安楽死・尊厳死を考える時に
今や人の8割は、病院で亡くなると言います。
「終の棲家」と言うことばが有りますが、多くは、生まれ育ったところを言うでしょう。
誰もが遠出してから帰路に就いた時、我が家ほどいいものはないと感じます。
此処こそが誰にとっても終の棲家に違いありません。
ところが、医療が発達し、ほとんどの人は、病院で、延命治療はせずとも最後まで治療の最中にあります。(例え、治療のすべが無いとなっても)
ここにある死は、延命治療のあるなしに限らず、「自然死」と言えるでしょう。
安楽死と尊厳死の違いは、安楽死は、がんで苦しみながら末期を迎えている時とかの様に、その痛みを和らげるために注射や薬を使って、人為的に死を早やめる事であるのに対し、尊厳死は、延命措置も、注射や薬でもって死を早める事などせず、自然に任せたまま死を迎える事を言うわけです。
そのどちらが良いとか悪いとかは一概に言えるような問題ではないほどに難しく答がでない事です。
しかも、安楽死も尊厳死も定義をすること自体が、考え方により異なってきます。
1「死」について
其の前に、「死」とは、生命が絶える事。生命維持機能が絶える事です。
そこで、まず、死を定義する際に、人の死に方の種類(生の尊厳を考える上においては、このような言いかたは、当を得てはいない感じがしますが)をもってあげてみれば、次のようになるかと。
< 死 > ① 自然死・・・老衰死
⓶ 病死
③ 事故死/事件死
④ 自殺
殺人事件で死ぬときは、③に含むとします。
①世界一の長寿国と言われている日本には、今や100歳以上が5万人以上いると言われます。
ほんとにそうもいるのかと不信ですが。
老衰死とは体の機能が老化によって自然に機能しなくなり死ぬことですが、それには病気を併発している時といない時の老衰死の違いはあると言います。老衰死そのものが自然であるところからか、病死とは意味合いが異なる面を持ちます。
⓶病死=年齢に関わらず、一般に病気になって、病院で亡くなると言う事ですが、上の老衰死の中にも病気を併発してそれで死ぬと言うのも含めるでしょう。
抑々、病気とは、体の各機能が,外的内的要因によって、維持活動が支障をきたしていることであると言うわけです。それを健康体に少しでも戻そうとする行為を医療と言うならば、病死とは、その医療行為をこれ以上行っても治療はできなく、死ぬしかない又は、何の治療行為もなく病気で死んでいくものと言えるでしょう。
③事故死=事故で亡くなる時は、自動車事故に代表されるように、不慮の事故と言う事です。その主なものに、火災・転倒転落・溺死・窒息・中毒などがあります。※1
事件死と言うのは、殺人事件など犯罪による死亡です。
④自殺には、大きく分けて二つあり、主に身体的要因から苦しみ、自殺行為に走る自殺と、健全者として生きる中での苦しみ(倒産・生活苦・離別など)から自殺を考える自殺に分けられます。両者には、それがもとで、酒浸りや薬中毒者になったりして、死に至る自殺志願者の様な自殺的行為もあります。
2安楽死の種類
安楽死の種類としては、大きく分けて二つがあり、一つは①積極的安楽死であり、もう一つは⓶消極的安楽死と言うものと言われます。それに対して、尊厳死にそのような種類分けはありません。
①積極的安楽死=医療(医者)によって、患者の苦痛を解放するよう意図的に死を招くための直接的行為。
⓶消極的安楽死=延命措置などの積極的な措置は行わず、死をまつ行為。尊厳死・自然死と言われるものに近い。
其々が、実際に行われた事象として、その際の許容される要件が裁判に出ているのです。
3安楽死の判例
・東海大学付属病院事件(横浜地裁H7.3.28 H4(わ)1172号 有罪判決)
はじめて医師が安楽死を行った事件として有名。懲役2年執行猶予2年
・山内事件(名古屋高裁昭和37(う)496)尊属殺人被告事件
・安楽死が要件として、判決内に示されたことで有名になった。被告は、懲役1年執行猶予3年
・射水市民病院事件(2009.12.21富山地裁 不起訴)
医師が人工呼吸器を取り外す。
▮安楽死において、患者のためを思っての行為として、親族や医療関係者による「緩和治療」と言う事が多くの事件に提起されます。
※1厚労省「不慮による事故死」平成7年~20年データが有りますが、交通事故は、H7年約15,000人から、H20年7,500弱に下がっていますが、その他は、横ばい又は増加しています。
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/tokusyu/furyo10/01.html より抽出。
※1厚労省「不慮による事故死」の平成20年の詳細分析データによると・・・
厚労省hphttps://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/tokusyu/furyo10/02.htmlより文章のみ抽出
(1)月別にみた不慮の事故による死亡
平成20年の不慮の事故の種類別死亡数を月別にみると、総数では死亡数が多いのは1月、12月の順、死亡数が少ないのは9月、6月の順となっている。月別にみて差が大きいものをみると、溺死では1月に多く9月に少ない。窒息では1月に多く6月に少ない。また火災では1月に多く9月に少ない。一方、交通事故と転倒・転落は月別の差が小さい。
(2)年齢階級別にみた不慮の事故による死亡
平成20年の不慮の事故による死亡数を不慮の事故の種類別に構成割合でみると、窒息が24.7%で最も多い。年齢(5歳階級)別にみると、5~9歳から65~69歳までは交通事故が最も多くなっている。また、年齢が高くなるにつれて、転倒・転落や窒息が多くなっている。
(3)死亡の場所別にみた不慮の事故による死亡
平成20年の死亡の場所別死亡数構成割合を不慮の事故の種類別にみると、病院・診療所の割合が多いのは、窒息が84.4%、転倒・転落が83.8%、交通事故が80.0%となっており、自宅の割合が多いのは、火災が61.6%で、病院・診療所の割合と自宅の割合との差が小さいのは、溺死、中毒となっている
(4)時間別にみた不慮の事故による死亡
平成20年の不慮の事故による死亡数を死亡した時間別にみると、総数では18時~20時台が多くなっており、不慮の事故の種類別では、交通事故と溺死が18時~23時台、窒息が12時~14時台と18時~20時台が多くなっている
(5)発生場所別にみた交通事故以外の不慮の事故による死亡
平成20年の交通事故以外の主な不慮の事故の種類別死亡数構成割合を発生場所別にみると、構成割合が高いのは、家庭では溺死と窒息、居住施設では窒息、公共の地域では転倒・転落と窒息となっている。
(6)時間別にみた家庭における不慮の事故による死亡
平成20年の年齢階級別の家庭における不慮の事故による死亡数を死亡した時間別にみると、死亡数の多い65歳以上の階級では、18時~23時台が多くなっている。
・赤色は弊所記入。