものじゃない。


262 リアム:僕は大丈夫だけど、姉さん気をつけてね。


263 シュゼット:私だって大丈夫よ。


264 リアム:どうだか。


265 ラクウェル:2人ともそこまでにしておけ。ほら、部屋に戻ってゆっくり休め。


266 シュゼット:父さんは?


267 ラクウェル:俺はまだやらないといけないがあるからな。もう少し頑張ってくるよ。


268 リアム:僕手伝おうか?


269 ラクウェル:いや、今のお前の仕事は休む事だ。姉さんを頼んだ。


270 リアム:了解。姉さん戻ろう。







271 シュゼットN:その後、神子であるシュゼットとリアムは会う事を禁じられ、司教達による儀式のための授業が始まった。ほんの少し顔を合わせるだけでも、という2人の願いが聞き入れられる事は無く、早半年が経とうとしていた。



(間)



272 アリエル:さて……それでは最後の授業を始めていきましょうか。


273 リアム:案外あっという間ですね。


274 アリエル:ルナ様は覚えがいいですから、予定よりも早く終わったのですよ。


275 リアム:そう。いい加減リアムって呼んでくれない?


276 アリエル:貴方様は月の神に選ばれし神子。早く元の名はお捨て下さい。


277 リアム:断る。……それで、最近姉さんは?


278 アリエル:ソル様はそれはもう太陽の神子に相応しい立派なお方ですよ。ちょっと時間がかかってはおりますが、立派に儀式をこなしてくれると信じております。


279 リアム:姉さんの事だから仕事は立派にこなすに決まってるだろう。……いい加減会わせてくれないか。


280 アリエル:それはなりません。ソル様とルナ様は相容れぬ神達。儀式を正しく行う為に、お2人は会ってはいけないのです。


281 リアム:はぁ……そればっかりだな。


282 アリエル:ルナ様は未だ神の決定に納得がいっていないようですね。


283 リアム:当たり前だ。


284 アリエル:そうですか。……この右手の紋様、美しいですね……こんなに美しいというのに納得がいかないだなんて……ワガママだ事。


285 リアム:は?


286 アリエル:ふふ。すぐカッとなるところもそっくりだとは。……まぁ納得がいっていようがいまいが、我々には関係がない事ですので。


287 リアム:皆(みな)を救う場所である大聖堂の名が聞いて呆れるな。


288 アリエル:まぁ、怖い。……さぁ、本日の授業は儀式についてお話致しますね。儀式について以前少しお伝えしたと思うのですが、それは覚えていらっしゃる?


289 リアム:勇気を持って凶悪な敵に立ち向かい、今なおこの国に住む人々に勇気を与え続ける偉大なる太陽神ソルの名の元にルナを封じる事、だったか?


290 アリエル:素晴らしいですね。歴代の月の神子はルナの様に聡明な方が多かったそうですから、貴方様はやはりルナの名を継ぐのに相応しいお方なのかもしれませんね。


291 リアム:はいはい。司教様にお褒め頂き光栄です。それで?儀式について教えてくれるんだろ?


292 アリエル:ええ。先程ルナ様が仰った通りです。我々は太陽神の代わりにこの夜を終わらせなければならないのです。……そうですね、まずは過去の儀式についてお話致しましょうか。前回の儀式は……確か10年前でしたかね。その時もお告げがあり、今回のように選定会が行われました。そこで選ばれたのはまだ幼い子供達。教育に長い時間がかかってしまいましてね。儀式が行えたのはそれから2年後の事でした。


293 リアム:その神子達はどうなったんだ?


294 アリエル:地方の聖堂に送られたと聞いていますがそれからはさっぱり。


295 リアム:紋様はどこに出ていた?


296 アリエル:ソル様は左手、ルナ様は背中に。


297 リアム:お前達がそこに紋様を入れたんだろ?


298 アリエル:……はい?


299 リアム:前任の神子に紋様はなかった。そこでお前達は選んだ子供達を神子にするために焼印をした。……違うか?


300 アリエル:……はぁ。ご存知でしたか。


301 リアム:これでも聖騎士団の中ではそれなりに偉いんでな。


302 アリエル:今回はソル様もルナ様も紋様が既にありますから……焼かずに済みますね。


303 リアム:焼印は光らないもんな。


304 アリエル:本物の紋様を見た事がある人間などこの世にいないですから。我々がそうだといえば、たとえ偽りだとしてもそれは本物になるのですよ。


305 リアム:最悪だな。


306 アリエル:なんとでも。……話を戻しますと、前任の神子は建国記を再現する「振り」をしました。言わばただの演劇でした。


307 リアム:そんなに勿体ぶらなくていい。


308 アリエル:そうですか。では言葉を選ばずはっきり申し上げます。ルナ様、貴方には死んで頂きます。月の神と同じ道を辿ってこの世界をお救い下さい。


309 リアム:……は?


310 アリエル:貴方様は、姉であるソル様にこの胸を一突きされて死ぬんです。


311 リアム:姉さんに?……僕が?


312 アリエル:ええ。その通りです。


313 リアム:そこまでする必要はあるのか?


314 アリエル:前回は殺す振りをして頂いたのですが、この通り夜は明けておりません。今回は前回と違い紋様が浮かび上がった……神の代わりとなるあなた方が神と同じ行動を取れば、この闇を終わらせられると我々は信じております。


315 リアム:……馬鹿げてるな。


316 アリエル:ルナ様。……多少の犠牲は付き物、ですよ。騎士団でもそう教わったでしょう?


317 リアム:……そんなの教わらない。そんな犠牲、あってたまるか。


318 アリエル:ふふ。貴方様がどう思っても、未来は変わりませんから。


319 リアム:そんな事が許されると思うな。


320 アリエル:教皇様の言うことは絶対、ですよ。







<扉を勢いよく開ける>


321 ラクウェル:アリエル!


322 アリエル:どうしたの?そんなに大きな声で。眉間にシワがよってるわよ。


323 ラクウェル:リアムから聞いた。歴史に則って儀式を行うなんて、おかしいと思わないのか?


324 アリエル:なんの事かしら。


325 ラクウェル:シュゼットにリアムを殺すよう指示したんだろう?


326 アリエル:その言い方は酷いんじゃない?私は、狂った月の神を封印するのはソル様のお役目です、とお伝えしただけ。


327 ラクウェル:それが、リアムを殺すという意味だろう。


328 アリエル:はぁ……だったら何だって言うの?


329 ラクウェル:お前……殺すまでしなくていいだろう。


330 アリエル:そうね。……それでこの夜が明けるのなら。


331 ラクウェル:リアムの犠牲で夜が明ける保証は?


332 アリエル:そんなものは無いわ。


333 ラクウェル:では……!


334 アリエル:この夜が明けないことで人間が窮地に晒されているの。疫病はどんどん拡がり、免疫力は下がり続けている。それも全てこの月明かりのせいだと言うのに!


335 ラクウェル:全てを月のせいにするには都合が良すぎないか?


336 アリエル:教皇様がそう仰っているのよ?疑う必要があって?


337 ラクウェル:お前は教皇が人を殺せといえば殺すのか。


338 アリエル:ええ。


339 ラクウェル:正気か?


340 アリエル:教皇様の仰ることだもの。何か意味があってのこと。……それなら私は教皇様の言う通りにする。


341 ラクウェル:お前はそんなではなかったはずなのにな。


342 アリエル:そう?そんなに変わらないと思うわ。……昔から、ジゼルの事は嫌いよ。


343 ラクウェル:なぜ突然ジゼルが……。


344 アリエル:今のルナ……そう、リアム。あの子、ジゼルの子でしょう?どこかで見たことがある目だなと思ったのよ。


345 ラクウェル:何故それを。


346 アリエル:ただの勘よ。まぁ、今の貴方の反応で私の勘が当たっていた事が分かったわけだけど。


347 ラクウェル:それを知って何になる。


348 アリエル:私達の意思は変わらない。といえば伝わる?


349 ラクウェル:お前なのか。


350 アリエル:ふふ。


351 ラクウェル:教皇に、儀式は歴史通りにと進言したのは、お前だったんだな。


352 アリエル:大正解。知ってたの?


353 ラクウェル:教皇にそう進言した司教がいた事は聞いた。が、誰かまでは特定が出来なくてな。


354 アリエル:ふふ。だって考えてみて?貴方の娘がソル様に選ばれ、ジゼルの息子がルナ様に選ばれた。貴方の娘が、ジゼルの息子を殺す事で、この長い長い夜が明ける。……最高のシナリオじゃない?


355 ラクウェル:そこまでジゼルが嫌いか。


356 アリエル:ええ、嫌いよ。大嫌い。……でも、今は感謝してるわ。あの子が産んだ実の息子が、私達……いや、教皇様の願いを叶えて下さるんだもの。きっとあの子も喜ぶわよ。人の役に立つのが大好きだったじゃない?


357 ラクウェル:……あぁ、そうだったな。


358 アリエル:それで命まで差し出したものね。……親友の貴女を守れてよかった、って。いい顔しちゃって。


359 ラクウェル:なぜお前を護ったのか。ジゼルに聞きたいものだな。


360 アリエル:そうよね、貴方はジゼルが大好きだったものね。……ほんと残念。


361 ラクウェル:……本当に、儀式の内容を変えるつもりはないんだな。


362 アリエル:えぇ、変えない。


363 ラクウェル:そうか。……騎士団長として、教皇様に儀式の内容を変えるよう申立てをさせてもらう。


364 アリエル:お好きなように。


365 ラクウェル:……生き残ったのがお前では無くジゼルだったら良かったのに。







366 シュゼット:(泣きながら)父さん、私どうしたらいいの。


367 ラクウェル:すまない、シュゼット。俺の力がもっとあれば……。


368 シュゼット:私本当にリアムを……そんな事……。


369 ラクウェル:どうにか回避出来る方法を探そう。だから……。


370 シュゼット:司教様に言われたの!ちゃんと儀式を行わないと夜は明けないって。そうしないと……どっちみちみんな死んでしまうって。前の神子は儀式の後、殺されたの。


371 ラクウェル:シュゼット……。


372 シュゼット:私も死にたくはない……でも、だからってリアムを殺すなんて!……そんな事出来ないよ……。


373 リアム:……姉さん?


374 シュゼット:リ、アム。どうして……?


375 リアム:2人の声が聞こえたから来ただけだけど……。


376 シュゼット:でも会っちゃダメって……。


377 リアム:あぁ……最後だろうから会ってもいいって。


378 シュゼット:……そう……ごめん、ちょっと頭冷やしてくる。


<シュゼットが部屋から出ていく>


379 リアム:あ、ちょっと、姉さん!


380 ラクウェル:……リアム、ちゃんと話してこい。


381 リアム:……うん。



(間)



382 リアム:……姉さん?


383 シュゼット:何?


384 リアム:こっち向いてよ。


385 シュゼット:今ダメ。


386 リアム:泣いてるから?


387 シュゼット:顔ぐちゃぐちゃだから。


388 リアム:今更でしょ。ほら、こっち向いて。……あはは、本当にぐちゃぐちゃ。


389 シュゼット:だからそう言ったじゃん。


390 リアム:ごめんって。ほら、涙拭いて。


391 シュゼット:うん……。


392 リアム:凄い、姉さんの紋様綺麗だね。ちゃんと見たの初めてかも。


393 シュゼット:リアムの紋様もキラキラしてて綺麗。……ねぇ、なんで私達だったんだろう。


394 リアム:なんでだろうね。


395 シュゼット:せめて、ルナに選ばれたのがリアムじゃなかったら……。


396 リアム:今更そんな話をしても変わらないよ。


397 シュゼット:だって。私貴方を……!


398 リアム:ねぇ姉さん。前にここで空について話したの、覚えてる?


399 シュゼット:う、うん。


400 リアム:その時はさ、月が無くなるの寂しいって言ってたじゃん?……今は?


401 シュゼット:月なんてどうでもいい。月も太陽も、なんでもいい。


402 リアム:僕はさ、結構楽しみなんだよね。


403 シュゼット:……え?


404 リアム:だって、僕だけがこの月を沈めることが出来るかもしれないんだよ?……それってさ、ある意味英雄じゃん。


405 シュゼット:まぁ……そうね。


406 リアム:月が沈んだ空も、夜が明けた空も、僕は見れないんだけどね。


407 シュゼット:……ばか。


408 リアム:あはは、ごめんね、泣かせてばっかりだ。


409 シュゼット:やだなぁ。


410 リアム:正直だな。姉さんらしい。


411 シュゼット:どうしてリアムはそんなに割りきれてるの?


412 リアム:仕方ないかなって。そういう運命だったんだよ。僕も、姉さんも。それにさ、神子に選ばれたって事は、僕達本当に神様の血を引いてるのかもしれないよ。


413 シュゼット:時々子供っぽくなるよね。


414 リアム:そう?姉さんの前だけじゃない?


415 シュゼット:そういうところも、リアムらしい。……本当に神の血を引いてるなら、私達が神になれたら良かったのにね。


416 リアム:どういうこと?


417 シュゼット:私達なら、世界をこんなふうにしないでしょ?私達仲良いし。


418 リアム:そうかもしれないね。……でもさ、結局、ソルもルナもなんで喧嘩したかなんて今の僕達には分からないじゃん?だから、僕達が神になっても状況は変わらないかもしれないよ。


419 シュゼット:……そっか。そんな考え方もできるんだね。


420 リアム:そう。物は考えようだよ。


421 シュゼット:……怖くはない?


422 リアム:怖くないと言ったら嘘になる。でも、それより。


423 シュゼット:うん?


424 リアム:変わった世界に立ち向かっていく姉さんが見れないのが残念。


425 シュゼット:ちゃんと見てて。


426 リアム:うん。


427 シュゼット:見てくれなきゃ怒るから。


428 リアム:うん。


429 シュゼット:……一緒に見たかったな。夜明け。



430 シュゼットM:リアムの困った顔を見たのは恐らくこれが最後だった。







431 ラクウェル:……シュゼット。


432 シュゼット:どうしたの?父さん。


433 ラクウェル:その……すまない、父さんの力不足で。


434 シュゼット:ううん。父さんがずっと掛け合ってくれてた事は知ってるよ。……ありがとう。


435 ラクウェル:しかし……!


436 シュゼット:大丈夫。……私達は大丈夫だから。



(間)



437 アリエル:ご準備はいかがですか?ルナ様。


438 リアム:大丈夫だ。


439 アリエル:そのお召し物よくお似合いで。


440 リアム:それはどうも。これを作ったのは?


441 アリエル:司祭が作っておりますよ。


442 リアム:そう。……素敵な刺繍をありがとう、と伝えておいて。


443 アリエル:かしこまりました。……覚悟なさったのですね。


444 リアム:あぁ。……姉を死なせる訳にはいかないんでね。


445 アリエル:……そうですか。素敵な姉弟愛だこと。


446 リアム:命差し出す理由には十分さ。



(間)



447 ラクウェルN:儀式の為に用意された部屋は神殿の真ん中に位置するステンドグラスの前だった。後ろには太陽の神ソルが、月の神ルナに剣を突き立てる様子が描かれている。……そこに、神と似た服を纏った神子が現れた。



448 アリエル:両者神の前で祈りを。


449 シュゼット:太陽の神ソル。我は貴方の遺志を受け継ぐ神子シュゼット。貴方の勇敢さを私に、そして正義をこの剣にお与え下さい。


450 リアム:月の神ルナ。我は貴方の遺志を継ぐ神子リアム。貴方の聡明さと膨大な力を私にお与え下さい。


451 アリエル:……さぁ、ルナ様。台座の上に。……さぁ、ソル様。我らの世界をどうか、お救い下さい。


452 ラクウェル:すまない、2人とも……。


453 シュゼット:(緊張で手が震えている)


454 リアム:姉さん。大丈夫だよ。


455 シュゼット:ちょっと、リアム。何して。


456 リアム:……ここだよ。ここに思いっきり刺して。


457 シュゼット:……出来ない。


458 リアム:……姉さん、僕の代わりに、新しい世界を見届けて。


459 シュゼット:嫌よ、できな、


460 リアム:ここ押えておくから。一思いに、お願い。


461 アリエル:さぁ!皆さん!もうすぐ世が明けますよ……!


462 シュゼット:(長く息を吐く)……ごめん。


<シュゼットがリアムの胸に剣を突き立てる>


463 リアム:う……い゛っ……。


464 シュゼット:っ……ごめん……ごめんね……ごめん。


465 リアム:いい、んだよ……世界の、ため……言ったでしょう?


466 シュゼット:もう喋らないで。傷が……


467 リアム:姉、さん……知ってる?


468 シュゼット:……っ……なに?


469 リアム:夜明けの、直前が……一番、暗い…だよ。


470 シュゼット:そうだね。……真っ暗で貴方が見えない。


471 リアム:ごめ、んね。……また姉さん、泣かせ……ちゃった。


472 シュゼット:リアム……(泣くシュゼット)


473 リアム:太陽の、下……姉さんと、一緒、に……。


474 シュゼット:リアム、?……リアム!!!!!



475 アリエルN:見る見る間に空は赤く染まっていき、一筋の光が差し込んだ。……こうして、人々が待ち望んだ長い夜が明けた。







476 シュゼット:見て、リアム。空は青かったよ。光は……そうだなぁ、ちょっと刺激が強いけど、みんな少しずつ慣れてきたみたい。中にはまだ外に出られない人もいるみたいだけど。……こうやって人間は変わっていくんだね。



477 シュゼット:みんな私の事英雄って言うの。みーんな神子様神子様って。リアムの事忘れちゃったみたいに言うんだよ。……なんでかなぁ。こんなに寂しいのに。誰も分かってくれないの。



478 シュゼット:この左目もね。見えなくなってきちゃったんだ。紋様のせいじゃないかってお医者様が言うんだけど。……リアムが左側にいたら何も問題なかったのになぁって。



479 シュゼット:あーあー、空。広いなぁ。



480 シュゼット:ねぇリアム。……太陽の下は私には眩しすぎるみたい。



(終)