Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

オールド・キャンパーの独り言

無花果

2017.11.22 23:57

 植物の多くは花を付け種を作って増えていきます。その中に「無花果」と漢字で書く植物があります。「無花果」と書かれる「いちじく」ですが、実を割ってみると外側の皮のような部分と小さな丸い粒の部分とがあります。この小さな粒が花なのです。

 イチジクによく似た「イヌビワ」も同じような実の作りをしています。このイヌビワには、雄の木と雌の木があって、花と雌花が別々の株に咲きます。

 種で子孫を増やす植物は、一般に雄しべの作った花粉が雌しべにつくことによって種が出来ますが、実の中に花があるイチジクの仲間は、特別な戦略で花粉を運んでいるのです。

 その戦略とは、小さなハチとの共存策です。イチジクの仲間は、イチジクだったらイチジクコバチ、イヌビワだったらイヌビワコバチというように、○○コバチと呼ばれるハチと複雑な繋がりを持っています。

 イヌビワの場合は、5~6月にイヌビワの花が咲くとイヌビワコバチは雄花に潜り込んで、その中で卵を産んで、その実の中でイヌビワコバチの子供たちは成長していきます。成虫になるとイヌビワコバチは外に出ていって別のイヌビワの花を探して潜り込みます。雄花に潜り込んだイヌビワコバチは、そのまま卵を産めるのですが、雌花に入ったイヌビワコバチは、実の先の穴が閉じて出られなくなってしまいます。

 出口を失ったイヌビワコバチはもがきます。もがけばもがくほど自分の生まれた花から出るときに体についていた花粉を雌しべにふりかけることになるのです。

 考えてみるとイヌビワの雄株は、イヌビワコバチを育てるためにあり、雌株は種を作るために生きていることになります。イヌビワにとっては、ほかも昆虫には見向きもされなくてもイヌビワコバチという専属の花粉運びがいるために他の花のように美しい形や艶やかな色で自分を飾る必要がないと言えるのでしょう。

 イヌビワコバチにとって見れば、雌雄どちらの花に入るかで自分の運命が決まってしまう大切な選択を一生で一回しなくてはならないということになります。